俺「が」守りたいのは俺「を」守りたい推しヒロイン〜全クリしたゲームに転生した俺は才能ゼロの推しヒロインに守られるフリに徹します〜

長縄 蓮花

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20話 イノディクト討伐作戦2

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「――まいど! 6000リンクね! またよってくれよ!」

 よしよし。
 あんなよくわからない金の人形がこんなに高く売り捌けるなんて……!
 俺がここまで盗人じみた行為をするのには深い理由がある。

「ステータスオン」

《シュント(8) 魔導師 種族不明》

【レベル】      10

【HP】      39/39

【MP】      36/36

【攻撃】       399

【防御】       31

【装備】       武器 沈黙魔杖
           
           防具 魔法のローブ

《習得魔法》    

 火散弾     消費MP4
 風突      消費MP5
 不可視擬    消費MP2 
 方位磁針    消費MP3

 この通りレベルアップしたとはいえ、俺のステータスは攻撃力に特化しすぎて他のステータスが心許ない。
 魔導師のくせにまだ回復魔法を覚えられていないのが痛すぎる。

 身体ステータスが比較的弱い魔導師なのでHP、攻撃力、防御力の少なさを補える補助アイテムの補充は必要不可欠だ。

「とりあえず……薬草とMPポーションは買っとかないと」

 その後も金の人形を売った6000リンクで街中駆け回り、自分に必要なアイテムを買い揃えて、集合時刻時刻の1時少し前に町長の屋敷へと戻った。

「――揃いましたね。では参りましょうか」

「うん!」
「はい」

 出発しようとしたその時、鼻頭に冷たい水滴が落ちて来た。
 ポツポツと降り出した雨はやがて本降りとなっていくが、こんな事で討伐作戦をやめるわけにもいかない。

 俺達は屋台が閉まり地面に打ちつけられる雨音のみが響く街路を進み、例の高台に到着した。

「隊列は昨日と同じです。どこから現れるか分かりませんし、この雨で視界は更に悪いですが皆さん気を引き締めていきましょう」

 高台を起点に俺達は草原周辺を探索する。
 普通雨雲に月灯りが遮られたこの状況でイノディクトを探すだけでも一苦労だが、俺には先程手に入れたとっておきの魔法がある。

《方位磁針を使用しますか?  消費MP4》

 YES

《測定成功 南南西 特定の反応あり》

 よし。

「――マリナさん! 今イノディクスらしき影が見えました!」

 俺は大袈裟に南南西の方角を指差して、パーティーの進路を無理やり変更させる。

「――行きましょう」

 俺達は雨に紛れながら草原をかき分けながらひたすら南南西を目指して歩き続ける。

 ん?
 暗くて良く見えないがぬかるんだ地面に大きな動物の足跡があるようにも見える。

 その時、雨音に混じって徐々に大きくなる重低音が聞こえてきた。

「――! みんな下がって!!」

 マリナの大声が草原にこだました直後、凄まじい衝突音と共にマリナの華奢な体は吹き飛ばされる。

「――マリナさん!!」

「だ、大丈夫です。一応剣体で受け止めたので……。あなた達は突進の進路に入らない所に居てください」

 ブゥゥルッフゥゥー!!!

 暗闇から現れたイノディクトは鼻息を荒くした興奮状態の様子。
 地球の猪を3倍近く巨大化させた大きな体に上下から生える4本の鋭い牙と時速60キロを超える突進。

 こんな質量の物体が衝突して来たらそりゃあ人間なんて軽く吹き飛ばされる。

「――身体強化!」  

 身体強化。
 やはり剣士のマリナさんはイノディクトと真正面からやり合うつもりなのか?

 マリナは強化魔法を唱えると肩幅に足を開く。
 さらになんとそのまま目を閉じながら剣を前に構える。

 ブゥゥフゥゥー!!

 大きな足音と泥を跳ね上げながら再度マリナに向けて突進するイノディクト。
 しかしマリナは目を瞑り動かない。

「マリナさん危ない!!」

「――ここです……。地切り!!」

 カッと目を見開いたマリナの地を這う剣撃は空気と雨、更にはその先にあるイノディクトの左足を切り裂いた。

 剣撃の軌跡を描くように鮮血が噴き上がる。

 グゥゥグググゥゥ!!

 猛スピードの巨体は大声で鳴きわめくと、そのまま躓いたように地面を抉りながら滑っていく。

「す、すごい……あの巨体をこんなにも簡単に……」
「マリナさんって強いんだね……」

 衝突寸前ひらりと躱しながら剣撃を食らわせたメイドの実力に思わず息を飲む俺とヴァニラ。

 しかし。

「――くっ!!」

 何故か苦悶の表情で右腕をおさえるマリナ。
 そしておさえられた右腕をよく見るとダラリとぶら下がっていた。

「マリナさん……その腕……」
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