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第04章 奴隷狩り

09 第01回料理大会開催

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 俺たちがこの街に滞在してさらに1週間が過ぎたわけだが、俺たちはまだエイルードに滞在していた。
 当初の予定では、レイグラット亭でシチューを受け取ったらその足で街を出るつもりだった。
 しかし、ゴッドファーザーの部下のやらかしで、シチューがダメとなり1日滞在が伸びた。
 ふざけんなと、ゴッドファーザーに文句をつけに言ったら、とんでもない話を聞いてしまった。
 それは、ゴッドファーザーがレイグラット亭をつぶそうとしているとものだった。
 そうなると、今後二度とあの絶品料理を味わえなくなるということになり、それは俺たちにとっては何が何でも回避したいことであった。
 そこで、料理人ギルドへ赴き料理人を集めた料理バトル的なイベントをやったらどうかと提案した。
 んで、その提案がちゃんとした形になるかとか、それで本当にレイグラット亭が何とかなるのか、それを見届けてから街を出るかという話となったことで、まだ滞在しているってわけだ。

 そうして、滞在している間レイグラット亭へ入り浸り、うまい飯を堪能しつつ情報を集めていた。
 その結果として、今日から第01回料理大会が開催される運びとなった。

 普通に考えて構想からわずか1週間で開催までこぎつけるなんてことはいくら何でも早すぎると思う。
 いやまぁ、普通の速度は知らないけどそれでも早いだろう。
 ここで疑問なぜこんなにもハイスピードでことがなせたのか?

 その答えは料理人ギルドのギルマスとここの領主にあった。
 まず、料理人ギルドだが、実はこれができたのはまだ12年前、つまり組織としてはまだ腐敗が起きていないということ、そしてこのギルマスと領主が幼友達であったことだろう。
 どうして、貴族である領主と平民であるギルマスが幼友達なのかについては知らない。
 しかしそのおかげもあって、ギルマスが考えたことがまさに一瞬にして領主の耳に入った。
 そして、何よりこの領主もあのギルマスと同様面白いことが好きらしく、この話に飛びついたそうだ。

 俺にとって領主というのはやはりカリブリンの領主を思い出すし、何よりコルマベイントの王のことを思い出すとあまりいいイメージがなかった。
 しかし、こういう領主もいるんだなぁと、しみじみ思ったものだ。

 さて、そんなことはどうでもいいとして本題である料理大会についてだが、これはまず料理人ギルドに属ている料理人は強制参加(店に料理人が複数いる場合は代表者)となった。
 その理由こそ俺たちの苦情の答えで、すべての料理人が参加することで当然料理人たちの順位が出る。
 それをもとに行く店の指針にしてほしいということだ。
 また、料理人ギルドとしても、いい加減この多すぎる料理人をどうにかしたいと考えていたそうで、この順位をもとにランクをつけることにしたらしい。
 つまり、上位となったものたちをAランクとして、B、C、Dとランクをつけていく、そしてそれを店先で示すようになれば、一発でその店の料理がうまいということが分かる。
 だが、ここで1つ問題がある。というの、街の店を全部回った俺たちからしたら、大体どの店もうまかったという点だろう。
 つまり、この大会で最下位となった料理人の料理も普通の街であったら上位、もしくは中間ぐらいの腕というわけだが、最下位は最下位というわけでそんな店に誰が行きたいかということになるんだよな。
 これは困った問題だ。

「そうなったら、ちょっとかわいそうな気がするわね」

 話し合っているとシュンナがそんなことを言い出した。

「そういえば、スニルの前世の世界でもこういうのってあるんだろ」
「ああ、あるないろいろ」

 ミ〇〇ンや食〇〇グなどだろうか、あの頃の俺はそういうことに全く興味がなかったが、同時にこうも思っていた。
 そこで星を取ったり、上位を取った店はいいが、それ以外調査員が来たのに星がもらえなかった店や酷評を受けてしまった店、そういった店はもはやつぶれるしかない。
 確かに多すぎた店を減らすという目的なら問題ないが、店を出すのは個人の自由だろうそれを勝手に評価されて、貶められてつぶされる。当人からしたら余計なお世話だろうな。
 あと、中には静かに店をやりたいってやつだっている。
 でも、そんな店がガイドブックに載ってしまったり上位に入ってしまった日には、せっかくの静けさがなくなる。
 これもまた余計なお世話だろうな。
 実はオクトもどちらかというと静かに料理をじっくりと作っていたいというタイプで、この料理大会の結果次第では、その静かさがなくなってしまうと懸念される。
 いや、俺たちの見込みでは間違いなく優勝すると考えている。

「オクトには少し悪い気がするが、これを乗り越えれば借金も返せるからな」
「だな」
「ある程度時間がたてば落ち着いてくると思うけどね」
「そうだな。一応予定では来月には2回目の料理大会を開くらしいし、その際上位にはいいた奴は参加しなくてもいいらしいからな」

 上位の奴が次まで参加すると、またそいつが上位となり結局その店に客が集まってしまう。
 もちろん、参加も可能で客をもっと呼びたいという奴であれば参加すればいいだろう。
 しかし、もうこれ以上はというオクトタイプの料理人は参加しなければいいというわけだ。
 人間というものは新しいものが好きだからな、たとえ第01回の優勝者がオクトでも、次の優勝者が決まればそこに集まるようになる。
 でも、オクトの料理がまずくなるわけじゃないので、ある程度は客がレイグラット亭に残るというわけだ。

「あっ、みなさんここにいたんですね」

 俺たちが話しているとそこにやってきたのは、レイグラット亭オクトの娘であるバネッサであった。

「おう、そっちはもういいのか」
「はい、でも驚きました。こんな大会が開かれるって聞いたの2日前ですよ。もう、慌てましたよ」
「はははっ、そうだろうな」

 バネッサの言う通り、料理人たちに本日の大会の話が入ったのは2日前、いきなり言われて料理人たちもさぞ慌てたことだろう。
 なぜ、こんな急なのかというとこれはやはり単に、俺たちの提案を聞いたギルマスと領主が乗りに乗って開催を速めたのが原因だろう。
 そのおかげで、ギルドの職員たちは大慌てで準備やルールの設定、時に提案者の俺たちへのアドバイスを聞きに来たりとかなり大変な目にあっていた。
 なかにはなんでこんな提案をしたんだって、文句を言いに来た奴だっていたぐらいだ。

「でも、材料とかはギルドが用意するってことでそこは大丈夫なんですけど」

 これは俺がアドバイスした結果だ、個人で材料を集めさせると下手をするとどこかの店がライバル店を落とすために必要もないのに買い占めるということをやりかねない。
 例えばゴッドファーザーとかやりそうだ。
 たとえそれが2日前でもやる奴はやるだろうから、なら材料はあらかじめギルドが用意しておけば公平だろうということ、また、会場で材料を並べて置き、そこから最良の材料を選び出す目も料理人には必要な能力だろう。

「予選が始まるみたいだな」
「そうみたいね」

 何度も言っているようにエイルードには料理人が多すぎるというのに、料理人全員が強制参加となっている。
 そんな数を一か所でバトルさせるわけにはいかないというわけで予選という形を取り、まず地区を小さくわけて行われることとなった。
 んで、俺たちが見ているのはレイグラット亭がある西地区エンドラという場所だ。
 ここには8軒の料理屋がありトーナメント方式で争われることになる。

「レイグラット亭は何試合目だ」

 ダンクスがバネッサに尋ねた。

「第3試合です。お父さん大丈夫かな」

 バネッサは心配そうにしているが、俺たちはむしろこの地区のオクト以外の奴らが心配になる。
 なにせ、どう考えてもオクトがこの地区優勝だからな。
 ちなみに、ゴッドファーザーの店は隣の地区となるためにこの予選でぶつかることはない。
 ていうか、奴の店のレベルでは多分本大会に出場もできないだろう思う。

 そんなわけで、俺たちはのんびりと予選大会を眺めていた。

 そうして、第3試合ついにオクトの出番である。

「まったく、緊張してないな」
「そうみたいね」
「ほんとです。なんだか私だけ緊張してバカみたい」
「あはははっ」

 会場に出てきたオクトは俺たちが見る限り全く緊張した様子はなく、まさにいつも通りだった。
 そして、その材料の見極めも、料理もすべていつも通り、これはバネッサの言葉なので間違いない。
 そうしてできた料理を食べた審査員。
 ああそうそう、この審査員はギルド職員と冒険者、あとは別の地区の住人となっている。
 別の地区の住人という意味は、この地区内や近所の地区で選ぶとどうしてもひいきの店がある可能性があるからだ。
 そうなると公平性に欠けてしまうからだ。

 こうして、厳選に行われた結果、俺たちの思惑通り、オクトはトーナメントを勝ち進めての優勝、本大会出場を勝ち取ったのだった。



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 料理大会予選開始から3日が経った。

 この3日間はというと、ずっと予選を行っていた。
 オクトが出た西地区エンドラは料理店が8軒と比較的少なかったこともあり1日で予選会が終わったが、ほかはそうはいかない、特に中央通りに面した地区においてはひしめき合った屋台も参加者となるために出場者が多い。そのために3日を要したのであった。

「やっと、本戦だな」
「どんな料理が出るのか楽しみだよね」
「確かにな。といっても、俺たちは食えないわけだが」
「そうなんだよね。審査員断らなければよかったかな」
「ちげぇねぇ。ははははっ」

 実は俺たち3人はこの大会の発案者ということで審査員として呼ばれていた。
 しかし、俺たちはこの1週間はほとんどオクトの店に入り浸っていた。
 つまり、審査をするとどうしてもオクトに有利な審査をしてしまうという不公平性が出てしまう。
 もちろん俺たちだって審査するときはちゃんと厳選に行うが、俺たちが入り浸っていた事実を知っている者からしたらそう見えてしまう。
 また、俺を筆頭に基本目立つことが大嫌いな3人であり、審査員なんかになったらどうしても目立ってしまうことが嫌だったという理由もあったりするんだよな。
 てなわけで審査員を断った俺たちであったが、出場者が威信をかけて作る料理が食えないことで、ちょっとだけ後悔しているのだった。

 さて、そんな俺たちが辞退した料理大会の審査員だが、これは領主をはじめ料理人ギルドギルドマスター、エイルード冒険者ギルド支部ギルドマスター、商人ギルドギルドマスターなど、各界のトップという錚々そうそうたる面々となっている。
 それを思うとますます俺たちは審査員とならずに済んでよかったと思うな。こんな街の大物の中にどこの誰とも知れない旅人を入れるなよ。


「皆さまお静かに願います。本日第01回エイルード料理大会本戦を開催したいと存じます」

 俺たちが会場を見ていると1人の女性が大声を張り上げてそういった。

 会場は街の広場となっており、その中央に特設の調理場が2つ作られており、その広場を眺めるように階段状の観客席が設けられていた。
 なんでもこの観客席は街の大工が領主の依頼で突貫工事で救護氏らで作ったらしいが、……崩れないよな。
 昔、テレビのニュースや衝撃映像でこういった観客席が崩れる映像を見たことがあるが、一瞬それがよぎったのは言うまでもない。
 閑話休題。

 ああ、そうそう彼女は料理人ギルドの受付嬢で、俺たちを受け付けた女性であった。
 なんでも、俺たちの窓口となったことでギルマスから指名を受けて今大会の司会進行を任されたようだ。
 最初こそ涙目で嫌がった彼女ではあったが、今見るとかなりノリノリだな。

「さて、まずは審査員の方々をご紹介いたします」

 そうして、まず審査員が次々に紹介されていくわけだが、うわぁ、ほんとに目立つ。

「あたしたちあそこにいなくてよかったわね」
「全くだ」
「辞退して正解だったな」

 あんな目立つことはしたくない。

「では、皆様お待ちかね。本戦出場者のご紹介をしていきたいと思います……」

 今回予選が行われた地区は、東西南北の地区がそれぞれ3から4つに分類されており計14か所で行われた。
 つまり、出場者は全部で14名となっている。
 紹介は当然名前はもちろん店名や地区名も紹介されるために、オクトが出た時は多くの人が驚愕した。
 だってそうだろ、俺たちが聞いた噂安くてまずい、それを聞いたことがあるものはそれなりにいるはずだ。
 そいつらからしたら、どういうことだってことだろ。
 中にはオクトが何か不正でもしたんじゃないかとか、オクトが出場した西地区エンドラにはまともな料理屋はないんじゃないかという話まで持ち上がっている。
 そうなんだよな地区予選で勝ち進んだってことは、その地区で一番うまい店ということになる。
 それすなわち、出場者たちは自分の店だけではなく地区すべての店を背負っているといっても過言ではない。

「お父さん、大丈夫かな」

 それをわかったからこそ、俺たちの隣にいるバネッサは心配しているわけだ。

「大丈夫だろ、オクトの料理は間違いなくこの街一番だ」
「それはあたしたちが保証するよ。ねっ、スニル」
「ああ、そうだな」
「あ、ありがとうございます」

 俺たちが続いて大丈夫だと太鼓判を押したことで、バネッサの心配も少し落ち着いたようだ。

 さて、いよいよ本戦がスタートするわけだがはてさてどうなることか、楽しみだ。
 最後に余談だが、ゴッドファーザーの店は予選敗退しており、本戦には出場していないことは明記しておこう。
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