不滅のティアラ 〜狂おしいほど愛された少女の物語〜

白銀一騎

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〜兄弟の絆〜

激闘

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 レンとカイトはアルサンバサラと対峙たいじした。

 カイトはアルサンバサラの隙を見て雷魔法を唱えようとしたした瞬間、レンがアルサンバサラに飛び込んだ。カイトは慌てて魔法の詠唱えいしょうを止めた。レンはそんなことはお構いなしに攻撃を繰り出している、レンの行動が読めない中、少しでも敵と距離が離れた瞬間を見計らってカイトは雷魔法を放ったが、その魔法はレンの顔をかすめた。

(何を考えてやがる、あの野郎!)

 二人は互いにバラバラに攻撃を行い、全く連携れんけいが取れていない。

「危ないだろう! 俺を攻撃する気かバカ!」

「お前が勝手に前に飛び出すからだろう!」

 レンとカイトが言い争いを始めた時、アルサンバサラから伸びた触手がレンに襲いかかろうとしていた、カイトは咄嗟に雷魔法で追撃しようと攻撃したが、レンも気づいて大剣で触手を攻撃しようと振り上げたところに運悪くカイトの雷魔法が大剣に直撃してしまった。レンはその衝撃で吹き飛ばされ、その際に大剣を落としてしまった。アルサンバサラから伸びた触手はカイトの雷魔法を受けて思うように動けないレンに向かって恐ろしいスピードで向かってくる、レンはすぐそこまで迫る触手に死を覚悟した。

「危ない!」

 レンは自分に向かって伸びてくる触手を見ていた。走馬灯そうまとうのように触手が迫ってる姿がスローモーションのようにゆっくりと見える。あと少しで触手が自分の体に触れようとした瞬間、二人の男が自分を庇うように飛び出してくるのがわかった。その男たちはクリスとアルフレッドだった。

 二人は大の字になるとレンに向かって伸びてくる触手を自分の体で防いだ。体に触手が突き刺さるとそこから血しぶきが上がるのを見た。

(や、やめろ! ふたりとも……俺のために……)

 クリスとアルフレッドは体中にアルサンバサラの触手を受けて苦しそうに口から血を吹き出した。

「お、お前のためじゃない。ティアラのためだ、レン。悔しいが……あいつを倒せるのはお前だけだ……」

「ティアラを俺たちで守るんだ、そのためだったらこれぐらいなんてことない。レン……あとは頼んだぞ……」

 それだけを言うと二人はそのまま倒れ込んだ。傷口からおびただしい量の血が吹き出し、あたり一面血の海の中二人はピクリとも動かなくなった。

「うおおおおお~~~~!!! このヤローーーー! 絶対に許さねえ!!」

 レンは激高げっこうした。全身に力が蘇るのを感じた。

「カイト!!!」

 レンは大声を上げるとカイトを見た。

「何だ?」

「あいつの触手を頼む! 俺はあいつの体を攻撃する」

 レンの必死の形相に覚悟を感じ取ったカイトはすぐに答えた。

「ああ、分かった。俺を信じろ」

「頼んだぞ! 絶対にぶっ倒す!」

 レンは叫び声を上げると一気にアルサンバサラの懐に飛び込んだ。大量の触手がレンにめがけて襲ってきたが、レンは触手を避けることなく、そのままアルサンバサラの体めがけて突っ込んだ。カイトはすぐに雷魔法を唱えるとレンに群がってくる触手を一掃した。視界から触手が消えた瞬間、レンは大剣を振り上げて力一杯アルサンバサラの体に振り下ろした。レンの攻撃がアルサンバサラの体に直撃すると、アルサンバサラの右腕を切り落とした。

『ぐぉおお~~~!! き、貴様、よくも私の腕を~~~』

 アルサンバサラは怒り狂って触手をレンに向かって伸ばしたが、カイトの魔法によって再び一掃した。レンはそれを確認すると再度、アルサンバサラの懐に飛び込んで、大剣で脇腹に一撃を加えた。

『ぐおぉおお~~~!! き、貴様~~、この私をーーー!!』

 アルサンバサラは左手で傷口を押さえた。レンは渾身の一撃を与えたが、体が硬くて致命傷になっていない。

(畜生! 奴の体が硬すぎてこの大剣でも致命傷を与えられない!)

 カイトはアルサンバサラから出てくる触手だけを狙って集中的に攻撃を続けていた。レンはカイトを信じて本体だけを狙って攻撃を続けた結果、徐々に二人の攻撃がアルサンバサラに当たるようになったが、決定打を与えるには至っていない。少しの攻撃ではすぐに回復してしまう、気がつくと最初に切り落とした右腕もいつの間にか再生されていた。

『フン! どうした? その程度の攻撃では私を倒すことはできないぞ~!』

 その言葉にカイトは焦った。ロザリアに魔力を回復してもらったとはいえ、この調子でどんどん魔法を放つことはできない。魔力に限りがある以上、消耗戦はこちらが圧倒的に不利だ、それはカイトが一番わかっている。

(こ、このままでは負けてしまう……)

 カイトは最悪の事態が頭を過ぎる。このまま何も出来ない自分を思うと悔しさに涙が溢れてきた。

 ◇

 ルディーは二人の戦いを見てどうにか戦況を改善できないか、自分に何かできることはないか考えていた。ルディーがふと辺りを見回すと、ルーン大国の床弩しょうどが見えた。その床弩は夜叉神将軍やしゃじんしょうぐんの部隊が持ってきた巨大な荷車に二メートルもの巨大な弓矢がセットできる武器でルーン大国の主力武器だった。ルディーは床弩のもとに向かうと壊れていないか確認した。

(こいつはまだ使えるみたいだ、こいつであの魔物を倒せるかもしれない)

 ルディーは床弩を動かすと夜叉神のもとに向かった。

「それは? 床弩か?」

「ああ、これであいつの息の根を止められないか?」

「ふん。それじゃ、とっておきの物があるぞ」

 そう言うと夜叉神は背中の袋から大きな弓矢を取り出した。

「これは?」

「この弓矢はマルクスに刺さっていた矢だ。彼の亡骸なきがらは見つけることができなかったが、彼に刺さっていたこの矢だけは回収することができた」

「なんだと! その矢が……」

 ルディーは弓矢を夜叉神から受け取ると強く握りしめた。最後に川に落ちるときに笑ったマルクスの笑顔を思い出した。矢を握って目を閉じるとマルクスの魔力が弓矢に宿っているような感覚があった。

「こ、これは……」

 夜叉神はルディーの肩に手を置くと悲しそうに言った。

「マルクスは亡くなる寸前まで自分の魔力をこの弓矢に宿したようだ、この弓矢は強力な勇者の魔力が閉じ込められている。こいつを使えばやつを倒すことができるかもしれない」

 ルディーはその言葉を聞くと立ち上がった。

「これでマルクスのかたきを討つ!」

 すぐにルディーは持ってきた床弩に弓矢をセットした。

「まだだ、あいつが攻撃をしたスキに撃とう」

 夜叉神は床弩のトリガーを握るとじっとその時を待った。 
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