勇者として召喚されたのに、なぜか牢の中でした。

夢限

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第01章 どういうこと?

01 異世界召喚

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 新作です。
 本日より5日間毎日1話ずつ更新します。
 その後は毎月10日更新となります。
 そんなわけでこちらが1話目です。

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 おかしい、どうしてこうなったんだ?

 理解できない現状に、若干パニックになりつつもこれまでの経緯を整理してみた。


 確か今日は放課後、1人で委員会の仕事を教室でやっていた。一人だったのは相棒である須藤の野郎がバックれたからだ。俺だってやりたくないがやらなかったらやらないで確実に面倒ごとになるから仕方なくやっていた。

「はぁ、めんどくせえ。なんで俺がやらなきゃいけねぇんだよ」

 一人愚痴るしかできない。くそっ、須藤の野郎、後で覚えていやがれ!

 そう思わずにはいられない。

「あれ? 恭弥じゃないか、まだいたのか」

 一人作業をしているとふいに一人のイケメンが入ってきやがった。こいつは岡山太郎といい、名前だけ見ると岡山県の役所で見かけそうだが、そのつらは先に言った通りイケメン、それも腹が立つほどであり、何よりこの野郎頭脳明晰、運動神経抜群、高身長という絵に描いたようなイケメンということが本当に腹が立つ。

 というか、一番腹が立つのがこの野郎と俺は保育園時代からずっと同じクラスという、最悪な腐れ縁ということだ。
 おかげで昔からこいつのおかげで散々な目に遭ってきた。例えば初恋、あれは小学校の4年の時だったか、かわいくて誰にでも優しくて、俺なんかにも分け隔てなく親しげに接してくれていた。そんな子から、ある日突如呼び出されて、俺はドキドキしながらその場所へ向かった。そして告げられたのは「太郎君が好きなんだけど、協力して」だった。これを聞いた瞬間まさに血の気が引いたのを今でもはっきりと覚えている。そして芽生えたのは太郎への憎悪。でもだからといってそれを表に出すとまずいというのは当時の俺でもわかったので、どうしたのかというと、泣く泣く協力したさ。その後も何度も似たようなことがあった、バレンタインとか、またバレンタインとかな。

「須藤の奴がバックレたからな。それよりお前こそもう帰ったんじゃないのか?」

 この野郎はだいぶ前にクラスの女子に囲まれつつ帰ったはずだった。

「ああ、ちょっと忘れものをしてね。ああ、これさ」

 そう言いつつ徐に開けたロッカーは、クラス一の美少女といわれている佐伯麗奈さえきれいなのもの。そんなとこを堂々と開けて、あまつさえ体操着袋を取り出せる男は、俺が知る限りこいつだけだろうな。もし、俺が同じことをしたら、確実に通報案件の事案となる。

「そうか、ならとっとと帰れ」
「1人じゃ大変だろう、僕も手伝おうか?」

 帰れと言っているのにこんなことを言う、こういうところも嫌いな理由の1つとなる。なんだかんだで付き合いが長いから、こいつのこれが本音ではなく偽善であることを知っているからだ。こいつは女子にモテるためにこうして心にもないことを言うんだよな。つまり、こうやって俺が1人で仕事をしているから手伝うことで、戻るのが遅いと心配で戻ってきた女子たちに、その姿を見せることで、優しさをアピールするとともに、手伝わせている俺を貶める目的があるわけだ。

 こいつは昔からこうやって自分を上げて周り(主に俺)を落としてくる。そして、大半の女子がイケメンたるこいつの言うことを真に受けていつも俺が悪者だ。つまり、俺を利用しているということだ。というか幼い頃はこの事実に気づかず仲良くしてしまっていたことがより腹が立つんだよ。なにせ、こいつは表向き全く俺を利用しているという黒い部分を出さない。俺が知ったのだって、ふとした瞬間に見たこの野郎の独り笑みだからな。あのときは自分の目を疑ったよ。まさかこいつが俺を裏切っていたんだからな。

 あっ、いや、そういえば一人だけいたな。こいつに惑わされることなく、一蹴した女子。名前は香久山愛莉亜かぐやまえりあといい中学の時のクラスメイト、俺の人生の中でも圧倒的な美少女だった。あいつが珍しく本気で惚れたと言い出して、みんなの前で告白したんだ。でも、彼女はそれを聞いて「えっ、生理的に無理」といった。あれを聞いたときクラス中があまりのことに凍り付いたのを覚えている。そんな中でいち早く我に返ったのが俺で、大いに笑わせてもらった。尤も、そのあとクラス中の女子どころか学校中の女子から人の不幸を笑った男として、蔑まれたのは言うまでもないだろう。でも、実はその彼女、愛莉亜とはお互い名前で呼び合うぐらいには仲良くなったので、そのあたりはどうでもよかったけどな。まぁ、結局は友達のままで終わったけど。

「いや、いらねぇ……!」

 そう言いかけた瞬間、足元が突如光りだした。

「えっ、な、なにが?」
「わ、わからねぇ、何だよこれ!」
「恭弥、ここから離れたほ……」

 あわてる俺たちであったが、突如目の前が真っ白になった。ふと足元を見ると、見たこともない文字のようなものが刻まれた円が浮かび上がっていた。これってもしかして、魔方陣?


 そうして、次の瞬間目を開けるとそこには先ほどまでの教室とは別の場所に立っていた。あたりを見渡してみると、足元には先ほどの魔法陣と同じものがあり、周囲には真っ白なローブを身にまとった者たちが一定間隔で立っていた。しかし、ローブの者たちは、まるで命を削られたかのようにぐったりしていた。その目は虚ろで、召喚の成功を喜ぶ様子は微塵もなかった。そして、その外側を見るとここはどうやらどこかの神殿のような場所なのか、真っ白でギリシャにありそうな柱が複数そびえていた。また、空気は妙に澄んでいて、ほんのり甘い香りが漂っていた。足元の石床は冷たく、現実味がないほど滑らかだった。


「おいおい、まさかこれって……」

 嘘だろ! これって、愛莉亜から聞いたことがある異世界召喚ってやつじゃねぇか!?
 実は以前、愛莉亜の秘密として聞いたもので、愛莉亜の両親、父親がかつて勇者として異世界に召喚され、母親がその世界で魔王をしていたというものだ。最初は何を言っているんだって思ったが、実際に魔法とか、愛莉亜の家にいる従者というナラーナさんを見せられたら、信じるしかなかった。だから実際にあるのは知っていたけど、まさか自分が召喚されるとは思ってもみなかった。

「ようこそお越しくださいましたわ、勇者様」

 不意にそんな声が聞こえてきたので、そちらを見てみると、そこにはとんでもなく豪華なドレスを身にまとった1人の少女がそう言った。勇者? まあ、確かに俺たちの足元には魔方陣があり、異世界召喚となれば勇者だろう。実際愛莉亜の父親がそうだったみたいだからな。

「勇者?」
「はい、わたくしは……」

 説明が始まり話を聞くことにした。それによるとまずこの少女はこの国の王女で現在魔王と交戦中なんだそうだ。しかし、人間でしかないこの国の戦力では決め手に欠け押され気味だという。これを打開するために異世界から勇者を召喚することにしたのだという。まあ、よくある話だよな。というかさっきから思っていたことだけど、この王女、終始太郎しか見ておらず俺の存在にすら気づいていないような感じだ。まぁ、これはいつものことではあるけど、というわけで俺は放置されている。

「……お任せください王女殿下、僕が必ずこの世界を救ってみせましょう」
「まぁ、頼もしいですわ勇者様」

 もう完全に太郎が勇者になっているみたいだ。

「ところで殿下、あちらはどうされますか?」

 ここにきてようやく俺の存在に気づいた王女の隣にいるおっさんが、王女に俺をどうするかと聞いている。

「あら、もしかして勇者様の従者ですの?」
「いえ、彼は……」
「そう。では、連れて行って。邪魔ですわ」

 太郎が従者ではないと否定した瞬間に王女が俺を連れていくようにと指示。

「はっ、えっ、ちょ!」

 待てと言おうとしたところで、鎧を身にまとった騎士連中に羽交い絞めにされそのまま連れていかれたのだった。
 いきなりにも程がありすぎる、というか太郎の野郎、俺が羽交い絞めにされるのを見て、一瞬口元をゆがめて笑いやがった。
 あの笑み――あれこそが、こいつの本性だ。
 俺を踏み台にして、またしても“勇者”の座を手に入れやがったんだ。
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