俺「が」守りたいのは俺「を」守りたい推しヒロイン〜全クリしたゲームに転生した俺は才能ゼロの推しヒロインに守られるフリに徹します〜

長縄 蓮花

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9話 聖騎士エリクス

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 ――翌日、聞き慣れた4回のノックで目を覚ます。

「シュント。起きてる……?」

 正直、昨日の地下散策での寝不足は否めない。

 しかし、憧れの推しヒロインがわざわざ部屋まで来て俺とお話したいと言ってくださっているんだ。
 呑気に寝てていられるはずもない。

「はい」

 またもひょっこりと現れたヴァニラの顔には大きなガーゼが何個も貼られいていた。

「お怪我は大丈夫でしょうか? まだ痛みますか?」
「うん……ちょっぴりだけ痛い……」

 素直に弱みを見せてくれたことが少し嬉しかった。

「そうですか。何かあったらすぐに私を頼ってくださいね。私はヴァニラ様の執事になる男ですから」

 するとヴァニラは小さく微笑みながら答える。

「……ともだち だもんね」

「ええ、お友達です」

 昨日同様、顔を真っ赤にしたヴァニラはすぐさまぬいぐるみに隠れる。

 ……。かっわい。

「はい!! 仲良しなのはいいことだけれど今日もビシバシ働いてもらうよ! お嬢様は今日も旦那様と魔導訓練ですよ!」

 ヴァニラの表情がまたも曇る。

「うん……。すぐいくね」

 その時、俺はミルボナさんに一つのお願いをした。

「ミルボナさん。私もヴァニラ様に付いていってもよろしいでしょうか? 旦那様にはここまでお世話になっているにも関わらず、ろくに挨拶も出来ていませんので……」

「シュント……?」

 ヴァニラは少し不思議そうに俺を見つめる。
 するとミルボナは丸めた腰をトントンと2回叩きながら答える。

「うーーん。たしかに旦那様はお食事も自室でとられるからアンタがお会いするのは難しいものねぇー。でもいきなりそんな事して旦那様のご迷惑にーー」

「ミルボナ婆様! ヴァニラからもお願い! シュントとお父様を会わせてあげてほしいな……」

 ミルボナは目を丸くしながらヴァニラを見つめる。

「お嬢様がそこまで言われるなんて……。ええ、いいでしょうこのお婆がお願いして参りますのでここでお待ちください」

「うん! ありがとミルボナ婆様!」

 満面の笑みを浮かべてお礼を言うヴァニラの姿は、成長した時と同じで見る者全てを幸せにしてくれるようだ。

「でもシュント……旦那様は大変厳しいお方だからね。くれぐれも注意するんだよ」

 そう釘を刺す言葉を言い残しミルボナは部屋を去っていく。

 エリクスか……。
 たしか主人公が青年期で会った時の年齢が50代前半で魔導力が落ち始めた頃だったはず。
 稀代の聖騎士として有名だった彼は、主人公が現れるまで魔王討伐に一番近い力の持ち主だと噂されていたほどの人物。

『スレイブ・フロンティア』をやり込みまくった俺でも、思い出の戦闘ベスト5に入るくらいには苦戦した。
 それが10年前の現在ではどれほどの強さを誇っているのだろうか。

「シュント……ヴァニラの事心配してくれたの?」

「ええ。しかしご挨拶したかったのもまた事実です。あの日、ヴァニラ様のお願いを聞いていただきありがとうございましたとお礼を言わなくてはなりませんから」

 まぁあと一つ重大な目的があるんだけど……。


 そう思いながら、俺は姿なき杖を掴みこの子を守ると心に刻む。
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