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19話 イノディクト討伐作戦1

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 マリナは軽く会釈する。

「この方のお名前はダンテ様。この町の町長でいらっしゃいます」

「私、この度ヴァニラ様の執事見習いとしてノーデンターク家に召し抱えていただきましたシュントと申します。以後お見知り置きを」

「うんうん。若いのぉー。エリ坊様は気難しいから気をつけるんじゃよー」

 エリ坊様とはおそらくはエリクスの事なのだろう。
 エリクスをここまで砕けた呼称すると言う事は随分古くからの知り合いで間違いないか。

「して隣の可愛らしい女の子じゃが――この白銀の髪……もしかしてヴァニラ様ですかの?」

 優しい口調で話しかけるダンテに対し、なぜかヴァニラは咄嗟に俺の後ろに隠れてしまった。

「――? ヴァニラ様? 何を?」
「ヴァニラ様は初対面の人間と話すまで時間がかかるお方ですから」

「フォフォフォ。こりゃぁお話しできるまで時間がかかりそうじゃの。立ち話もなんじゃからわしの家においでなさい」

 白髭を顔中に蓄えたお爺さんの後ろをついていく。
 しかし、ヴァニラは一向に俺の服の袖を掴んで離さない。
 これはいわゆるあれだな。
 極度の人見知りってやつだ。


 ノーデンタークの屋敷ほどでは無いが、レンガと大理石で造られたこの屋敷も中々素晴らしいものだな。
 俺はふかふかのソファーに座り、出されたコーヒーを啜りながら獲物を探して応接間の隅々まで見回す。

「――よっこらせ。でじゃ。突然ですまんが本題に入らせてくれんかの?」

「はい。我々もイノディクス討伐のためにここに来ましたので早速詳細をお教え願えますでしょうか」

「つい三日ほど前じゃ。深夜屋台の締め作業をしとったらなんとじゃ、イノディクスが高台から港の方まで猛スピードで駆け降りてきよった。幸い怪我人は居らんかったが屋台が二件壊されてしもうてのぉ」

「深夜? 港ですか? あのモンスターは昼行性で森や林を生息地にしているはず……。いくら餌を求めて来ていたとしてもこの街と森林地帯はあまりに遠いですね」

 俺も今回で1番の気がかりなところがそこなのだ。
 全クリ経験者として全てのモンスターの行動パターンや出現地域を知っている者としても港町。ましてや深夜に出現するはずがない。

「しかしそんな御託を並べていても被害が拡大するだけです。本日の深夜1時より我々は高台の警備にあたります」

「お主の剣の腕は誰もが認めるものじゃからな。これで安心じゃわい。あと宿なんじゃがこの屋敷使用人に聞いて空いとる部屋を使ってくれ」

「それほどでも……。では我々は出発までしばし休ませていただきます」

 そう言い残し応接間を出た俺達は各自部屋に案内された。
 人見知りをばっちり発動しているヴァニラは誰とも話す事なく案内された部屋に入っていった。


「ふー歩いたなぁー。こんなに歩いたの小学校の遠足登山以来だな」

 一人で使うには広すぎるベッドに倒れ込みながら、脳内マップとその時間この街の人間の行動パターンをシュミレートしながら目を瞑る。

 そして数時間ほど仮眠を取った俺はこっそりと自分の部屋から抜け出す。
 時刻はすっかり夜になり静まり返った屋敷といまだに活気がある窓外の市場からはガヤガヤとした人の声が絶えず聞こえてくる。

《不可視擬を使用しますか?  消費MP2》

 YES

「よし……これでOK」

 姿を無くした俺は先程までいた応接間に忍び込む。

「たしか……この壺の中に……」

《苑金の人形を手に入れますか?》

 即答のYES。

「そんで……この棚の中に……」

《探査魔法書を手に入れますか?》

 やはりYES。

《使用しますか?》

 YES

《探査魔法 方位磁針を習得しました》

 よし……!
 これで楽にイノディクトを探せる。

 しかし……。
 
 RPGの世界だと割り切ってもこの行動ただの泥棒だよな。
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