眠れる隣の山田くん

第1章 眠れるあいつの隠し事(基本壱輝目線)

1.Transfer student

 転入生がくる。

こんな田舎に、都会から。
クラスメイト達は浮き足立って、いつも以上に騒がしい。

そんな中、つまらなそうに窓の外を見ているのが、この物語の主人公、吉原 壱輝よしはら いつき。
彼は、耳に開けたピアス(兄貴に開けられた)と、コミュ障と視力が落ちたせいで悪くなった目つきが原因で、不良と勘違いされやすく、なかなか友達が出来ないのだ。

だが、彼がつまらなそうに窓の外を見ているのは、その所為ではなかった。
ただ興味がなかったのだ。
それは、
クラスのバカどもと一緒にされたくないとか、小学生みたいで馬鹿らしいとか、
そんな理由でもない。
クラス中が騒ぎ立ててる、転入生とか言うどこの誰とも知らないやつに、全くと言っていいほど興味がなかったのだ。
ただ、少し面倒なことと言えば…
転入生が座る席が、自分の隣だと言う事だった。

これからの学校生活を想像してため息をつくと、チャイムの音と同時に、教室のドアが開いた。
さっきまでの騒音が嘘のように静まり返る。
見慣れた担任の後ろをひょこひょことついてきた転入生に、皆釘ずけになった。
男子にしては低めの身長、長い睫毛、黒目がちな瞳、シャープな輪郭、透き通るような色白の肌。
長めの黒髪は後ろに束ねられていて、それがまた中性的な顔を際立たせていた。
まさに美男子、と以外言いようがなかった。


｢福羊ふくよう高校から転入してきた、山田 彩兎やまだ あやとです！これからよろしくお願いします｣

よく通る綺麗な声。
初対面なはずなのに、どこかで聞いたことのある声だなんて思ったのは、きっと勘違いだ。
転入生は担任に促されて、俺の隣の席に座った。


｢これからよろしく！｣


かけられた言葉と、向けられた笑顔に会釈しながら俺は、
(あぁ、俺とは違う人種だな)
なんて思っていた。