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〜シンデレラガール〜
ペスト騒乱②
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ニコライは積み上げられた死体の山を見てどうすることもできない自分を呪った。
突如として発生した原因不明の疫病は周りの地域を飲み込みこの、クロノスの街も飲み込もうとしていた。発症したら最後貴族だろうが平民だろうが老若男女問わず人生の最期を迎えてしまう。
アスペルド信仰教団のニコライは医者であるにもかかわらず患者に祈ることしかできない自分を情けなく思った。
ニコライの居るクロノス町の教会には依然として多くの患者が運び込まれていた。グッタリとして動かなくなった我が子を教会に置き去りにして去っていく親もいた。私の信じる神は救ってくれないのだろうか? そう思いながらその残酷な光景をなすすべなく眺めていた。
ニコライの元へ衛兵がやってきた。
「ニコライ様。町で勝手に医療行為を行なっている娘がいます」
「何? 娘? いくつぐらいの娘だ?」
「はい。まだ若い10代の少女だそうです」
「勝手なことをして! これ以上患者を増やされてはたまらん。すぐにひっ捕らえろ!」
「は! わかりました!」
衛兵はそう言うとニコライのもとを去っていった。ニコライは10代の少女がこの病気を治せるとは思っていなかった。ニコライはため息をつきながらこの残酷な状況を見守ることしかできない自分を呪った。
◇
ティアラは次々とペストに感染した患者の家を回って抗体を注射していた。幼い少女の腕に抗体を注射し終えたとき、いきなり衛兵が家に入ってきてティアラは衛兵に取り押さえられた。
「何? どうして?」
「うるさい! 勝手に医療行為をした罪でお前を連行する」
「やめて! 私にはまだやることが……」
「黙れ! ほら早く、大人しくこっちに来い!」
私は衛兵に羽交い締めにされると、手足を縛られて連行された。クリスはそんな私を見て衛兵に抗議してくれたが、大勢の衛兵に取り押さえられて太刀打ちできないようだった。
私は町はずれの収容所に連れてこられて檻に入れられた。カビくさい檻の中は湿気でジメジメしていてとても快適とは言えない場所だった。檻の中には何人か先客がいてその中のリーダー格の女が私に声をかけてきた。
「あら。こんな小さい少女が何をヘマしたんだい?」
私はなんと言っていいか分からず黙ったままでいると、リーダー格の女がいきなり私の髪を掴むと後ろに引っ張った。私の顔が上に向くとリーダー格の女は上から私の顔をマジマジと見て可愛い顔をしているね私のペットにしてやろうか、と言ってきた。
「や……やめてください……」
私はそれだけを言うのがやっとだった。私に歯向かう意思がないと知ると女は私を突き飛ばした。私はそのまま倒れ込んだ。私は怖くて震えながら頭を上げると部屋の隅に倒れている人がいることに気がついた。私はゆっくりと倒れて苦しそうにしている人に近づいた。
「あまりそいつに近づくんじゃないよ! そういつは疫病に犯されている。もうじき死ぬよ」
リーダー格の女は吐き捨てるように言った。私は女の言うことを無視して苦しそうにしている女の人を診察した。黒い斑点が身体中にあった。リーダー格の女が言うようにペスト菌に侵されているようだった。私はポケットから抗体を取り出すと女に注射した。
「何してるんだ? お前?」
「抗体を注射しました。これでこの人は助かります」
「は? 何言ってるんだ! 町中の医者がこの病気は治らないと言っているんだぞ!」
「大丈夫です。二、三日安静にすれば助かります」
「ば……馬鹿なことを言うんじゃない! そんなもので助かるわけがないだろ!」
女はそう言うと再び私の髪を鷲掴みにすると顔を近づけて言った。
「もしそいつがそのまま死んだら、即座にお前を殺す。いいな!」
女を見ると目に涙を浮かべていた。
「大丈夫です」
私ははっきりと彼女に言った。
倒れていた女は次の日には熱が下がり意識を取り戻した。
「あんたが治してくれたのか?」
「もう大丈夫みたいですね」
「ああ……、あんたは命の恩人だ。名前を聞かせてくれないか?」
私は自分の名前を言った。彼女は一生忘れないよ、と言ってくれた。リーダー格の女は私たちのやりとりを見てびっくりしていた。
「なんで? どうして助かったんだ?」
「疫病を治す抗体を注射しました」
「それで助かるのか?」
私がはい、と返事をするとリーダー格の女は急に私の肩を掴んで目に涙を浮かべながら頼んできた。
「ティアラ……、私の弟と妹を助けてくれ! お願いだ!!」
「あなたと兄妹の名前は?」
「私はミリア、弟はロバート、妹はアリア」
「二人はどこにいるの?」
「町の中心部にあるアスペルド教会にいるんだ」
「発症したのはいつですか?」
「あんたがここにきた時の一日前だから二日は経ってる」
「あまり猶予はないですね。早くここから出ないと……」
私は一刻も早くここから出られることを祈った。次の瞬間、衛兵が慌てて走ってくると私を見てティアラだな? ここから出してやる、と言ってきた。
◇
『ティアラ様をここから出せーーー!!!!!』
『聖女様を解放しろーーーー!!!!』
クロノスの町外れの収容所の周りは多くの住人が詰めかけて一斉にティアラを牢屋から解放するように迫っていた。
「どう言うことだ?」
「わかりません。数時間前から急にクロノス中の住人がここに集まっています」
衛兵はどうしていいかわからなかった。今にも住人たちは暴動を起こしそうな雰囲気だった。
「これ以上ここに人が集まったら我々では対処できない。住人の言う通りにティアラという者を解放しよう」
「いいんですか?」
「やむを得ん」
◇
『うおーーーー!!! ティアラ様ーーーー!! 聖女様ーーーー!!』
『あなたのおかげで息子が助かりましたーーーー!!!』
『ティアラ様ーーー! 子供を助けてください!!』
私が収容所の扉を出ると大勢の住人が私の前に詰め寄って頭を下げてきた。クリスとレンが住人をかき分けて私の前に出てきた。
「ティアラ!! 心配したよ! 大丈夫か」
クリスが私の手を掴んで言うとレンが私とクリスの間に入ってきた。
「ティアラ! 大丈夫か!」
レンが泣きながら私に抱きついてきた。
「まだ終わってないわ!」
私は両手でレンを放しながらみんなに聞こえる声で言った。
「クリスはコカス鳥をアスペルド教会に集めてちょうだい! レンは患者をアスペルド教会に集めてちょうだい! 皆さんも患者を教会に集めるようにできるだけ多くの人に伝えてください。助けたい! 助かりたいなら、教会で会いましょう!!」
私は大勢の患者を助けるためにアスペルド教会へ向かった。
突如として発生した原因不明の疫病は周りの地域を飲み込みこの、クロノスの街も飲み込もうとしていた。発症したら最後貴族だろうが平民だろうが老若男女問わず人生の最期を迎えてしまう。
アスペルド信仰教団のニコライは医者であるにもかかわらず患者に祈ることしかできない自分を情けなく思った。
ニコライの居るクロノス町の教会には依然として多くの患者が運び込まれていた。グッタリとして動かなくなった我が子を教会に置き去りにして去っていく親もいた。私の信じる神は救ってくれないのだろうか? そう思いながらその残酷な光景をなすすべなく眺めていた。
ニコライの元へ衛兵がやってきた。
「ニコライ様。町で勝手に医療行為を行なっている娘がいます」
「何? 娘? いくつぐらいの娘だ?」
「はい。まだ若い10代の少女だそうです」
「勝手なことをして! これ以上患者を増やされてはたまらん。すぐにひっ捕らえろ!」
「は! わかりました!」
衛兵はそう言うとニコライのもとを去っていった。ニコライは10代の少女がこの病気を治せるとは思っていなかった。ニコライはため息をつきながらこの残酷な状況を見守ることしかできない自分を呪った。
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ティアラは次々とペストに感染した患者の家を回って抗体を注射していた。幼い少女の腕に抗体を注射し終えたとき、いきなり衛兵が家に入ってきてティアラは衛兵に取り押さえられた。
「何? どうして?」
「うるさい! 勝手に医療行為をした罪でお前を連行する」
「やめて! 私にはまだやることが……」
「黙れ! ほら早く、大人しくこっちに来い!」
私は衛兵に羽交い締めにされると、手足を縛られて連行された。クリスはそんな私を見て衛兵に抗議してくれたが、大勢の衛兵に取り押さえられて太刀打ちできないようだった。
私は町はずれの収容所に連れてこられて檻に入れられた。カビくさい檻の中は湿気でジメジメしていてとても快適とは言えない場所だった。檻の中には何人か先客がいてその中のリーダー格の女が私に声をかけてきた。
「あら。こんな小さい少女が何をヘマしたんだい?」
私はなんと言っていいか分からず黙ったままでいると、リーダー格の女がいきなり私の髪を掴むと後ろに引っ張った。私の顔が上に向くとリーダー格の女は上から私の顔をマジマジと見て可愛い顔をしているね私のペットにしてやろうか、と言ってきた。
「や……やめてください……」
私はそれだけを言うのがやっとだった。私に歯向かう意思がないと知ると女は私を突き飛ばした。私はそのまま倒れ込んだ。私は怖くて震えながら頭を上げると部屋の隅に倒れている人がいることに気がついた。私はゆっくりと倒れて苦しそうにしている人に近づいた。
「あまりそいつに近づくんじゃないよ! そういつは疫病に犯されている。もうじき死ぬよ」
リーダー格の女は吐き捨てるように言った。私は女の言うことを無視して苦しそうにしている女の人を診察した。黒い斑点が身体中にあった。リーダー格の女が言うようにペスト菌に侵されているようだった。私はポケットから抗体を取り出すと女に注射した。
「何してるんだ? お前?」
「抗体を注射しました。これでこの人は助かります」
「は? 何言ってるんだ! 町中の医者がこの病気は治らないと言っているんだぞ!」
「大丈夫です。二、三日安静にすれば助かります」
「ば……馬鹿なことを言うんじゃない! そんなもので助かるわけがないだろ!」
女はそう言うと再び私の髪を鷲掴みにすると顔を近づけて言った。
「もしそいつがそのまま死んだら、即座にお前を殺す。いいな!」
女を見ると目に涙を浮かべていた。
「大丈夫です」
私ははっきりと彼女に言った。
倒れていた女は次の日には熱が下がり意識を取り戻した。
「あんたが治してくれたのか?」
「もう大丈夫みたいですね」
「ああ……、あんたは命の恩人だ。名前を聞かせてくれないか?」
私は自分の名前を言った。彼女は一生忘れないよ、と言ってくれた。リーダー格の女は私たちのやりとりを見てびっくりしていた。
「なんで? どうして助かったんだ?」
「疫病を治す抗体を注射しました」
「それで助かるのか?」
私がはい、と返事をするとリーダー格の女は急に私の肩を掴んで目に涙を浮かべながら頼んできた。
「ティアラ……、私の弟と妹を助けてくれ! お願いだ!!」
「あなたと兄妹の名前は?」
「私はミリア、弟はロバート、妹はアリア」
「二人はどこにいるの?」
「町の中心部にあるアスペルド教会にいるんだ」
「発症したのはいつですか?」
「あんたがここにきた時の一日前だから二日は経ってる」
「あまり猶予はないですね。早くここから出ないと……」
私は一刻も早くここから出られることを祈った。次の瞬間、衛兵が慌てて走ってくると私を見てティアラだな? ここから出してやる、と言ってきた。
◇
『ティアラ様をここから出せーーー!!!!!』
『聖女様を解放しろーーーー!!!!』
クロノスの町外れの収容所の周りは多くの住人が詰めかけて一斉にティアラを牢屋から解放するように迫っていた。
「どう言うことだ?」
「わかりません。数時間前から急にクロノス中の住人がここに集まっています」
衛兵はどうしていいかわからなかった。今にも住人たちは暴動を起こしそうな雰囲気だった。
「これ以上ここに人が集まったら我々では対処できない。住人の言う通りにティアラという者を解放しよう」
「いいんですか?」
「やむを得ん」
◇
『うおーーーー!!! ティアラ様ーーーー!! 聖女様ーーーー!!』
『あなたのおかげで息子が助かりましたーーーー!!!』
『ティアラ様ーーー! 子供を助けてください!!』
私が収容所の扉を出ると大勢の住人が私の前に詰め寄って頭を下げてきた。クリスとレンが住人をかき分けて私の前に出てきた。
「ティアラ!! 心配したよ! 大丈夫か」
クリスが私の手を掴んで言うとレンが私とクリスの間に入ってきた。
「ティアラ! 大丈夫か!」
レンが泣きながら私に抱きついてきた。
「まだ終わってないわ!」
私は両手でレンを放しながらみんなに聞こえる声で言った。
「クリスはコカス鳥をアスペルド教会に集めてちょうだい! レンは患者をアスペルド教会に集めてちょうだい! 皆さんも患者を教会に集めるようにできるだけ多くの人に伝えてください。助けたい! 助かりたいなら、教会で会いましょう!!」
私は大勢の患者を助けるためにアスペルド教会へ向かった。
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