私、勇者と魔王の娘です

夢限

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第01章 よくある話

01 生徒会長と私

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 新作です。

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「あなたが、香久山愛莉亜かぐやまえりあさんね」
「はい」

 放課後、帰ろうとしたそのとき、教室に知らない女子生徒がやって来て、「生徒会長が、生徒会室でお待ちです」と告げられた。何だろうと思いながら言ってみると、そこには当然生徒会長が待っており冒頭となる。入学式でも見かけたけれど、こうして近くで見るとあらためて思う。生徒会長は、きりっとした目元に、漆黒の長髪をハーフアップに編み込んでいてすらっとした高身長でスタイルも良い美人、まるで女優かモデルみたい。確か今期の生徒会長はこの学校の理事長の娘さんで家もお金持ちだと聞いている。まさに絵にかいたような令嬢という雰囲気。まさか現実にこんな人がいるんだと、心の底からそう思える人だ。

「ふふっ、ずいぶんとかわいらしい名前よね。もしかしてキラキラネームというものかしら」

 生徒会長に若干見惚れているとよく人に言われることを聞かれた。

「よく言われますけど、違うんです。母が日本人じゃなくて、母の国では……いえ、一族の伝統なんです。女の子の名前の最後に“あ”をつけるっていう」
「へぇ、そうなの。でも、ハーフには見えないわね」
「母の家計は日系なので」

 ちなみにだけど、私の名前の’あ’がとってつけたようになったのにも理由があり、これは最初母がここは日本だから伝統はいいかなと、’あ’を入れるのをやめようとしていたらしい。そこで、父が考えて愛莉としたのだけど、届のギリギリに母がやっぱりつけたいと言い出したことで、この名前となったそうだ。

「そうなのね。まぁいいわ」

 ここで、会長の興味が急に失われたようだった。まあ、最初からそんなに乗り気ってわけでもなさそうだったけど。

「えっと、それでご用件は?」
「ええ、そうね。あなた、この間、私の親友の弟くんが勇気を出して告白したのに断ったそうじゃない? ほかにも、たくさんの男の子たちに告白されてるって聞いたわ」

 なんだか急に雰囲気が変わったと思ったら、そういうことを言い出した。確かに、私は高校に入学してから何人かの男子に告白されている。自分で言うのもなんだけど、見た目はまあまあ可愛いほうらしいし、成績も良くて運動神経も悪くない。どんなスポーツでも、それなりにこなせるタイプだ。そういう“理想的に見える”私に惹かれる人は、案外多い。

 でも実際は、そういう表面だけを見て期待してくる人たちが勝手に幻滅して、勝手に去っていく。中学のときもそうだった。最初は好意を持ってくれていても、時間が経って私の“本当の姿”を知ると、みんなどこかへ行ってしまう。

「えっと、確かに告白はされましたけど……でも、それも一時的なものだと思います。中学のときもそうでしたし」
「そう……中学でも、なのね」

 その瞬間、なぜか会長の周囲にぴりっとした怒気が走った。うん、これはたぶん、人の話をちゃんと聞いてないときの反応。会長の耳にはきっと、「中学でもたくさん告白された」ってところしか届いてないんだと思う。となると、私がこれから何を言っても、たぶん通じない。

 どうしよう。ここで帰ってもいいかな……いや、さすがに今ここで帰ったら、あとでややこしいことになりそう。ほんと、どうしよう。

「入って頂戴」

 どうしようか悩んでいると、会長がふとそんな言葉を告げる。すると、私が入ってきた扉とは別の扉があき、おもむろに2人の男子生徒が入ってきた。1人はなんというか大きな体をした屈強なという言葉が似合いそうな男子。もう1人はなんか見たことがある気がする気弱そうな男子だ。

「へぇ、いい女じゃねぇか、こいつにはもったいないぜ」
「黙りなさい」

 屈強そうな男子が、気味の悪い視線をこちらに向けて何か言いかけた――その瞬間、会長がピシャリと黙らせた。……というか、あんなにガタイがよくて強そうなのに、会長には全然逆らえないんだね。

 まあ、昔父が言ってたけど、「どんなに強い男の人でも、女性には敵わない」んだそうだ。なるほど、今その意味がちょっとだけ分かった気がする。

「へいへい、それで、手筈通りでいいのか?」
「そうしなさい」

 そんな会話がなされたのち、屈強な男子がおもむろに私に近づいてきて背後に回り、突如私を羽交い絞めにしてきたのだった。……ええと、どういうこと?

「さぁ、好きにしていいわよ」

 会長が、気弱そうな男子にきつく言うと、その男子は一瞬たじろいだあと、私と会長を交互に見て、何かを考え込んだ。そして、ふいに右手を私の方へ差し出してきた。

 えっ……ちょっと待って、その手、どこ向かってるの? どう見ても、その先にあるのは――私の胸。

 小学校四年生の頃から少しずつ育ちはじめ、中学に上がる頃にはすでにDカップ。その後も順調(すぎるくらい)に成長して、今やGカップまで到達した、日々ケアを怠らず大切にしている、私の胸である。

 戸惑いながらも、私はすぐに危機を察知した。いや、まずい。あの手が届いたら、絶対にただじゃ済まない。
なんとか逃げようと身を引こうとするが、その動きを封じるように、横から屈強な男子が私の腕を羽交い締めにしてきた。――強い。さすがにこの体格差では、まったく歯が立たない。

「し、仕方ないよね」

 私は小さくそうつぶやくと、さらにもう一言、誰にも聞こえないような音量で呟いた。自分にだけ聞こえる、その言葉を鍵にして――私は、右足を一歩前に出し、すかさず後ろへ振り抜くようにして、屈強な男子の脛――いわゆる“弁慶の泣き所”を正確に蹴り込んだ。

 その瞬間、男が顔をしかめてうめき声を漏らし、腕の力がわずかに弱まる。チャンスだ。私はすかさず彼の両手をつかみ、一気に引きはがす。

「……よしっ、抜けた!」

 羽交い絞めから解放された私は、すぐにしゃがみ込んで体勢を整えると、ためらうことなく右ひじを勢いよく後ろに突き出す。その先にあったのは、屈強な男子の鳩尾。深く沈み込んだ打撃に、彼は一瞬で意識を手放した。
 その様子を確認する間もなく、私は素早く体をひねって、今度はもう一人の――不届きな手を伸ばしてきた男子の背後に回り込む。ためらいなく、その首筋めがけて手刀を叩き込んだ。静かに、確実に、彼の意識は刈り取られた。

「えっ!」

 私が羽交い絞めを解こうと動き出してから、ここまでにかかった時間は1秒にも満たない。そのせいか、会長は何が起きたのか理解できずに、ただ困惑していた。

「先輩?」
「ひあっ!!」

 少しだけ怒気を込めて“先輩”と声をかけると、会長はびくりと肩を震わせ、悲鳴を上げてその場にへたり込んでしまった。私は若干目をそらしながら、それでも淡々と続ける。

「私、できれば平穏な高校生活を送りたいんです。だから今回のことは、お互い“なかったこと”にしませんか? 入学早々、生徒会長と問題を起こすのは避けたいですし、先輩にとっても、これが広まったら困りますよね?」
「……」

 会長は何も言わなかったが、視界の端で小さくうなずいたのが見えた。私はそのままくるりと背を向ける。

「では、失礼します。あっ、そうそう。彼らは――たぶん1時間くらいで目を覚ますと思いますよ」

 そう言い残して、生徒会室を後にした私は、教室に荷物を取りに寄ってから家へと向かった。

 ちなみに、なぜわざわざ男子たちが目を覚ます時間を教えたのかというと――ここだけの話。私が怒気を込めて声を発したとき、会長は驚いて悲鳴を上げ、その場に尻もちをついた。そのとき、制服のスカートがめくれて、下着がばっちり見えてしまったのだ。……いや、見ないように目をそらしたんだけど、ほんの一瞬、目に入ってしまった。そして……その下着には、うっすらとシミができ始めていた。

 だから、“目覚める時間”を教えたのは、その場を片付けるための猶予、というわけ。あられもない姿を誰かに見られたくないだろうし、まあ、いわゆる“武士の情け”ってやつ。


 その後の話をすると――会長は、あれ以来私にはすっかりおとなしくなって、ほとんど関わってくることはなかった。むしろ、学内で私を見かけても、目をそらしてそそくさと逃げていくほど。

 それと、羽交い絞めしてきた“屈強な男子”――柔道部の3年でレギュラーだった先輩は、どうやらその後、突然学校を辞めたらしい。噂では、柔道の腕は確かだったけれど、素行が悪く、部内でも持て余されていたそうだ。クラスの柔道部の子が、ちょっとだけ喜んでいたのは……まあ、仕方ないかもね。

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 更新ですが、最初の5話までは毎日朝7時に更新します。
 次回は7/21です。

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