俺「が」守りたいのは俺「を」守りたい推しヒロイン〜全クリしたゲームに転生した俺は才能ゼロの推しヒロインに守られるフリに徹します〜

長縄 蓮花

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3話 今日から俺は!

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『スレイブ・フロンティア』の世界に俺が転生してから1週間が経った。

 割り当てられた狭い部屋の窓から清々しい朝日が真っ直ぐ差し込む。
 俺は9割方回復した体を起こすと、今日の計画をもう一度頭でシュミレートする。

「たしかあそこの角曲がった部屋の引き出しに……それであの地下室が開いたはずだよな」

 ふとベッド横に立てかけられた姿鏡に目を向ける。

 そこに写るのは小さな男の子いわゆるショタってやつだ。

 くりりとした大きな目に高く通った鼻筋が印象的なお顔。
 KPOPアイドル顔負けの黒髪キノコヘアにまだ多少の違和感がありながらも、俺はやっとこの小さな体を受け入れ始めてきた。

「この髪型を昔の俺がやったら皆んなの笑いもんだよなー……」

 鏡を眺めながら一人自虐を垂れる俺の視界にふと時計が入る。


「――よし……一回確認しとくか……」


「ステータスビジョン オン」

《シュント(8) 魔導師 種族不明》

【レベル】      8

【HP】      30/30

【MP】      28/28

【攻撃】       22

【防御】       13

【装備】      装備なし

《習得魔法》    

火散弾     消費MP4
風突      消費MP5

 レベルアップまで15EX


 うひゃー。
 あらためて初期ステータスの数値を見ると愕然とする。

 主人公は剣士だったから魔導師の育て方はよく分からないなー。
 それと種族不明ってのもいまいちよく分からないし。

「……どう考えても人間だろ」


 コンコンコンコン。

 律儀に4回も鳴るノック。
 今朝もあの子がやってくる。

「――シュント君。入っていい?」

 ドアの隙間からぴょこっと現れる俺のヒロイン。

「はい。僕もちょうど暇を持て余していたので」

「そっか」

 ヴァニラは毎回少し照れくさそうに俺の部屋に入ってくる。

「もうお傷は塞がったの?」

「そうですね。本日から仕事に取り掛かれそうです」

「そっか。うれしい」

 その言葉を聞いたヴァニラは両手に抱えたぬいぐるみをそっと抱きしめる。


 コンコン。

 少し強めのノックが2回。

 ああ、あの人だ……。

「さぁシュント!今日でお客さん気分は抜いてちょうだいよ。今日からアナタはヴァニラ様の執事になるべくみっちりしごくから覚悟なさい!」

 彼女の名前はミルボナさん。

 少し丸くなった背中からは想像がつかないパワフルな性格のお婆さんで、ノーデンターク家の屋敷のお手伝いさんとして30年勤務するベテランお世話係だ。

「あはは……お手柔らかに……」

 そう。
 今日から俺はこの世界で生きていくために、ポンコツヒロインの執事として仕事を始める。


「さぁ! お嬢様は旦那様と魔導訓練のお時間ですよ!」

 その瞬間、ヴァニラの顔から表情が消える。

「……うん。いまから行くね……」

『スレイブ・フロンティア』をやり込み、大人になったヴァニラの悲しい人生を知った俺からすればこの反応がどうゆう事を意味しているか痛いほど分かる。

 ヴァニラの父はこの世界でも有数の魔道騎士として知られる傑物であり、『スレイブ・フロンティア』でも主人公の力が魔王に対抗しうるか確かめる中ボスとして登場するほど。

 聖魔道騎士として由緒正しい歴史を持つノーデンターク家の長にして、ポートライト地方の領主でもある彼は、子供にも徹底したスパルタ指導を強いる厳しい性格なのだ。

 そんな厳しい性格の彼はノーデンターク家の女でありながら未だに魔導センスを示さないヴァニラに苛立ち始めている。

 原作ではヴァニラは12歳で魔導センス無しと判断されそこから家族、屋敷ぐるみのいじめにあってしまう。

 しかし。

 今回は『スレイブ・フロンティア』を何千時間とプレイし、モンスターの特性、ドロップアイテム、全ての宝箱や隠しアイテムの場所まで知り尽くした俺が居る。

 俺はその知恵と経験を使いヴァニラの悲しい運命を変え、更には主人公にこの子を取られないように生きてやるんだ……!


「じゃシュント君……また夜ご飯のときにおはなししよ」

 ヴァニラの小さく消えそうな声はこれから待つ修行の厳しさを物語っている。

「はい。ヴァニラ様も魔導訓練がんばってください。今日こそ出来ますよ」

「……そうかな」

 そう呟き、ヴァニラは部屋を出る。


「はい! あんたはこれに着替えて! まずは風呂掃除から覚えてもらうわよ!」

「分かりました」


 指定の服に着替え、部屋を出た俺はミルボナさんの熱血指導になんとか耐える。
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