私、勇者と魔王の娘です

夢限

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第01章 よくある話

10 旅の必需品といざ出発

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 武防具屋で買った装備は、その場で身につけていくことにした。

 解体用ナイフは鞄の中へ、そして予備のナイフは腰ベルトの背中側に装着。戦闘の邪魔にならず、いざというときにすばやく抜ける位置だ。もちろん、慣れるまでは練習が必要だけど――。

 凛は杖を腰に剣のように差し、楓はいったんローブを脱いで胸当てを装着。さらに手甲と脚甲をそれぞれつけていく。ふたりとも、装備がちゃんと馴染んできてる。

「これで……だいぶ揃ったね」
「だね。あとは――雑貨屋さんかな」

 店を後にしながら、次の目的地を確認する。

「あそこにある」
「ほんとだ」
「けっこう近かったね」

 武防具屋のすぐそばに、こぢんまりとした雑貨屋を発見。

「いらっしゃいませ」

 店に入ると、カウンターの内側には20代くらいの青年がいた。

「ここでは何を買うの?」
「野営道具とか、旅に必要な小物かな」

 店内をざっと見回すと、テント、火打石、調理鍋などはあるけれど、寝袋はなさそう。そこで代わりに、小さめの毛布を選んだ。携行性と実用性を考えて、荷物が増えすぎないよう注意する。

 他にも――
- 水筒
- 保存食(乾パン、干し肉、干し果実)
- 裁縫用の布と糸(服の補修用)
- 武器の手入れ用オイルと簡易砥石
- 方位磁石
- 長めのロープ
- 医療セット(消毒薬、包帯、軟膏など)
- リュックと腰ベルト用の小物入れ数点

 一通りそろえて、三人で最終チェック。

「これで大体いいかな」
「うん、いいと思う」
「十分でしょ」

 合計は、銀貨5枚・大銅貨20枚・銅貨2枚。さくっと支払いを済ませて、購入したリュックに荷物を詰めた。

 通学に使っていた学校指定の鞄は、見た目も用途もこの世界には不釣り合い。とはいえ、今はまだ中に大事なお金が入っているのでしばらくは持ち歩く。街を出て人目のない場所に着いたら、例の衣装ケースにしまってしまおうと思っている。

「それじゃぁ、準備も整ったし街を出ようか」
「だねぇ」
「ちょっとのんびりしちゃったけど、思ったよりも平和だったよね」
「そだねぇ」

 私たちは王様の意に反して、近衛騎士たちを肉片に変えたのち賠償金を要求しせしめた。これってどう考えても王様をはじめこの国をコケにしたということ、となると普通ならすでに私たちを殺そうと刺客を差し向けてきたとしてもおかしくない。しかし、ここに来るまでの間一切それがなかったのが不思議だ。

「もしかしたら、王都を出たら来るかもしれない」
「ああ、確かに街中よりも外の方が人知れずって感じだしね」
「うん、警戒が必要」
「だね」

 ということで若干の警戒心を持ちつつ街の門へと向かったのだった。ちなみに、この王都は中央にお城があり、その周りを囲むように貴族街があり、その外側が平民街、そして、東西南北すべてにまっすぐ大通りが通っていてその先に門がある。私たちが向かったのはそのうちの1つで、西へ向かう門となる。ここを選んだ理由は特になく、ただ単に街の西側区画にいたから、近くの門を目指しただけである。

「んっ、街を出るのか?」
「はい」
「そうか、まぁ気をつけてな」

 門のところにいた門番に声をかけられたけれど、特に何かあるわけでもなくそのまま通してくれた。


 王都を出たわけだけど街道はまだ人が多い、といってもいるのはみんな王都へ向かい人たちで、私たちみたいに王都から出る人は少ない。この理由は昨日ボニーが言ってた召喚された勇者を見るためだろう。尤も、その召喚された勇者は私なので見に来たところで見ることはできないんだけどね。

「王様、どうするんだろうね」
「向こうだったら間違いなく責任問題だよね」
「責任取って辞めるとこ」
「王様だからそれはないけどね」
「確かにね」

 勇者がいない状態でどうするのか、まぁそれは私たちの知るところじゃないよね。だって、勝手に召喚して隷属の腕輪なんてものをつけさせて、強制的に言うことを聞かせようとしたのだから、ほんとあの人たち私たちに何をさせようとしていたのか、そこらへんはちょっと気になるかな。

「とにかく、さっさと行こっ」
「だね」
「次の街は、どんなとこだろう」
「うんうん、楽しみ~」


 こうして意気揚々と歩き出した私たちは、王都への人の流れが落ち着いたところでそっと物陰に隠れ、亜空間から衣装ケースを取り出す。それから通学鞄からお金をいくつか取り出し、腰ベルトに着けた小物入れに納めて、残りを鞄とともに衣装ケースへと収めた。

「結構きついね」
「もともと結構詰め込んでたからね」
「制服と教科書も入ってるし」
「そうなんだよねぇ」
「教科書は捨ててもよさそうなんだけどなぁ」
「戻った時に困る」
「そうだろうけどさぁ」

 私と凛はどちらかというと成績はいいほうだし、特に勉強は嫌いというわけではないが、楓はどちらかというと嫌いな方で、成績も悪いわけではないがいいわけでもないから、楓としてはここで教科書を処分してもいいのではないかと思ったみたいだ。まぁ、私も気持ちがわからないわけでもないが、処分するには惜しい気もする。

 それはともかく、これで本格的に旅の準備完了というわけで、再び街道に戻り歩き出すことに。

「ここら辺は王都の近くだけあってか歩きやすいよね」
「うん、石畳になってる」
「といっても結構がたがただけどね」

 石畳に放てはいるけど、ところどころ石が浮いていたりとちょっと荒れている。多くの人が行き来するわけだから、これは当たり前といえば当たり前だよね。日本だってたまに道路などがでこぼこになっていつの間にか補修されていたりするし、たまに気が付いたら新しいアスファルトになっていることもある。でも、こういう世界ではそうしていちいち直したりすることってめったにないだろう、重機がある日本と違いこっちにはないから人で出し、お金だってその分かかるだろうし。

「ここら辺は穀倉地帯になってる」
「だね。畑が一杯」
「これって小麦かな」
「そうじゃない、前に見たことあるからそれに似てるし」
「だね。これ、小麦だよ」

 鑑定スキルで確認したが確かに小麦と出た。といっても何というかちょっと私が知る小麦ともちょっと違う気もする。葉っぱの形とかだけなんだけど、でもスキルで小麦と出た以上は小麦で間違いはないと思う。

「ここら辺の畑って誰が管理してるんだろう」
「さぁ、王都の人が通って来るんじゃない」
「近くに村があるとか?」
「それもあるね」

 ここは王都からそこまで離れていないので、王都から通うことは問題ないと思うけど、畑の向こう側に村があってもおかしくもない。

「ふう、ちょっと疲れたね」
「出発してから大体、30分は歩いたからね」
「普段こんなに歩かないから」
「ステータスでは疲れないはずなんだけど」

 私たちは異世界召喚の影響もありステータスが若干上がっているから、日本にいるときよりもスタミナはあるはずだけど、30分歩いたことで肉体よりも精神が付かれ始めてきた。日本で生活していると30分も歩くなんてそうそうない、もちろん健康のためということでわざわざ歩く人は多くいるとは思うけど、私たちはまだそうしたいとは思わない。

「ねぇ、今思ったんだけどさ」
「なに?」
「異世界もので移動って馬車使わない?」
「あっ!」
「忘れてた」
「全然考えてなかったよね」
「う、うん」

 言われてみて気が付いたけど、確かに王都から次の街へ行くとなると、乗合馬車とか駅馬車とかがあってもおかしくない。でも、そもそも日本には馬車という概念がないから思いもつかなかった。

「ここまで来て戻るのも面倒だし、次の街に行ったら考えようよ」
「そうしよっかぁ」
「だねぇ」

 すでに30分歩いてきたので、ここでまた王都まで戻るのは正直かなりだるい、ここは仕方ないので馬車については次の街までお預けとなった。

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 次回更新は11/10予定です

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