俺「が」守りたいのは俺「を」守りたい推しヒロイン〜全クリしたゲームに転生した俺は才能ゼロの推しヒロインに守られるフリに徹します〜

長縄 蓮花

文字の大きさ
53 / 63

53話 もう一人のヒロイン

しおりを挟む

「あははー。多分君が思っている事がそのまま正解だよ! パッパの血統譲りのシルバーヘアは僕も気に入っているよー」

「――! あ、そうか君にはヴァニラリアとお揃いって言った方が分かりやすいねー。ヴァニラリアの執事見習いのシュントきゅん」

「なんで。俺の名前を……」

 目の前の美少女はおっとり笑う。

「さぁーーねぇーー。君たちがせっかくのもてなした温泉を逃げ出したりするから興味持っちゃった? なーんてねー」

 どこまでも飄々としたこの態度。
 オタク歴21年の俺の勘とアニメ知識が告げている。

 コイツは確実に強者ポジションだ……!

 元々ヴァニラの存在で勘違いしていたが、ゲームやアニメで白系統の髪色キャラが強いってのは、◯ヴァの時代から決まっている。

 しかし、そんなデタラメな世界に迷い込んだ以上そうとも言っていられない……。

 俺は右手の杖を彼女目がけて構える。


「――へぇ。いい杖だね。それ」

 感心したように頷く女。

 隠蔽を解除した状態で敵と戦うのは初めてだが、色々と知っていそうなコイツをここで逃すわけにもいかない。

「覚悟しろよ。狐女」

「おいで……」

 女は弓矢を軽く構える。

 人二人がやっとすれ違うことができるほど狭い幅の地下道。
 左右の動きで弓矢を避ける事は不可能か……。

 それなら……!

《火散弾を使用しますか?》

 YES

《隠蔽魔法は付与しますか?》

 NO

 高火力かつ広範囲魔法で一気にケリをつける……!!


 しかし、構えた杖先からはいつもの爆炎がいつまでたっても姿を現さない。

「ええっとぉー。あんなに見え切ったのに大丈夫―?」

《発動エラー  MPが足りません》

 こんな時にMP切れ……!?
 どうする!

 コイツは見るからに中遠距離攻撃が得意な弓装者だ。

 はっきりとは見えなかったがさっきの技をやられたら俺に避ける術はない……。
 かと言って反対に攻撃しようと通常攻撃を試みてもそれこそ格好の餌食だ。

「あちゃーどうしようかねぇー。パッパからはシュントきゅんにはまだ手を出すなって言われてるしなぁー。でもなー、殺てみたいなー……」

 女はブツブツと何か言いながら薄オレンジに輝く弓身を構える。

「ま、いっか。謝ればー」

「――神楓弓技 『矢風糸』」

 構えられた矢は弓身とは反対に青緑色に輝く。

「――死なないでね……シュントきゅん」


「伏せて! チビ!!」

 矢が放たれるコンマ数秒前。
 背後から聞こえる聞き覚えのある攻撃的な声色。

 俺の体は咄嗟に指示通り体を地面に叩きつける。


「――水鷹!!」


 甲高い鳴き声を響かせながら鷹を模した水鳥が俺の頭上スレスレを飛行し、狐目女が放った矢と激突した。

 弾け飛ぶ水が赤く染まった俺の顔面を綺麗に洗い流してくれた。

「――あの技って……」

「そこのチビ……無事?」

 聞き覚えのあるクールな声色とこの薔薇の如く刺々しい言葉選び。

 間違いない。

 恐る恐る背後に視線を持っていく。


「――なんでここに居る……アスナカーレ・グランフィリア……!」

「――? なんで私を……?」

『スレイブ・フロンティア』が現実世界であそこまで大人気になった理由。

 それはストーリー進行上選択可能な美しき二大ヒロイン制にあった。

 その議論は国内外でも激しく議論されるほどであり、オタク界におけるミレニアム懸賞問題と呼ぶものも居たほど。

 純粋無垢で誰にでも太陽のように明るく実直に接する弱者の姫であり、無才能でありながら自分の運命に必死に争う姿を応援したくなる『ヴァニラリア・サラ・ノーデンターク』をこよなく愛する『ヴァニラ派』。

 そしてもう一つ対となるヒロイン。

 それが今、俺の背中に立つクールな毒舌優等生ヒロインをこよなく愛する『アスナカーレ派』だ。

 魔導の才に恵まれた冷静沈着な天才美少女。
 真面目で何事にも手を抜かない彼女は主人公が産まれた街では有名な魔導師であったが、とにかく性格がツンツンツンツンデレ。

 素直に喜ばない。
 いや、恥ずかしくて喜べない。

 素直に人を誉めることが出来ない。
 いや、一生懸命誉めているつもりだがいつも言葉の棘を抜き忘れてしまう。

 そんな彼女が見せる一筋のデレに心を鷲掴みにされたモンスターオタクと何度物販で揉めただろうか。

 しかし、そんな事を言う俺も対になるヒロインがヴァニラじゃなかったら、もしかしたらその一派の片翼を担い、モンスターオタクと揶揄した奴らと酒を酌み交わしていたかもしれない。


「何? そんなに見られると吐き気がするんだけど」

 クラスの一軍女子の冷たい口調を思い出し、先ほどまでの威勢を完全に失った俺は子犬のようにしょんぼりする。

「第一」

「?」

「魔導師ならMP残量をチェックしながら戦うのが基本鉄則。何? 馬鹿なの?」

 仮にも初対面の人間にここまで高圧的に行ける精神が分からん。
 俺は何回も告ってきた大人のお前をフってきたんだぞ! と言ってやりたい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...