不滅のティアラ　〜狂おしいほど愛された少女の物語〜

白銀一騎

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〜兄弟の絆〜

兄弟の絆

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　カイトは全身傷だらけで冷たい床の上で倒れていた。両親が事故で死んで幼いカイトは叔父の家に引き取られたが、叔父はカイトを執拗しつようなまでに虐待した。

　声がうるさいと言っては殴られ、顔が気に入らないといっては容赦なく殴られた。ご飯も満足に食べさせてもらえなかった。殴られて口の中が切れ、食べ物の代わりに自分の血の味がした。

『ぐぅ～～』

　カイトのお腹が鳴った。

「ん！？」

　叔父がお腹の音に気がついた。

「何だ！　うるさいぞ！！」

　叔父はそう言いながらカイトに近づいて来た。

（また殴られる）

　カイトはそう思うと自分のお腹を抑えた。

（これ以上殴られたら……死んでしまう）

　そう思うと怖くなって全身が震えた。

（来るな！　来ないでくれ！　お願いだ！）

　カイトの思いとは裏腹に叔父は徐々に近づいて来た。

（も……もうダメだ！）

　カイトがそう覚悟した時、家の玄関が開いて誰かが部屋に入ってきた。

「どうした？　なぜ倒れている？」

　カイトが部屋に入ってきた人物を見ると兄のマルクスだった。

　マルクスはボロボロになっているカイトを見て慌てて駆け寄った。

「誰がこんな事を！？　大丈夫かカイト！？」

　マルクスは叔父を睨みつけた。

「お……お前がやったのか？！」

「う……うるせーー！！　こいつは俺のもんだ俺が何をしようとお前には関係ないだろ！」

　その瞬間、叔父はカイトの目の前から消えた。

　『ドーーン！』

　叔父は壁に弾き飛ばされて頭を強く打ち付けて悶絶していた。

「ふざけやがって！　俺の大切な弟を貴様は！！」

　マルクスは叔父の胸ぐらを掴むと殴り飛ばした。

　叔父は反対側の壁に吹っ飛んだ。

「もうここに弟を置いておけない。今すぐ連れて帰る！」

「ばかな！　そんなことはさせない！」

　叔父は殴られて倍になった頬を抑えながらマルクスに向かって叫んだ。

「そのまま連れていけば訴えてやる！」

「何だと貴様！！」

　再度叔父を殴ろうと拳を握って胸ぐらを掴んだ。叔父はマルクスの拳を見て怖気づいて叫んだ。

「ま……まて。100万ギラよこせ。そしたら弟を帰してやる。訴えないと、や……約束する」

「なんだと？」

「どうした。大事な弟だろ？　100万ギラなんて安いもんだろ？」

　兄は怒りで震える拳をゆっくりと下ろすと叔父の胸ぐらを掴んでいる手を離した。

「分かった。明日もってくる」

「フン、本当に用意できるのか？」

　カイトは絶対ダメだと思った。兄に負担はかけられないと思い、傷だらけの体にありったけの力を振り絞り這いずって兄の足にすがりついた。

「兄ちゃんだめだ。俺のことは心配しなくていいから。大丈夫だから」

　殴られて感覚が無くなった口をなんとか動かして必死で兄に伝えた。

「バカ。心配すんな、100万ギラぐらい俺にとっては大した額じゃない」

「で……でも……兄ちゃん……」

「大丈夫だ。ここから絶対助けてやるからな。明日一緒に帰ろう」

　◇

「次の日、兄ちゃんは約束通り100万ギラをもってきて叔父に投げつけると俺をここに連れてきてくれた」

「優しいお兄さんね」

　私はいつの間にか涙を流していた。

「ああ、優しかったよ。兄ちゃんは料理人だった。100万ギラは兄ちゃんがいつか自分の店を持つために貯めていた金だった。その大切な金を俺のために使ってくれた。お……俺を助けるために……」

　カイトはそこまで話すと涙を流した。

「兄ちゃんは……俺を養うために料理人をやめてお金が多くもらえるギルティーに入隊したんだ…………、俺が……兄ちゃんの夢を奪ってしまった……」

　私はなんと言っていいか言葉が出なかった。

「兄ちゃんの料理は本当に美味しかったんだぜ。初めてここに来た時に兄ちゃんが料理を作ってくれて食べたら美味しくて、美味しくて気づいたら俺泣いてたんだ」

　叔父のところではほとんど満足なご飯は出してくれたことなど無かった。カイトは初めて兄の料理を見た時、今まで見たこと無い光景に驚いた。

　鼻をつく香ばしい匂い、湯気の立っている熱々のご飯、思わず無我夢中で食べていると気がつくと涙を流していた。

「うまい！　うまい！　こんなうまい料理食べたこと無いよーー！」

　夢中で食べているカイトを兄はそっと抱きしめた。

「カイト……。い……今まで気づいてやれなくて悪かったな……兄ちゃんを許してくれ……これからは……兄ちゃんが……お……お前を守ってやるからな～～～！」

「に……兄ちゃん！　うぅ………」

「その時思いっきり泣いたよ。兄の言葉と暖かなぬくもりに俺は救われたんだ。お前の料理を食べたら兄ちゃんの料理を思い出したんだよ……ん？　どうした？」

　私はいつの間にか号泣していた。

「な？　何だよ？　そんなに泣くなよ」

「だ……だって……うゎーーーーん」

「な……なんだよ。変なやつだな」

「こ……これからは……私がご飯を作ってあげるね」

　私は涙を拭きながらカイトに言った。

「ああ……ん？」

　笑っていた顔を強張らせながら付け足した。

「こ……ここにいる間だけだからな。か……勘違いするなよ」

「ええ。分かってるわ」

　私は次は何を作ろうか？、何故かこの人に喜んでもらうご飯を作りたいと思った。

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