51 / 117
〜兄弟の絆〜
貧民街の倉庫
しおりを挟む
カイト達三人は市場の近くの貧民街の中に入って行った。
貧民街の路地は狭く昼間でも薄暗くてジメジメしていた。所々にボーッとただ空を見つめている人や小さい子供がボロボロの身なりでただ呆然と座っていた。
戦争で家や家族を失って働く気力もなく呆然としている人のようだった。カイトたちは戦争で両親も亡くなり孤児が増えていると聞かされていたがこれほど多いとは思わなかった。
貧民街の中心に行くにつれて家も簡素な物が多くなっていった。強風が吹けば崩れそうな家々の脇を、ティアラが目印に残してくれた魚の鱗を頼りに進んでいくと大きな鉄の門のある家の前にたどり着いた。
「ん? こ……これは?」
ロイが道のあちこちに落ちている物に気がついた。
カイトが落ちていたものを手に取るとそれは割れた小瓶や注射器の破片だった。そして周りを見るとぬかるんだ地面に足跡がいくつもあった。鉄の扉には泥の手形が着いていた。その泥の手形は子供のように小さい手形だった。
カイトはその小さい手形を愛おしそうに触ると拳を握りしめて怒りに震えた。
地面にあるいくつもの足跡とこの手形を見るだけで、ここでティアラが何者かに襲われたことが容易に想像できた。
「こ……この手形は?」
「ああ。間違いないティアラのだ!」
「隊長! あそこ!」
鉄の門の上部の格子から中を覗いていたロイが指を指しながら叫んだ。
指している先を見ると門の中の左側の壁に同じ形の手形がはっきりと確認できた。
「ティアラはこの建物の中に連れて行かれたようだな」
「た……隊長……」
「お前たちはここで待機しろ」
「は……はい。わかりました!」
ロイはすぐに返事をして震えながら後退すると、妻のリンの腕を掴んだ。
「え? ちょ……、いくらカイト隊長でも一人で乗り込むのは危険じゃないかしら? 相手は何人いるのかわからないのよ」
リンは不服そうに夫のロイに訴えたが、ロイは震えながら言った。
「隊長がギルティーに入隊したのが15歳の時なんだ」
「え? そんなに若くしてギルティー入隊するのは無理よ」
「そうだ、いくら才能がある人間でも20歳前にギルティーに入隊することは不可能と言われていたが、隊長は最年少記録を5歳も引き下げた。それはあるスキルを開眼したからだとされている」
「あるスキル? カイト隊長は何のスキルを持っているの?」
「この世界の魔法属性最強のスキル雷帝の称号を隊長は持っている」
「ら……雷帝! し……神格スキルってやつ?」
「そうだ、この世界にある4つの神格スキル、勇者・剣聖・聖女・雷帝の雷帝だ」
リンはカイトを見た。目の前にいるカイトは徐々に髪が逆立っていき体から雷のような電撃がいくつも走っいていった。それに呼応するようにだんだんと空が曇っていき、気がつけば空いっぱいに雷雲が広がっていった。
「スキルで天候も変えてしまうの?」
「ああなった隊長には誰も近づけない。近くにいるだけで電撃に当たって危険だ。もう誰にも隊長を止めることはできない」
『ドーーーーーーーーーン!!!!』
眩しい光が走ったと感じた瞬間、数百キロは優に超えていただろう鉄の門は跡形もなく吹き飛んでいた。カイトの周りに稲妻のような電撃が無数に走る。そのままゆっくりとカイトは一人家の中に入って行った。
◇
大きな倉庫のような建物の中に様々なものが所狭しと置かれていた。二メートルもある大きな仏像や様々な武器や防具や民芸品のような置物が置いてあった。エルフの男たちは荷物を運んだり、品物をチェックしているようだった。
大男は私を担いだまま倉庫に入っていった。途中で私に気づいた何人かの男に声を掛けられていた。
「ああ、ガルボさん。ん? そ……その抱えてるのは誰ですか?」
ガルボと言われた大男は何も答えないまま私を抱えながらズカズカと倉庫の中心に私を連れて行くと私を倉庫の床にそっと下ろした。
男たちは作業の手を止めて一斉に私を見た。
「誰ですか? その女の子は?」
「さあな? 知らん、でも外からこの家を覗いていた」
「え? この家を?」
男たちは怪しいものを見るように一斉にこちらを睨んできた。男たちの鋭い目つきに目をそらした。
「お嬢ちゃん、どうしてこの家を見ていたんだ?」
ガルボの質問に答えないで目をそらした。
「もっと顔を見せろ!」
ガルボはいきなりフードを掴むと後ろに引っ張った。
「なに? こ……こいつは……」
私はフードを剥がされ頭が現になった。すぐに現になった耳を手で隠したが、時すでに遅く、私がエルフでないことが、ここにいる全員に分かってしまった。
「なんで? ルーン大国の人間がここに?」
「お前、どうやってここに来た?」
私は観念してすべてを正直に話すことにした。
「私はルーンの国の人じゃないです。手違いでここに居ます」
「ルーンの人間じゃないのか?」
「はい。違います」
「どうやってここに来た?」
「飛行船の中に誤って入ってしまって……」
「ああ。ギルティーの船に乗ってきたのか」
「はい。あ……あの……、私を殺します?」
「は?」
「私のことが憎いんじゃないですか?」
恐る恐る男たちに聞いてみた。するとガルボと呼ばれた男は大声で笑い出した。
「ガハハハ!!。俺たちはルーンの兵士に対しては恨みを抱いているが、人間全員が憎い訳じゃない」
「え? 本当ですか?」
「ああ。俺たちはルーン大国と闇で取引をしているくらいだからな」
「おいバカ! 喋りすぎだ」
喋った男はバツが悪そうに舌を出しておどけた。
「それで、お前はここに何をしに来た?」
「あの……マルクスさんという人を探してるんです。あなた達が誘拐犯だと思って……」
「は? 誘拐犯? マルクス? 何を言ってんだ?」
「ガハハハ!!!」
ガルボは私の言ったことを聞いて再び爆笑した。
「俺達はルーン大国と裏で密輸をしているだけで、誘拐はしていないよ」
「え? その腕のサソリの入れ墨は?」
「ああこれか、これは信仰上のおまじないだよ」
「じ……じゃあ、マルクスさんていう人は?」
「そんな奴は知らないよ」
私は心の底からガッカリした。うつむいて元気を失った私にガルボが声をかけようとした瞬間倉庫の入り口が光った。
『ドーーーーーーン!!!』
轟音と共に倉庫の入り口の扉が吹き飛んだかと思うとものすごい速さで誰かが倉庫に入ってきて私の頭の上まで飛んできた。
「そこまでだーーーー!!!」
頭上から声がしたので見ると金色の髪を逆立てて全身に雷を纏ったカイトが居た。
「え? カイトなの?」
「ティアラ、もう心配するな」
カイトはそう言うとゆっくりと頭上から降りてきて私の前に立った。
「あ……あんた、誰だ?」
「ギルティークラウンだ!」
そう言うとガルボのすぐ脇に電撃が走ったかと思うと、轟音とともにガルボの巨体が二メートルほど吹き飛んだ。雷が落ちた地面は真っ黒く焦げて大穴が空いていた。
「ヒィー! あ……あんた、まさか雷帝かよ!」
雷帝と聞いて男たちは一斉に物陰に隠れた。
「俺を知っているのか?」
「ギルティークラウンの中で一番やばい奴だっていうのは知っているよ」
「知ってるなら話が早い、お前達覚悟しろよ!」
「ちょ……ちょっとまってくれ……、俺達はそのお嬢ちゃんに何もしていないよ」
「何だと? 嘘を付くな!」
カイトは怒りに我を忘れている様子だったので見かねて声を掛けた。
「カイト、本当よ」
私はカイトを止めた。
「なに? 本当か?」
「ええ。まあ無理やりここに連れてこられたのはあるけど、それは私が勝手に家の中を覗いていたからで……」
「無理やり連れ込まれたのか!」
カイトは再びガルボに向き直った。ガルボはカイトに睨まれれてヒィー、と顔を引きつらせた。
「でも、連れてこられただけで危害は加えられていないの信じて……」
「お……お前がそう言うなら……」
カイトは私の言うことを信じて落ち着きを取り戻した。しばらくすると雷が消えて逆だっていた髪の毛も元に戻った。
その様子を見たガルボが恐る恐る私達に話しかけて来た。
「どうして、人間とギルティーが一緒にいるんだ?」
「そ……それは……」
どう説明すれば良いのか悩んでいた。
「何か訳がありそうだな……、どうだ良ければそこのお嬢さんをルーン大国に連れて行ってやるぞ」
「なに? 冗談を言うな」
「冗談?」
「そんなことできるはずないだろ」
ガルボはしばらく悩んだ末カイトに説明を始めた。
「ギルティーの旦那よ、周りをよく見てみろよ」
カイトは倉庫にある品々を見た。確かに倉庫の中にはルーン大国の民芸品や武器や防具が所狭しと置かれていた。
「俺達はルーン大国との間で密輸をしている」
「密輸だと? やっぱり犯罪者じゃないか!」
カイトが身構えるとガルボは狼狽えた。
「ま……待ってくれ。密輸しているおかげでそのお嬢ちゃんを安全にルーン大国に連れて行ってやれるんだぞ」
「そ……それは……」
「お嬢ちゃんもここにいるよりは、ルーン大国に行ったほうが命の危険は無いんじゃないか?」
カイトは何も言わずに黙り込んだ。確かにこのままギルディアに居れば人間のことをよく思っていない者に命を狙われる危険が常に付きまとう、そのために自由に外出もさせてやれない。
(ティアラのことを思えばその方が良いのかもしれない)
カイトがしばらく黙っているとガルボの方から提案してきた。
「別に無理にとは言わないよ、三日後にここから幌馬車が出るからルーン大国に行きたければそれに乗せてやるよ」
「本当に安全なんだろうな!」
「ああ。今まで何百回と取引してるけど、一度も危険な目にあったことは無いよ」
「少し考えさせてくれ」
「ああ良いぜ。3日間あるんだ。じっくり考えればいいよ」
私達はその後ガルボのいる倉庫を後にして家路についた。
貧民街の路地は狭く昼間でも薄暗くてジメジメしていた。所々にボーッとただ空を見つめている人や小さい子供がボロボロの身なりでただ呆然と座っていた。
戦争で家や家族を失って働く気力もなく呆然としている人のようだった。カイトたちは戦争で両親も亡くなり孤児が増えていると聞かされていたがこれほど多いとは思わなかった。
貧民街の中心に行くにつれて家も簡素な物が多くなっていった。強風が吹けば崩れそうな家々の脇を、ティアラが目印に残してくれた魚の鱗を頼りに進んでいくと大きな鉄の門のある家の前にたどり着いた。
「ん? こ……これは?」
ロイが道のあちこちに落ちている物に気がついた。
カイトが落ちていたものを手に取るとそれは割れた小瓶や注射器の破片だった。そして周りを見るとぬかるんだ地面に足跡がいくつもあった。鉄の扉には泥の手形が着いていた。その泥の手形は子供のように小さい手形だった。
カイトはその小さい手形を愛おしそうに触ると拳を握りしめて怒りに震えた。
地面にあるいくつもの足跡とこの手形を見るだけで、ここでティアラが何者かに襲われたことが容易に想像できた。
「こ……この手形は?」
「ああ。間違いないティアラのだ!」
「隊長! あそこ!」
鉄の門の上部の格子から中を覗いていたロイが指を指しながら叫んだ。
指している先を見ると門の中の左側の壁に同じ形の手形がはっきりと確認できた。
「ティアラはこの建物の中に連れて行かれたようだな」
「た……隊長……」
「お前たちはここで待機しろ」
「は……はい。わかりました!」
ロイはすぐに返事をして震えながら後退すると、妻のリンの腕を掴んだ。
「え? ちょ……、いくらカイト隊長でも一人で乗り込むのは危険じゃないかしら? 相手は何人いるのかわからないのよ」
リンは不服そうに夫のロイに訴えたが、ロイは震えながら言った。
「隊長がギルティーに入隊したのが15歳の時なんだ」
「え? そんなに若くしてギルティー入隊するのは無理よ」
「そうだ、いくら才能がある人間でも20歳前にギルティーに入隊することは不可能と言われていたが、隊長は最年少記録を5歳も引き下げた。それはあるスキルを開眼したからだとされている」
「あるスキル? カイト隊長は何のスキルを持っているの?」
「この世界の魔法属性最強のスキル雷帝の称号を隊長は持っている」
「ら……雷帝! し……神格スキルってやつ?」
「そうだ、この世界にある4つの神格スキル、勇者・剣聖・聖女・雷帝の雷帝だ」
リンはカイトを見た。目の前にいるカイトは徐々に髪が逆立っていき体から雷のような電撃がいくつも走っいていった。それに呼応するようにだんだんと空が曇っていき、気がつけば空いっぱいに雷雲が広がっていった。
「スキルで天候も変えてしまうの?」
「ああなった隊長には誰も近づけない。近くにいるだけで電撃に当たって危険だ。もう誰にも隊長を止めることはできない」
『ドーーーーーーーーーン!!!!』
眩しい光が走ったと感じた瞬間、数百キロは優に超えていただろう鉄の門は跡形もなく吹き飛んでいた。カイトの周りに稲妻のような電撃が無数に走る。そのままゆっくりとカイトは一人家の中に入って行った。
◇
大きな倉庫のような建物の中に様々なものが所狭しと置かれていた。二メートルもある大きな仏像や様々な武器や防具や民芸品のような置物が置いてあった。エルフの男たちは荷物を運んだり、品物をチェックしているようだった。
大男は私を担いだまま倉庫に入っていった。途中で私に気づいた何人かの男に声を掛けられていた。
「ああ、ガルボさん。ん? そ……その抱えてるのは誰ですか?」
ガルボと言われた大男は何も答えないまま私を抱えながらズカズカと倉庫の中心に私を連れて行くと私を倉庫の床にそっと下ろした。
男たちは作業の手を止めて一斉に私を見た。
「誰ですか? その女の子は?」
「さあな? 知らん、でも外からこの家を覗いていた」
「え? この家を?」
男たちは怪しいものを見るように一斉にこちらを睨んできた。男たちの鋭い目つきに目をそらした。
「お嬢ちゃん、どうしてこの家を見ていたんだ?」
ガルボの質問に答えないで目をそらした。
「もっと顔を見せろ!」
ガルボはいきなりフードを掴むと後ろに引っ張った。
「なに? こ……こいつは……」
私はフードを剥がされ頭が現になった。すぐに現になった耳を手で隠したが、時すでに遅く、私がエルフでないことが、ここにいる全員に分かってしまった。
「なんで? ルーン大国の人間がここに?」
「お前、どうやってここに来た?」
私は観念してすべてを正直に話すことにした。
「私はルーンの国の人じゃないです。手違いでここに居ます」
「ルーンの人間じゃないのか?」
「はい。違います」
「どうやってここに来た?」
「飛行船の中に誤って入ってしまって……」
「ああ。ギルティーの船に乗ってきたのか」
「はい。あ……あの……、私を殺します?」
「は?」
「私のことが憎いんじゃないですか?」
恐る恐る男たちに聞いてみた。するとガルボと呼ばれた男は大声で笑い出した。
「ガハハハ!!。俺たちはルーンの兵士に対しては恨みを抱いているが、人間全員が憎い訳じゃない」
「え? 本当ですか?」
「ああ。俺たちはルーン大国と闇で取引をしているくらいだからな」
「おいバカ! 喋りすぎだ」
喋った男はバツが悪そうに舌を出しておどけた。
「それで、お前はここに何をしに来た?」
「あの……マルクスさんという人を探してるんです。あなた達が誘拐犯だと思って……」
「は? 誘拐犯? マルクス? 何を言ってんだ?」
「ガハハハ!!!」
ガルボは私の言ったことを聞いて再び爆笑した。
「俺達はルーン大国と裏で密輸をしているだけで、誘拐はしていないよ」
「え? その腕のサソリの入れ墨は?」
「ああこれか、これは信仰上のおまじないだよ」
「じ……じゃあ、マルクスさんていう人は?」
「そんな奴は知らないよ」
私は心の底からガッカリした。うつむいて元気を失った私にガルボが声をかけようとした瞬間倉庫の入り口が光った。
『ドーーーーーーン!!!』
轟音と共に倉庫の入り口の扉が吹き飛んだかと思うとものすごい速さで誰かが倉庫に入ってきて私の頭の上まで飛んできた。
「そこまでだーーーー!!!」
頭上から声がしたので見ると金色の髪を逆立てて全身に雷を纏ったカイトが居た。
「え? カイトなの?」
「ティアラ、もう心配するな」
カイトはそう言うとゆっくりと頭上から降りてきて私の前に立った。
「あ……あんた、誰だ?」
「ギルティークラウンだ!」
そう言うとガルボのすぐ脇に電撃が走ったかと思うと、轟音とともにガルボの巨体が二メートルほど吹き飛んだ。雷が落ちた地面は真っ黒く焦げて大穴が空いていた。
「ヒィー! あ……あんた、まさか雷帝かよ!」
雷帝と聞いて男たちは一斉に物陰に隠れた。
「俺を知っているのか?」
「ギルティークラウンの中で一番やばい奴だっていうのは知っているよ」
「知ってるなら話が早い、お前達覚悟しろよ!」
「ちょ……ちょっとまってくれ……、俺達はそのお嬢ちゃんに何もしていないよ」
「何だと? 嘘を付くな!」
カイトは怒りに我を忘れている様子だったので見かねて声を掛けた。
「カイト、本当よ」
私はカイトを止めた。
「なに? 本当か?」
「ええ。まあ無理やりここに連れてこられたのはあるけど、それは私が勝手に家の中を覗いていたからで……」
「無理やり連れ込まれたのか!」
カイトは再びガルボに向き直った。ガルボはカイトに睨まれれてヒィー、と顔を引きつらせた。
「でも、連れてこられただけで危害は加えられていないの信じて……」
「お……お前がそう言うなら……」
カイトは私の言うことを信じて落ち着きを取り戻した。しばらくすると雷が消えて逆だっていた髪の毛も元に戻った。
その様子を見たガルボが恐る恐る私達に話しかけて来た。
「どうして、人間とギルティーが一緒にいるんだ?」
「そ……それは……」
どう説明すれば良いのか悩んでいた。
「何か訳がありそうだな……、どうだ良ければそこのお嬢さんをルーン大国に連れて行ってやるぞ」
「なに? 冗談を言うな」
「冗談?」
「そんなことできるはずないだろ」
ガルボはしばらく悩んだ末カイトに説明を始めた。
「ギルティーの旦那よ、周りをよく見てみろよ」
カイトは倉庫にある品々を見た。確かに倉庫の中にはルーン大国の民芸品や武器や防具が所狭しと置かれていた。
「俺達はルーン大国との間で密輸をしている」
「密輸だと? やっぱり犯罪者じゃないか!」
カイトが身構えるとガルボは狼狽えた。
「ま……待ってくれ。密輸しているおかげでそのお嬢ちゃんを安全にルーン大国に連れて行ってやれるんだぞ」
「そ……それは……」
「お嬢ちゃんもここにいるよりは、ルーン大国に行ったほうが命の危険は無いんじゃないか?」
カイトは何も言わずに黙り込んだ。確かにこのままギルディアに居れば人間のことをよく思っていない者に命を狙われる危険が常に付きまとう、そのために自由に外出もさせてやれない。
(ティアラのことを思えばその方が良いのかもしれない)
カイトがしばらく黙っているとガルボの方から提案してきた。
「別に無理にとは言わないよ、三日後にここから幌馬車が出るからルーン大国に行きたければそれに乗せてやるよ」
「本当に安全なんだろうな!」
「ああ。今まで何百回と取引してるけど、一度も危険な目にあったことは無いよ」
「少し考えさせてくれ」
「ああ良いぜ。3日間あるんだ。じっくり考えればいいよ」
私達はその後ガルボのいる倉庫を後にして家路についた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】異世界リメイク日和〜おじいさん村で第二の人生はじめます〜
天音蝶子(あまねちょうこ)
ファンタジー
壊れた椅子も、傷ついた心も。
手を動かせば、もう一度やり直せる。
——おじいさん村で始まる、“優しさ”を紡ぐ異世界スローライフ。
不器用な鍛冶師と転生ヒロインが、手仕事で未来をリメイクしていく癒しの日々。
今日も風の吹く丘で、桜は“ここで生きていく”。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる