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〜兄弟の絆〜
忍び寄る影
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(これぐらい買っとけばいいかな?)
カイトは市場で大量の食材を買い込んだ。これまで料理は兄に任せっきりだったのでどんな食材を買えば良いのか全くわからなかった。兄が居なくなった後も自炊せずロイという部下の家でお金を払って食べさせてもらっていた。
(そう言えばロイの奴、ガンドールから帰って来て体調を崩していると言っていたな)
カイトはお見舞いに行こうと思い果物を買うと帰宅途中にあるロイの家に寄った。
カイトは自宅近くにあるロイの家に着いた。呼び鈴を押すとロイの奥さんのリンと二人の子供が迎えてくれた。
この家はいつ来ても温かい家庭だな、と思った。
玄関先でお見舞いを渡してすぐ帰るつもりだったが、奥さんのリンがせっかく来たんだからと言って半ば強引に家に引き込まれた。そのままロイが寝ている寝室に通された。
ロイはベッドで寝ていたがカイトが寝室に入るとすぐに起きた。
「隊長!」
カイトの姿を確認するとびっくりして起き上がろうとした。
「いい。そのまま無理はするな」
カイトは上半身を起こそうとしているロイを止めた。
「容態はどうだ?」
「いや、お恥ずかしい。少し遠征の疲れが出たようで、全く面目ありません」
「気にするな、今はゆっくり休んで早く病気を治すことが仕事だ」
「ありがとうございます」
カイトとロイがしばらく話しているとリンが部屋に入ってきた。
「カイト様、ご飯ができました」
「え?」
カイトが返答に困っているとロイも遠慮せず食べていってください、と言ってきた。せっかく作ってくれた好意を無駄にはできないと思い食べて帰ることにした。おそらくティアラが家でご飯を作って待っているだろうと思ったが、ロイの家族にティアラのことを話すことはできなかった。
カイトがリンの作った料理を食べているとリンが話しかけてきた。
「カイト様、自炊しているんですか?」
「え? あ……ああ……」
市場で大量の食材を買い込んでいることを思い出した。一度家に帰って荷物を置いてくれば良かったと後悔した。
「少しやってみようと思ってな……」
「へえーー。誰か作ってくれる人でも見つかったんですか?」
ドキリと、動揺したが、リンに悟られないように平静を装って答えた。
「そ……そんなこと……あ……あるわけ無いだろ」
「あははー、冗談ですよ。気にしないでください」
カイトはこれ以上ここにいるとボロが出てしまうと思い、食事を食べ終わるとお礼を言って速やかに帰宅した。
家に帰ると案の定ティアラがたくさんのご飯を作って待っていた。
「おかえりなさい。御飯作ったとこだから冷めないうちにどうぞ」
「あ……ああ……、実は……」
「ん? なに?」
ティアラは満面の笑みを浮かべてカイトを見た。その顔を見るとロイの家でご飯を食べたと言うのを諦めた。
「ん……、いや……なんでも無い」
カイトはそう言うと美味しそうにティアラの作ったご飯を全部平らげた。
◇
それから一週間たった後、カイトは泥水のように濁った色の川を見ていた。
普段は穏やかな澄んだ水の川なのに昨日降った雨により水嵩が増していた。
このヒロタ川の向こう岸はルーン大国が広がっている。
現在カイトの住むエルフの国のギルディアは人族の国、ルーン大国と戦争していた。
カイトの所属する隊は、この川を渡ってこようとするルーン大国の兵士を見張ることが役目となっていた。現在は比較的戦火も落ち着いているのと川の水も増水していることを踏まえると流れの早いこの川を渡ってくる者は居るはずもなかった。
「今日は奴らも来ないだろうな」
カイトは近くにいる部下に訪ねた。
「ええ。この状態の川を渡ってくるなんて自殺行為ですよ」
カイトは、そうだな、とだけ答えた。
「そう言えば今日もロイは休んでいるのか?」
「ええ。それがロイだけでなくロイの子供二人も同じ症状になったみたいで一家で大変みたいですよ」
「なに? そうなのか?」
「ええ。実はそれだけじゃないんです」
「ん? まだ何かあるのか?」
「ええ。マチルダとセナの二人もロイと同じ症状が出ているみたいです」
「なに? マチルダとセナだと?」
「ええ。ロイとマチルダとセナの三人共この前カイト隊長と一緒にガンドールに行って帰ってきた者たちですよね」
三人ともガンドールの町の近くの村で物資を運搬する任務にあたっていた。何かわからないが嫌な予感がした。
「とりあえずこの後、ロイの家に行って様子を見てくるよ」
カイトはそう言うと川を見た。濁った川を見ながら不安な気持ちで一杯になった。何かわからないがとてつもない化け物がゆっくりと近づいてきているそんな予感がした。
◇
カイトはロイの家の呼び鈴を鳴らした。しばらく待っても、反応が無かった。いつもであればすぐにリンと二人の子供が玄関のドアを開けてあの明るい笑顔で迎え入れてくれるはずなのに、おかしいと思い玄関のドアに手をかけようとした時、『ガチャ』と音がしてリンが現れた。
「カイト様? ご……ごめんなさい……」
リンは苦しそうにしていた。
「どうした?」
「そ……それが……主人の病が、家族に感染ったようで……。お見苦しいところを見せて……ごめんな……さ……」
リンはそう言うとその場で倒れた。
「おい! しっかりしろ!」
リンを抱き起こすと体が燃えるように熱かった。すぐに額を触るとものすごい高熱に侵されて居るのが分かった。
(これは……まさか? ガンドールで流行っているペストという病か?)
カイトはガンドールで行われたティアラの討論会に観客として参加していた。
(もしそうならティアラに頼めば、彼女なら治せるかもしれない)
そう思ったカイトはリンをベッドに寝かせると、すぐに戻ると言って、そのままティアラの待つ自宅に帰った。
カイトは市場で大量の食材を買い込んだ。これまで料理は兄に任せっきりだったのでどんな食材を買えば良いのか全くわからなかった。兄が居なくなった後も自炊せずロイという部下の家でお金を払って食べさせてもらっていた。
(そう言えばロイの奴、ガンドールから帰って来て体調を崩していると言っていたな)
カイトはお見舞いに行こうと思い果物を買うと帰宅途中にあるロイの家に寄った。
カイトは自宅近くにあるロイの家に着いた。呼び鈴を押すとロイの奥さんのリンと二人の子供が迎えてくれた。
この家はいつ来ても温かい家庭だな、と思った。
玄関先でお見舞いを渡してすぐ帰るつもりだったが、奥さんのリンがせっかく来たんだからと言って半ば強引に家に引き込まれた。そのままロイが寝ている寝室に通された。
ロイはベッドで寝ていたがカイトが寝室に入るとすぐに起きた。
「隊長!」
カイトの姿を確認するとびっくりして起き上がろうとした。
「いい。そのまま無理はするな」
カイトは上半身を起こそうとしているロイを止めた。
「容態はどうだ?」
「いや、お恥ずかしい。少し遠征の疲れが出たようで、全く面目ありません」
「気にするな、今はゆっくり休んで早く病気を治すことが仕事だ」
「ありがとうございます」
カイトとロイがしばらく話しているとリンが部屋に入ってきた。
「カイト様、ご飯ができました」
「え?」
カイトが返答に困っているとロイも遠慮せず食べていってください、と言ってきた。せっかく作ってくれた好意を無駄にはできないと思い食べて帰ることにした。おそらくティアラが家でご飯を作って待っているだろうと思ったが、ロイの家族にティアラのことを話すことはできなかった。
カイトがリンの作った料理を食べているとリンが話しかけてきた。
「カイト様、自炊しているんですか?」
「え? あ……ああ……」
市場で大量の食材を買い込んでいることを思い出した。一度家に帰って荷物を置いてくれば良かったと後悔した。
「少しやってみようと思ってな……」
「へえーー。誰か作ってくれる人でも見つかったんですか?」
ドキリと、動揺したが、リンに悟られないように平静を装って答えた。
「そ……そんなこと……あ……あるわけ無いだろ」
「あははー、冗談ですよ。気にしないでください」
カイトはこれ以上ここにいるとボロが出てしまうと思い、食事を食べ終わるとお礼を言って速やかに帰宅した。
家に帰ると案の定ティアラがたくさんのご飯を作って待っていた。
「おかえりなさい。御飯作ったとこだから冷めないうちにどうぞ」
「あ……ああ……、実は……」
「ん? なに?」
ティアラは満面の笑みを浮かべてカイトを見た。その顔を見るとロイの家でご飯を食べたと言うのを諦めた。
「ん……、いや……なんでも無い」
カイトはそう言うと美味しそうにティアラの作ったご飯を全部平らげた。
◇
それから一週間たった後、カイトは泥水のように濁った色の川を見ていた。
普段は穏やかな澄んだ水の川なのに昨日降った雨により水嵩が増していた。
このヒロタ川の向こう岸はルーン大国が広がっている。
現在カイトの住むエルフの国のギルディアは人族の国、ルーン大国と戦争していた。
カイトの所属する隊は、この川を渡ってこようとするルーン大国の兵士を見張ることが役目となっていた。現在は比較的戦火も落ち着いているのと川の水も増水していることを踏まえると流れの早いこの川を渡ってくる者は居るはずもなかった。
「今日は奴らも来ないだろうな」
カイトは近くにいる部下に訪ねた。
「ええ。この状態の川を渡ってくるなんて自殺行為ですよ」
カイトは、そうだな、とだけ答えた。
「そう言えば今日もロイは休んでいるのか?」
「ええ。それがロイだけでなくロイの子供二人も同じ症状になったみたいで一家で大変みたいですよ」
「なに? そうなのか?」
「ええ。実はそれだけじゃないんです」
「ん? まだ何かあるのか?」
「ええ。マチルダとセナの二人もロイと同じ症状が出ているみたいです」
「なに? マチルダとセナだと?」
「ええ。ロイとマチルダとセナの三人共この前カイト隊長と一緒にガンドールに行って帰ってきた者たちですよね」
三人ともガンドールの町の近くの村で物資を運搬する任務にあたっていた。何かわからないが嫌な予感がした。
「とりあえずこの後、ロイの家に行って様子を見てくるよ」
カイトはそう言うと川を見た。濁った川を見ながら不安な気持ちで一杯になった。何かわからないがとてつもない化け物がゆっくりと近づいてきているそんな予感がした。
◇
カイトはロイの家の呼び鈴を鳴らした。しばらく待っても、反応が無かった。いつもであればすぐにリンと二人の子供が玄関のドアを開けてあの明るい笑顔で迎え入れてくれるはずなのに、おかしいと思い玄関のドアに手をかけようとした時、『ガチャ』と音がしてリンが現れた。
「カイト様? ご……ごめんなさい……」
リンは苦しそうにしていた。
「どうした?」
「そ……それが……主人の病が、家族に感染ったようで……。お見苦しいところを見せて……ごめんな……さ……」
リンはそう言うとその場で倒れた。
「おい! しっかりしろ!」
リンを抱き起こすと体が燃えるように熱かった。すぐに額を触るとものすごい高熱に侵されて居るのが分かった。
(これは……まさか? ガンドールで流行っているペストという病か?)
カイトはガンドールで行われたティアラの討論会に観客として参加していた。
(もしそうならティアラに頼めば、彼女なら治せるかもしれない)
そう思ったカイトはリンをベッドに寝かせると、すぐに戻ると言って、そのままティアラの待つ自宅に帰った。
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