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〜シンデレラガール〜
アスペルド信仰教団の陰謀
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その少女は教会に入ってくるなり疫病で倒れている患者を診察し始めた。
少女は診察を終えるとカバンから注射器を取り出して患者に打ち始めた。私は止めようとしたが、周りの人々に邪魔されてとても少女を止めることはできなかった。私は少女の行いは神への冒瀆だ!、と力の限り叫んだ。しかし一夜明けると少女は奇跡を起こした。
少女が治療した患者の熱が下がり、死を待つだけの患者たちの中で意識を取り戻す者まで現れ始めた。私は神の奇跡をこの目で見ているかのような気持ちになった。まるで子供の時に見た聖女ロザリアの絵のようだった。
聖女様ロザリアを中心に疫病で死にかけた者や、戦争で重症を負った者たちが息を吹き返して彼女の周りに集まっている絵だった。少女を見た時その絵がニコライの頭に浮かんだ。この少女は聖女ロザリアの生まれ変わりのように思えた。
◇
ティアラの活躍により疫病が治まって二週間が過ぎた。みんなすっかり元の生活に戻っていた。他の町では住民全員が病気を発症して消えた町もあったようだが、このクロノスの町は死人が最初に数名出ただけで治まった。これも全てティアラ様のおかげだとニコライは思っていた。
私が彼女を牢屋に入れなければさらに死者は少なくなっていたかもしれない。そのことはニコライも大いに悔やんでいた。罪滅ぼしとまではいかないが彼女をアスペルド信仰教団に入団してもらおうとニコライは考えていた。ニコライはこれだけの功績を挙げた彼女であればかなりの位の高い役職に抜擢できるだろうと考えていた。
一般市民が教団の幹部になれれば家族も含めて一生困らない生活ができるのでティアラ様も喜んでくれるだろうと考えていた。ニコライは早速このことをクロノスの奇跡としてアスペルド教団の主宰のロマノフに話した。
ロマノフはニコライの話を聞き終えるとそれはすごい! 町を一つ救ったとは伝説の聖女様と一緒だね、と言って喜んだ。ニコライはティアラ様がロマノフに良い印象をもって貰ったことに満足するとロマノフと別れた。
◇
ロマノフはニコライが居なくなると暫く考えた。
(ティアラとは先日友人のクリスが連れてきてくれたあの少女で間違いないだろう。私の病気も言い当ててくれた。彼女は何者だろう?)
ティアラはクリスの紹介でロマノフと以前会っていた。ロマノフの病気が脚気であることに気づいて助言をしてくれたおかげで、ロマノフは病気が治り健康になることができた。ロマノフにとってティアラは命の恩人であった。だが、ロマノフはティアラに対して気になることがあった。
(彼女の行なった行動はとても今の時代に生きてる者のできることではない。まして少女にできるとは考えづらい。もしかしたら…………。彼女は違う世界からきた人間なのではないか? 高度な文明や未来からきた人間であれば私の病気も今回の疫病の症状や治療方法もすでに知っていたのかもしれない……。そうでなければ少女にこのような奇跡は起こせないだろう。もしそうであれば彼女はこのアスペルド教団にとって脅威となるのではないか?)
(我々は神の名の下、信仰心で病と戦うことを生業としている。それを真っ向から否定されればアスペルド教団は滅びてしまうのではないか?)
ロマノフは暫く思い悩んだ挙句、彼女を排除することを決定した。
◇
クルトガは薄汚れたジョッキに入ったビールを一気に胃袋に流し込むとドン! と大きな音を立てて空になったジョッキを机に叩きつけた。
「ブハーー!!」
人目も憚らず大きなゲップをしたかと思うと唾を飛ばしながらガハハ……と下びた笑い声を上げた。ミリアはクルトガを辛辣な視線で見ていた。早く話を終えてこの場を離れたいと思っていたが、クルトガはなかなか引き下がらなかった。
「ミリア。本当に簡単な仕事なんだ。一緒にやろうじゃないか」
「クルトガさん悪いがもう私はそう言った仕事は受けないことにしたんですよ」
「殺し屋ミリアが堅気になれると本当に思っているのか?」
クルトガはこれまでとは違う殺気のある目で、ミリアを見た。クロノスの町外れの居酒屋の隅でミリアはクルトガに呼び出され仕事の依頼を受けていた。いくら町外れの居酒屋で周りに人がいないとはいえ殺し屋というワードを人目も憚らず使用するあたりプロでは無いとミリアは思った。
ミリアは絶対こんな奴と組むとロクな事にならないと思った。
クルトガはいくら断ってもなかなか帰してくれそうになかったので、ミリアはとりあえず仕事の内容だけ聞いてやんわりと断ろうと思った。
「クルトガさんそれで? 仕事の内容は?……。ターゲットは誰ですか?」
「おお……やる気になったか。それでこそミリアだ」
「いえ……お話だけでも……と思いまして」
「ガハハハ。いいだろう。簡単な話さ。最近この町で噂のティアラという少女を殺るだけさ、殺し屋ミリアにとっては赤子の手を捻るより簡単だろう」
ミリアはティアラと聞いて内心驚いたが、顔色ひとつ変えずにそうですか ?、と言った。ティアラと初めて会ったのは牢獄の中だった。ミリアにとってティアラは弟妹を疫病から救ってくれた命の恩人だった。そんな少女をこの目の前の男は殺そうとしていた。ミリアは怒りが込み上げてくるのを抑えるとクルトガに言った。
「簡単そうな仕事ですね。私も仲間に入れてください」
ミリアはティアラ暗殺を快く引き受けたふりをした。
(ティアラは絶対に死なせない)
ミリアはそう強く思うとクルトガに連れられてアジトに向かった。
少女は診察を終えるとカバンから注射器を取り出して患者に打ち始めた。私は止めようとしたが、周りの人々に邪魔されてとても少女を止めることはできなかった。私は少女の行いは神への冒瀆だ!、と力の限り叫んだ。しかし一夜明けると少女は奇跡を起こした。
少女が治療した患者の熱が下がり、死を待つだけの患者たちの中で意識を取り戻す者まで現れ始めた。私は神の奇跡をこの目で見ているかのような気持ちになった。まるで子供の時に見た聖女ロザリアの絵のようだった。
聖女様ロザリアを中心に疫病で死にかけた者や、戦争で重症を負った者たちが息を吹き返して彼女の周りに集まっている絵だった。少女を見た時その絵がニコライの頭に浮かんだ。この少女は聖女ロザリアの生まれ変わりのように思えた。
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ティアラの活躍により疫病が治まって二週間が過ぎた。みんなすっかり元の生活に戻っていた。他の町では住民全員が病気を発症して消えた町もあったようだが、このクロノスの町は死人が最初に数名出ただけで治まった。これも全てティアラ様のおかげだとニコライは思っていた。
私が彼女を牢屋に入れなければさらに死者は少なくなっていたかもしれない。そのことはニコライも大いに悔やんでいた。罪滅ぼしとまではいかないが彼女をアスペルド信仰教団に入団してもらおうとニコライは考えていた。ニコライはこれだけの功績を挙げた彼女であればかなりの位の高い役職に抜擢できるだろうと考えていた。
一般市民が教団の幹部になれれば家族も含めて一生困らない生活ができるのでティアラ様も喜んでくれるだろうと考えていた。ニコライは早速このことをクロノスの奇跡としてアスペルド教団の主宰のロマノフに話した。
ロマノフはニコライの話を聞き終えるとそれはすごい! 町を一つ救ったとは伝説の聖女様と一緒だね、と言って喜んだ。ニコライはティアラ様がロマノフに良い印象をもって貰ったことに満足するとロマノフと別れた。
◇
ロマノフはニコライが居なくなると暫く考えた。
(ティアラとは先日友人のクリスが連れてきてくれたあの少女で間違いないだろう。私の病気も言い当ててくれた。彼女は何者だろう?)
ティアラはクリスの紹介でロマノフと以前会っていた。ロマノフの病気が脚気であることに気づいて助言をしてくれたおかげで、ロマノフは病気が治り健康になることができた。ロマノフにとってティアラは命の恩人であった。だが、ロマノフはティアラに対して気になることがあった。
(彼女の行なった行動はとても今の時代に生きてる者のできることではない。まして少女にできるとは考えづらい。もしかしたら…………。彼女は違う世界からきた人間なのではないか? 高度な文明や未来からきた人間であれば私の病気も今回の疫病の症状や治療方法もすでに知っていたのかもしれない……。そうでなければ少女にこのような奇跡は起こせないだろう。もしそうであれば彼女はこのアスペルド教団にとって脅威となるのではないか?)
(我々は神の名の下、信仰心で病と戦うことを生業としている。それを真っ向から否定されればアスペルド教団は滅びてしまうのではないか?)
ロマノフは暫く思い悩んだ挙句、彼女を排除することを決定した。
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クルトガは薄汚れたジョッキに入ったビールを一気に胃袋に流し込むとドン! と大きな音を立てて空になったジョッキを机に叩きつけた。
「ブハーー!!」
人目も憚らず大きなゲップをしたかと思うと唾を飛ばしながらガハハ……と下びた笑い声を上げた。ミリアはクルトガを辛辣な視線で見ていた。早く話を終えてこの場を離れたいと思っていたが、クルトガはなかなか引き下がらなかった。
「ミリア。本当に簡単な仕事なんだ。一緒にやろうじゃないか」
「クルトガさん悪いがもう私はそう言った仕事は受けないことにしたんですよ」
「殺し屋ミリアが堅気になれると本当に思っているのか?」
クルトガはこれまでとは違う殺気のある目で、ミリアを見た。クロノスの町外れの居酒屋の隅でミリアはクルトガに呼び出され仕事の依頼を受けていた。いくら町外れの居酒屋で周りに人がいないとはいえ殺し屋というワードを人目も憚らず使用するあたりプロでは無いとミリアは思った。
ミリアは絶対こんな奴と組むとロクな事にならないと思った。
クルトガはいくら断ってもなかなか帰してくれそうになかったので、ミリアはとりあえず仕事の内容だけ聞いてやんわりと断ろうと思った。
「クルトガさんそれで? 仕事の内容は?……。ターゲットは誰ですか?」
「おお……やる気になったか。それでこそミリアだ」
「いえ……お話だけでも……と思いまして」
「ガハハハ。いいだろう。簡単な話さ。最近この町で噂のティアラという少女を殺るだけさ、殺し屋ミリアにとっては赤子の手を捻るより簡単だろう」
ミリアはティアラと聞いて内心驚いたが、顔色ひとつ変えずにそうですか ?、と言った。ティアラと初めて会ったのは牢獄の中だった。ミリアにとってティアラは弟妹を疫病から救ってくれた命の恩人だった。そんな少女をこの目の前の男は殺そうとしていた。ミリアは怒りが込み上げてくるのを抑えるとクルトガに言った。
「簡単そうな仕事ですね。私も仲間に入れてください」
ミリアはティアラ暗殺を快く引き受けたふりをした。
(ティアラは絶対に死なせない)
ミリアはそう強く思うとクルトガに連れられてアジトに向かった。
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