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第04章 奴隷狩り
10 料理大会本戦
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料理大会予選が終わり、本戦出場者が出そろった。
その中には俺たちが推しているオクトがいる。
まぁ、俺たちの主観ではこの街で一番料理が上手いのはオクトだ。
もちろん中には匹敵する奴もいることはいるが、俺たちにとってはオクトのほうが上だった。
はてさて、審査員たちは誰を選ぶのか。それはそれで楽しみだ。
「さぁ、いよいよ第1回戦第1試合は、シムルさんとゴーラさんです!」
第1試合の出場者が呼ばれ、広場中央に設置されている調理場の前に出てきた。
「あの2人、どっちが勝つと思う」
「そうだな。確かシムルってやつがシムルズ亭で、ゴーラがオークの森亭だったよな」
「そうそう」
「はい、そうです。どっちもおいしいですよね」
「だな」
バネッサが言ったように、双方ともにうまい飯をだす店だった。
シムルズ亭は確か、ローストチキンを出しており結構うまかった記憶がある。
一方、オークの森亭は店名の通りオーク専門店で俺たちが食ったのは、一番人気だというステーキだった。
まぁ、俺にとってオークは因縁がある、なにせ両親の仇だしな。それでも、味に関してはオーク肉ってうまいんだよな。んで、ゴーラの店で食ったオークのステーキはかなりうまかったから俺でも覚えている。
そんな2人が戦うわけだが、さてどんな料理が飛び出すか。
さてここで大会のルールを説明しておこう。
調理道具や調味料の持ち込みは可としている。
これは、秘伝のたれなどを使っている店などに対する配慮となっている。
秘伝というわけだから、まさか衆人観衆の目の前でそれを作れとは言えないしな。それに例えばだが、日本の老舗鰻屋相手に、その場で新しい調味料から店で使っているようなたれを作れと言われて、果たしてできるかと言われたら無理だろう。
そりゃぁ、たれ自体はできるだろうが幾度となくウナギが通り、幾度となく継ぎ足されたたれを再現するのは不可能というものだ。
また、道具にしたって自身が使い慣れたものがいいに決まっている。
弘法筆を選ばず、なんて言葉があるが実は弘法大師こそ筆を念入りに選んでいたというからな。
どんな道具でも完璧に扱える人間なんていないというわけだ。
また、調理は1人で行うこととあるわけだが、これは料理人の腕を競う大会であって、人の使い方を見る大会ではないということ。例えば、料理人の中には助手や弟子たちにある程度の調理をさせて、最後のほうだけを作りこれは自分が作りましたという顔をして出す、そんな奴がいるかもしれない。
ていうかそれはそいつの料理じゃなくて、その助手たちの料理? いや、でも一応最後は料理人だし、どっちだよってなるからな。
もちろんそんな料理人がいるかはわからないが、それの対策だな。
最後が材料について、これは以前にも説明した通りギルドが用意した食材のみを使うこととある。
そのために事前にどういった食材を使うのかをリストとして提出させている。
尤も、ギルドが用意している食材はマリーモ(じゃがいも)1つとってもかなりの数が用意されており、その中から己の目で見極めなければならない。
また、ぱっと見では違いが判らないようなダミー食材も用意されているという。
これは、料理人たるもの食材の見極めができなければならないという、ギルドからのメッセージだ。
そう言えば、前世のころ見たテレビで、食材の仕入れ専門の業者があったんだよな。
その業者が仕入れたものを料理屋に卸すってわけだが、俺はそれを見てなんか違うそんな風な感想を覚えた記憶がある。確かに料理人がわざわざ市場に行くより、業者に頼んだほうがほかに集中できるし何よりあの大量にある店の料理人が一斉に市場に押しかけても邪魔でしかないし、業者との信頼関係ができていれば自分が欲しい食材を仕入れてくれるかもしれない。でも、そうすると料理人は食材を見る目が失われるんじゃないか、そんな危惧したことを思い出したよ。まぁ、杞憂だと思うけど……。
さて、そんなどうでもいいことはおいておいて、問題の大会ルールに戻るが、調理時間は1時間となっている。
その間に一品を審査員の数用意することとある。
以上が大会ルールとなっている。
「それでは、始めてください!」
司会の合図とともに始まった料理対決である。
両者同時に食材が置かれている場所に走っていった。
どうやら、2人とも作り慣れたものを作るようで、シムルはダチョウみたいな大きさの鳥を担ぎ上げて、ゴーラもオーク肉を手に取った。
それを調理場に運ぶと今度はそれぞれ調理に使うのか、野菜などこまごました食材を手に再び調理場へと戻っていった。
「2人ともすごいです。あんな一瞬でいい食材を選んでます」
バネッサがそう言った。バネッサもオクトの娘として食材を見る目を持っており、この距離からもそれが分かるらしい。俺たちにはさっぱりだけどな。
「へぇ、そうなのか」
「はい、といっても私もまだ修行中ですので、そこまで多くの食材は分からないですけど」
バネッサも善し悪しが分かるのは一部の食材だけだそうだが、それでもすごいと思うんだけどな。
「それでも、すごいわよ」
シュンナもバネッサを称賛した。
「あ、ありがとうございます」
俺たちの称賛を受けてバネッサはすっかり照れて真っ赤になってしまった。
「2人ともに調理に入ります!」
どうやら調理が始まったらしい。
まずはシムルのほうだが、こっちは先ほどの巨大な鳥を素早くさばいていき、あっという間に1人前にしてしまった。
そのあと、肉の下ごしらえを始めたのだった。
見ていて、その手際の良さからさすがはプロだと思ったものだ。
一方でゴーラもさっそくオーク肉をさばき始め、ブロックとなった肉をどんな包丁を使っているのかと思うほどに綺麗にまっすぐ切っていく。
「さすがに、2人とも慣れた作業だけあってよどみがないな」
「ええ、特にお肉を切るときなんてさすがよね。あたしじゃああはいかないのよね」
俺たちも時には料理をするが、その際肉を切るとどうしてもガタガタになってしまう。
これは包丁がどうというより、完全な技術によるものだろう。
前世で見たテレビでも、料理人が肉などを薄く切る技術を見た時、すごいと思ったものだ。
「それは私も思います。私も頑張っているんですけど、どうしてもガタガタになってしまって、よくお父さんに怒られてます」
「そうなんだな。でも、それでも俺たちよりはずいぶんとましなんだろうな」
「そうだろうな」
「剣だったら、問題ないんだけどね」
シュンナがそう言ったことで若干バネッサが引いたが、確かに俺たちはこれまで魔物や動物など剣で幾度となく斬ってきた。
その際の切り口は見事といわんばかりのものとなっている。
「さすがに食材を剣で斬るわけにはいかないだろ」
「確かにな」
剣と包丁、同じ刃物ではあるがなんとなく剣で斬ったものを食いたいとは思えない。
とまぁ、そんな馬鹿らしい会話をしつつ、両者の調理を見ていると、いつの間にか調理も終盤に差し掛かっていた。
「そろそろお時間です……終了です。両者とも調理を止めてください」
司会の受付が終了の合図をした。
1時間ぴったりで調理は終了となり、たとえ途中でもそれを審査員に出さなければならない。
しかし、さすがはプロの料理人だけあって、しっかり時間内に料理が完成していた。
「では、試食をしていただきます」
ということでまずはシムルのほうからの試食が始まった。
さて、どちらが勝つのか……
「結果発表です」
審査の方法は無記名による投票となっている。それぞれ紙にどちらが良かったのかを選択して投票箱に入れていくという方法だ。
その結果である。
「シムルさんの勝利です!」
第1試合勝者はローストチキンを作ったシムルズ亭店主シムルであった。
「シムルか、俺としてはオークのほうが気になったけどな」
「そうかな、あたしはチキンのほうが好きだけど」
「俺もチキンだな」
「私は、どっちも食べたいです」
俺たちの中でもシルムの勝利だった。
まぁ、これは好みの問題だな、なにせ両方ともにうまいからな。
こうして始まった料理大会本戦第1回戦、白熱した戦いが繰り広げられていた。
そして、ついに第5試合となった。
「いよいよね」
「はい、緊張してきました」
第1回戦第5試合はいよいよオクトの出番となる。
そんなオクトの相手はセプテルというおっさんだった。
このセプテルはセイラークというここエイルードでもそれなりに大きな食堂の料理人だそうだ。
尤も、このセイラークという店の記憶はあまりないから、うまいのかどうかはわからない。
まぁ、本戦に出てくるぐらいだからきっとうまいんだろうけどね。
「オクトは何を作るんだ」
「今日は、チキンスープを出すって言ってました」
「ああ、あれかあれはうまかったからな」
「確かルールで出汁は持ち込み可能だよね」
「はい、ですので昨日作ってました」
ということで始まった第5試合である。
始まると同時、両者ともに食材置き場へ向かいそれぞれが使う食材を取っていくわけだが、見たところ同じ食材を取っているように見えた。
「向こうも同じものを取ってるわね」
「はい、おそらく向こうもチキンスープみたいです」
「同じ料理か」
バネッサが言うには向こうも同じ料理を作ろうとしているようだ。
そうして始まった調理、両者ともに同じ料理だけあって手順は同じ、もちろん全く同じというわけではなく両者ともに微妙に違うことを行っている。
この違いが味の結果につながるんだろう。
それから、しばらく両者の調理を見ているとその調理もいよいよ終盤に差し掛かってきた。
「そろそろお時間です」
司会の言葉を受けて両者ともに盛り付けに入っていく。
そうして、出来た料理である。
「お時間です。作業を止めてください」
調理時間が終了しそれぞれの料理が審査員の元へと運ばれていった。
それから審査員の試食が始まった訳だが、その結果は歴然なものとなった。
「勝者はオクトさんです」
「やったー!」
オクトの勝利である。それを聞いたバネッサは喜びのあまり隣にいたシュンナに抱き着いた。
一方で俺たち3人としては、こうなることは読んでいたこともあり、特に驚くといったことはなかった。
なにせ、相手の店の記憶があまりないほどということはそれほど特筆するべきではなかったこと、また、何よりあいつ、最初オクトと対峙した時まるで嘲笑するような態度をとっていた。
つまり、あのセプテルという奴は明らかにオクトをなめていた。
多分、オクトの店の噂である安くてまずいという言葉を信じているんだろう、普通なら本戦に勝ち上がってきた時点で間違いに気が付きそうなものなんだけど。
まぁ、予選の後も噂として、あの地区の店は大した店がないのではないかといわれていたからな。
それを鵜呑みにして、油断して敗北、なんともダサい負け方だったな。
その後、残りの2戦も終え、本戦初日は終了したのだった。
ここでちょっとした余談だが、第1回戦全部で7戦行ったわけだがその審査員は同じ、そう考えると彼らの腹具合が心配になってくるだろう。
一日に14食も食べるなんて、どこの大食い〇イーンだよと思わず突っ込みたくなる。
別に彼らは、いくら食べても腹いっぱいにならないわけではなく普通の人間だ。
そのため、当然ながらそんなに食ったら審査どころじゃない。
ではどうしたかというと、単純にすべての料理を1口2口しか食べていないからだ。
味の審査なんてそれだけあれば十分だろ。
では、その残りはどうしたんだと、新たな疑問が浮かぶだろうが、これもまた誰かがおいしくいただいたわけでもなく、ゴミ箱へポイっとなった。
この世界にはまだフードロスがどうの、もったいないとかそういう概念がないからな。
まぁでも、俺の考えとしてはごみに捨てることがもったいない、という考えはまさに人間本位の考えではないかと思う、ゴミに捨てるということは人間はそれを消費することができないからだ。
でも、捨てられた食べ物はそのうちに腐って朽ちていく訳だが、それっていうなれば腐らせるための菌や虫などが発生するわけで、その虫たちにとっては『よっしゃぁ飯だー』となるわけだろ。つまり、無駄ではないということだ。”一寸の虫にも五分の魂”たとえ小さな虫だろうと、命の重さは同じであるということ、捨てるという行為は悪ではなく、小さきものの命をつなぐ行為であるとも取れるわけだ。まぁ、曲論だけどね。
とにかくこうして第1回戦が終了した翌日、第2回戦が行われたわけだが、オクトは無事に勝ち進み、その翌日に行われた準決勝においても勝利を収めたのであった。
つまり、街の住人にとってのダークホースであるオクトが決勝進出である。
この時のバネッサの喜びようは、言い表しようがないほどであった。
そしてその翌日、ついに決勝であるが、果たしてその結果はいかに……
その中には俺たちが推しているオクトがいる。
まぁ、俺たちの主観ではこの街で一番料理が上手いのはオクトだ。
もちろん中には匹敵する奴もいることはいるが、俺たちにとってはオクトのほうが上だった。
はてさて、審査員たちは誰を選ぶのか。それはそれで楽しみだ。
「さぁ、いよいよ第1回戦第1試合は、シムルさんとゴーラさんです!」
第1試合の出場者が呼ばれ、広場中央に設置されている調理場の前に出てきた。
「あの2人、どっちが勝つと思う」
「そうだな。確かシムルってやつがシムルズ亭で、ゴーラがオークの森亭だったよな」
「そうそう」
「はい、そうです。どっちもおいしいですよね」
「だな」
バネッサが言ったように、双方ともにうまい飯をだす店だった。
シムルズ亭は確か、ローストチキンを出しており結構うまかった記憶がある。
一方、オークの森亭は店名の通りオーク専門店で俺たちが食ったのは、一番人気だというステーキだった。
まぁ、俺にとってオークは因縁がある、なにせ両親の仇だしな。それでも、味に関してはオーク肉ってうまいんだよな。んで、ゴーラの店で食ったオークのステーキはかなりうまかったから俺でも覚えている。
そんな2人が戦うわけだが、さてどんな料理が飛び出すか。
さてここで大会のルールを説明しておこう。
調理道具や調味料の持ち込みは可としている。
これは、秘伝のたれなどを使っている店などに対する配慮となっている。
秘伝というわけだから、まさか衆人観衆の目の前でそれを作れとは言えないしな。それに例えばだが、日本の老舗鰻屋相手に、その場で新しい調味料から店で使っているようなたれを作れと言われて、果たしてできるかと言われたら無理だろう。
そりゃぁ、たれ自体はできるだろうが幾度となくウナギが通り、幾度となく継ぎ足されたたれを再現するのは不可能というものだ。
また、道具にしたって自身が使い慣れたものがいいに決まっている。
弘法筆を選ばず、なんて言葉があるが実は弘法大師こそ筆を念入りに選んでいたというからな。
どんな道具でも完璧に扱える人間なんていないというわけだ。
また、調理は1人で行うこととあるわけだが、これは料理人の腕を競う大会であって、人の使い方を見る大会ではないということ。例えば、料理人の中には助手や弟子たちにある程度の調理をさせて、最後のほうだけを作りこれは自分が作りましたという顔をして出す、そんな奴がいるかもしれない。
ていうかそれはそいつの料理じゃなくて、その助手たちの料理? いや、でも一応最後は料理人だし、どっちだよってなるからな。
もちろんそんな料理人がいるかはわからないが、それの対策だな。
最後が材料について、これは以前にも説明した通りギルドが用意した食材のみを使うこととある。
そのために事前にどういった食材を使うのかをリストとして提出させている。
尤も、ギルドが用意している食材はマリーモ(じゃがいも)1つとってもかなりの数が用意されており、その中から己の目で見極めなければならない。
また、ぱっと見では違いが判らないようなダミー食材も用意されているという。
これは、料理人たるもの食材の見極めができなければならないという、ギルドからのメッセージだ。
そう言えば、前世のころ見たテレビで、食材の仕入れ専門の業者があったんだよな。
その業者が仕入れたものを料理屋に卸すってわけだが、俺はそれを見てなんか違うそんな風な感想を覚えた記憶がある。確かに料理人がわざわざ市場に行くより、業者に頼んだほうがほかに集中できるし何よりあの大量にある店の料理人が一斉に市場に押しかけても邪魔でしかないし、業者との信頼関係ができていれば自分が欲しい食材を仕入れてくれるかもしれない。でも、そうすると料理人は食材を見る目が失われるんじゃないか、そんな危惧したことを思い出したよ。まぁ、杞憂だと思うけど……。
さて、そんなどうでもいいことはおいておいて、問題の大会ルールに戻るが、調理時間は1時間となっている。
その間に一品を審査員の数用意することとある。
以上が大会ルールとなっている。
「それでは、始めてください!」
司会の合図とともに始まった料理対決である。
両者同時に食材が置かれている場所に走っていった。
どうやら、2人とも作り慣れたものを作るようで、シムルはダチョウみたいな大きさの鳥を担ぎ上げて、ゴーラもオーク肉を手に取った。
それを調理場に運ぶと今度はそれぞれ調理に使うのか、野菜などこまごました食材を手に再び調理場へと戻っていった。
「2人ともすごいです。あんな一瞬でいい食材を選んでます」
バネッサがそう言った。バネッサもオクトの娘として食材を見る目を持っており、この距離からもそれが分かるらしい。俺たちにはさっぱりだけどな。
「へぇ、そうなのか」
「はい、といっても私もまだ修行中ですので、そこまで多くの食材は分からないですけど」
バネッサも善し悪しが分かるのは一部の食材だけだそうだが、それでもすごいと思うんだけどな。
「それでも、すごいわよ」
シュンナもバネッサを称賛した。
「あ、ありがとうございます」
俺たちの称賛を受けてバネッサはすっかり照れて真っ赤になってしまった。
「2人ともに調理に入ります!」
どうやら調理が始まったらしい。
まずはシムルのほうだが、こっちは先ほどの巨大な鳥を素早くさばいていき、あっという間に1人前にしてしまった。
そのあと、肉の下ごしらえを始めたのだった。
見ていて、その手際の良さからさすがはプロだと思ったものだ。
一方でゴーラもさっそくオーク肉をさばき始め、ブロックとなった肉をどんな包丁を使っているのかと思うほどに綺麗にまっすぐ切っていく。
「さすがに、2人とも慣れた作業だけあってよどみがないな」
「ええ、特にお肉を切るときなんてさすがよね。あたしじゃああはいかないのよね」
俺たちも時には料理をするが、その際肉を切るとどうしてもガタガタになってしまう。
これは包丁がどうというより、完全な技術によるものだろう。
前世で見たテレビでも、料理人が肉などを薄く切る技術を見た時、すごいと思ったものだ。
「それは私も思います。私も頑張っているんですけど、どうしてもガタガタになってしまって、よくお父さんに怒られてます」
「そうなんだな。でも、それでも俺たちよりはずいぶんとましなんだろうな」
「そうだろうな」
「剣だったら、問題ないんだけどね」
シュンナがそう言ったことで若干バネッサが引いたが、確かに俺たちはこれまで魔物や動物など剣で幾度となく斬ってきた。
その際の切り口は見事といわんばかりのものとなっている。
「さすがに食材を剣で斬るわけにはいかないだろ」
「確かにな」
剣と包丁、同じ刃物ではあるがなんとなく剣で斬ったものを食いたいとは思えない。
とまぁ、そんな馬鹿らしい会話をしつつ、両者の調理を見ていると、いつの間にか調理も終盤に差し掛かっていた。
「そろそろお時間です……終了です。両者とも調理を止めてください」
司会の受付が終了の合図をした。
1時間ぴったりで調理は終了となり、たとえ途中でもそれを審査員に出さなければならない。
しかし、さすがはプロの料理人だけあって、しっかり時間内に料理が完成していた。
「では、試食をしていただきます」
ということでまずはシムルのほうからの試食が始まった。
さて、どちらが勝つのか……
「結果発表です」
審査の方法は無記名による投票となっている。それぞれ紙にどちらが良かったのかを選択して投票箱に入れていくという方法だ。
その結果である。
「シムルさんの勝利です!」
第1試合勝者はローストチキンを作ったシムルズ亭店主シムルであった。
「シムルか、俺としてはオークのほうが気になったけどな」
「そうかな、あたしはチキンのほうが好きだけど」
「俺もチキンだな」
「私は、どっちも食べたいです」
俺たちの中でもシルムの勝利だった。
まぁ、これは好みの問題だな、なにせ両方ともにうまいからな。
こうして始まった料理大会本戦第1回戦、白熱した戦いが繰り広げられていた。
そして、ついに第5試合となった。
「いよいよね」
「はい、緊張してきました」
第1回戦第5試合はいよいよオクトの出番となる。
そんなオクトの相手はセプテルというおっさんだった。
このセプテルはセイラークというここエイルードでもそれなりに大きな食堂の料理人だそうだ。
尤も、このセイラークという店の記憶はあまりないから、うまいのかどうかはわからない。
まぁ、本戦に出てくるぐらいだからきっとうまいんだろうけどね。
「オクトは何を作るんだ」
「今日は、チキンスープを出すって言ってました」
「ああ、あれかあれはうまかったからな」
「確かルールで出汁は持ち込み可能だよね」
「はい、ですので昨日作ってました」
ということで始まった第5試合である。
始まると同時、両者ともに食材置き場へ向かいそれぞれが使う食材を取っていくわけだが、見たところ同じ食材を取っているように見えた。
「向こうも同じものを取ってるわね」
「はい、おそらく向こうもチキンスープみたいです」
「同じ料理か」
バネッサが言うには向こうも同じ料理を作ろうとしているようだ。
そうして始まった調理、両者ともに同じ料理だけあって手順は同じ、もちろん全く同じというわけではなく両者ともに微妙に違うことを行っている。
この違いが味の結果につながるんだろう。
それから、しばらく両者の調理を見ているとその調理もいよいよ終盤に差し掛かってきた。
「そろそろお時間です」
司会の言葉を受けて両者ともに盛り付けに入っていく。
そうして、出来た料理である。
「お時間です。作業を止めてください」
調理時間が終了しそれぞれの料理が審査員の元へと運ばれていった。
それから審査員の試食が始まった訳だが、その結果は歴然なものとなった。
「勝者はオクトさんです」
「やったー!」
オクトの勝利である。それを聞いたバネッサは喜びのあまり隣にいたシュンナに抱き着いた。
一方で俺たち3人としては、こうなることは読んでいたこともあり、特に驚くといったことはなかった。
なにせ、相手の店の記憶があまりないほどということはそれほど特筆するべきではなかったこと、また、何よりあいつ、最初オクトと対峙した時まるで嘲笑するような態度をとっていた。
つまり、あのセプテルという奴は明らかにオクトをなめていた。
多分、オクトの店の噂である安くてまずいという言葉を信じているんだろう、普通なら本戦に勝ち上がってきた時点で間違いに気が付きそうなものなんだけど。
まぁ、予選の後も噂として、あの地区の店は大した店がないのではないかといわれていたからな。
それを鵜呑みにして、油断して敗北、なんともダサい負け方だったな。
その後、残りの2戦も終え、本戦初日は終了したのだった。
ここでちょっとした余談だが、第1回戦全部で7戦行ったわけだがその審査員は同じ、そう考えると彼らの腹具合が心配になってくるだろう。
一日に14食も食べるなんて、どこの大食い〇イーンだよと思わず突っ込みたくなる。
別に彼らは、いくら食べても腹いっぱいにならないわけではなく普通の人間だ。
そのため、当然ながらそんなに食ったら審査どころじゃない。
ではどうしたかというと、単純にすべての料理を1口2口しか食べていないからだ。
味の審査なんてそれだけあれば十分だろ。
では、その残りはどうしたんだと、新たな疑問が浮かぶだろうが、これもまた誰かがおいしくいただいたわけでもなく、ゴミ箱へポイっとなった。
この世界にはまだフードロスがどうの、もったいないとかそういう概念がないからな。
まぁでも、俺の考えとしてはごみに捨てることがもったいない、という考えはまさに人間本位の考えではないかと思う、ゴミに捨てるということは人間はそれを消費することができないからだ。
でも、捨てられた食べ物はそのうちに腐って朽ちていく訳だが、それっていうなれば腐らせるための菌や虫などが発生するわけで、その虫たちにとっては『よっしゃぁ飯だー』となるわけだろ。つまり、無駄ではないということだ。”一寸の虫にも五分の魂”たとえ小さな虫だろうと、命の重さは同じであるということ、捨てるという行為は悪ではなく、小さきものの命をつなぐ行為であるとも取れるわけだ。まぁ、曲論だけどね。
とにかくこうして第1回戦が終了した翌日、第2回戦が行われたわけだが、オクトは無事に勝ち進み、その翌日に行われた準決勝においても勝利を収めたのであった。
つまり、街の住人にとってのダークホースであるオクトが決勝進出である。
この時のバネッサの喜びようは、言い表しようがないほどであった。
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