勇者として召喚されたのに、なぜか牢の中でした。

夢限

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第01章 どういうこと?

02 何がどうしてこうなった

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 2日目です。

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 王女の指示により連れ出された俺はというと、騎士は俺を抱えるというより、掴んで運ぶだけだった。
 その手には敬意も配慮もなく、ただ“異物”を処理するような冷たさだけがあった。


「おい、降ろしやがれ!」

 無駄とわかっていてもそう叫んでみたが、やはり意味はなく騎士は一切聞き入れてくれなかった。

 そうして連れてこられたのは屋外、体勢的に背後が見えたので出てきた建物を見てみると、やはりというべきか神殿であった。そして、騎士が向きを変えたことで、視界に飛び込んできたのは巨大な城。
 外国の城なんて見たことないけど、テレビで見たやつよりも明らかにデカい。
 荘厳――って言葉が自然に浮かんできた。
 それが、なんか腹立つ。俺の状況とあまりにも釣り合っていなさすぎて。


 そんな城を見ながら運ばれていくと、そこには馬車が2台並んでいた。
 どうやらその馬車に入れられるようで騎士はそこに向かっていく。

 馬車の扉が開いたと思ったら、俺はまるで荷物みたいに放り込まれた。

「痛っ! もっと丁寧に下ろせ!」

 抗議の声も虚しく、騎士たちは“任務完了”とばかりにさっさと立ち去っていく。
 ……ほんと、何なんだよこの世界。

「ほんと、何なんだ、一体、というかこれどこに行くんだ?」

 てっきり城から出た時点で終わりかと思ったらまさかの馬車、もしかしてこれで街の外まで運ばれるのか、もしくは物語とかだと、城の周りに貴族街がありその外側に平民街だからそこに運ばれるのだろうか。

 そう思いながらも馬車は出発した。そうしてしばらくしたところで少し止まったが、そのまますぐに動き出した。

「これ、外が見えないんだけどどこに向かっているんだ?」
「なんだ兄ちゃん、知らねぇのか?」
「何がだ?」

 俺のつぶやきを聞いた目の前の人相の悪いおっさんが教えてくれた。

 話によると、この馬車の行先は平民街でも街の外でもなく牢獄、王都から10日ほどの場所にある港町へ行き、そこから船でその牢獄のある島へ運ばれるみたいだ。
 島の牢獄ってアメリカのアルカトラズかっ!

 それに牢獄? 俺、何かやったか? いや、召喚されただけだぞ!?
 それなのに牢獄行きって、どんな理不尽だよ。
 勇者は城で歓迎、俺は島送り――この世界、クソすぎるだろ。

 馬車の中は薄暗くて、木の軋む音がやけに耳につく。
 隣に座っているおっさんや周りの連中も、見るからに前科ありそうな顔つきだし、……俺、ほんとに牢獄行きなのか?


 馬車に揺られること10日、ついに港町に着いたらしく何とも懐かしい潮の匂いがしているが、馬車には窓がないため海を堪能することもできない。

「よし出ろ、貴様からだ!」

 馬車が止まり、後方の扉が開いて兵士が顔を出したが、その顔は明らかに犯罪者を見る目だ。そして、次々に馬車を降りていき、ついに俺の番となった。

「次は貴様だ。降りろ!」
「なぁ、俺は何もしてないんだけど」
「黙って早く降りろ!」
「痛っ!」

 棒で殴られた肩がじんじんする。
 俺は何もしてない。ただ召喚されただけだ。
 それなのに、まるで重罪人みたいな扱い。

 それから馬車を降りた俺の手足に枷をつける兵士。この枷の冷たさが妙に生々しい。これでいよいよ罪人だけど、一体俺は何の罪なんだ。

 そんなことを思いながら兵士に連れられるまま目の前の船に乗り込んだのだった。
 あたりを見渡すと、港町の住民だろうか、多くの者たちがひそひそと話している姿が見え、俺がそちらを見ると、そそくさとそっぽを向く。何も罪を犯していない俺でもこうして罪人として扱われていることで、一般人にとっても罪人そのものだ。

 そんな理不尽さに脱力しつつ乗せられた船の船倉にある独房のような場所に入れられたのだった。


 それから船に揺られること5日、罪人としての扱いのためずっと閉じ込められて甲板に出るということもできず、しかも船の揺れで、うっぷ、き、気持ち悪い……

 船酔いでまったく耐えられなかった、ただただ辛い船旅だったが、ようやく目的地に辿り着いたようで、兵士がやってきた。

「出ろ!」

 こうして俺は無実でありながら、アルカトラズのような牢獄へ連れてこられたのだった。


 船を降ろされ、鉄格子の門は、まるで“人間”から“囚人”に変わる境界線みたいだった。
 その前に並ばされて、俺たちはただ黙って待つしかない。
 こうしてみると結構いるな。
 数を考えるとどうやら俺が乗せられた馬車以外にも多くの馬車から船に乗っていたらしい。

「では、お前たちから中に入れ!」

 数が多いためにグループ分けされて順番に中へ入ることになり、俺のグループは3番目ということでしばし待つことになった。
 そうしてついに俺たちの番となり、牢獄の中に入ることになった。


「服を脱げ!」

 中に入るといきなり看守からそう言われて、俺を含めて皆が戸惑っている。
 それはそうだろう。いきなりこんな場所で、脱げと言われて脱げるわけがない。
 それにこの場には男だけではなく女もいる。
 こういうのって普通男女分け、女には女の看守をつけてやらせる行為だろう。
 でも、ここは異世界であり地球の常識は通用しない。

 戸惑う俺たちではあったが、まず最初に行動に出たのはなんと1人の女であった。

「はっ、それぐらいなんてことないさね」

 そう言いながらも顔は赤い。けど、目は真っ直ぐだった。
 強がりなのは間違いない。でも、あの瞬間だけは、誰よりも“覚悟”があった。
 俺は、ただ見てることしかできなかった。
 まぁ、犯罪者としてここに連れてこられる女だからな、そこら辺の初心でいられるような人生じゃなかったんだろうな。そしてあっという間に全裸となった女、こういう時の度胸って男よりも女のほうがあるみたいで、1人が脱ぐとほかの女たちも徐々に脱ぎ始めた。そして、さすがにこうなってくると俺を含めた男たちも脱ぎ始め、ついには全員が全裸となったのだった。もちろん大半の連中が体を隠してはいるが。

「いいだろう、では全員後ろを向き壁に手をついて足を開け」

 今度は何を言い出すかと思ったら、とんでもないことを言い出したが、何をされるかなんて、考えたくもなかった。
 ……だから、あとのことは忘れることにした。

「そこのお前、ついてこい」

 あれこれが終わったあと、新たな服、というか洗濯なんてしていないのではないかというような、小汚いシャツ一枚を渡され、皆、それを黙って着ていった。
 それから数人ずつ看守が付いてどこかに連れて行き、最後に残ったのが俺で、どうやら俺だけあの連中とは別の場所に連れていかれるみたいだ。

 そうして、連れてこられたのは階段をいくつも降りた地下であった。
 階段は石造りで、踏むたびに湿った空気が肌にまとわりつく。
 奥へ進むほど、かすかに鉄の匂いと、何かが腐ったような臭いが混じってきた。
 降りても降りても終わらない感覚に、俺は本当に“底”に落ちていく気がした。

「ここは最下層、貴様のような重罪人を収容する場所だ」

 重罪人? 俺が?
 召喚されただけで、なんでそんなレッテルを貼られなきゃならないんだよ。
 本当、訳が分からない。

「ここだ、入れ」

 文句を言いたいが、これまでさんざん無視されたこともあって、もはやその気力もなく、言われるがままに鉄格子の中に入ったのだった。

 その後手足の枷を外され自由になったが、結局牢の中なので自由はないといってもいいだろう。

 ほんと、これどうすればいいんだ?

「はぁ」

 鉄格子の中で、俺はただ座り込んだ。
 何も考えたくない。何も感じたくない。
 ただ、ため息だけが漏れていく。
 ……これ、どうすりゃいいんだよ。
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