菩提樹の猫

無一物

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10章 娼婦たちを護衛せよ

3 狼の血※


◇◇◇◇◇


 しっとりと汗を浮かべた白い身体が、闇に浮かび上がる。
 
「ぁっ……だめっ……ううううぅっ」

 悲鳴のような喘ぎと共に見開かれた黄緑色の瞳が閉じると、ぽろぽろと涙が零れる。
 頬を伝わり落ちる液体を、もったいないとばかりにバルトロメイは舐めとった。

 感受性の高い身体は、行き過ぎた快感を涙に変える。
 その証拠に、レネの欲望の証はピンと張り詰めてはち切れそうだ。


「……動くなっ……うぁっ……ああっ……」

「どうしてっ……? こんなに吸い付いてくるのにっ……」
 
 口では嫌だ嫌だと不満を垂れながらも、下はどうだろうか?
 少し身を引いただけで、出て行かないでくれと纏わりつくようにバルトロメイを引き留める。

「ぉう……」
 
 我慢できずに低く呻く。
 今まで味わったことのないような極上の筒は、気を抜けば全てを持っていかれそうに狭い。
 
 抱いている時は優位に立てるだろうと思っていたが、そうはいかない。
 全神経がレネの痴態に反応し、快楽の渦の中へと巻き込んでいく。

「あっ……ああっ……」

 弦のように張り詰めているのに、その上を伝わり落ちていく蜂蜜みたいに艶のある声は、バルトロメイの耳をすり抜け、脳内を直に犯す。
 
 華奢な造りなのだが決して貧弱ではない。
 適度に乗った大胸筋が、レネに妖し気な魅力を加えていた。
 その上にまるでバルトロメイの気を惹くために設計されたかのような果実が、浅い呼吸を繰り返す度に、触ってくれと言わんばかりに揺れる。

 前戯で既に濡れそぼっているそこを、左右それぞれの手で再び可愛がる。

「……そんなっとこっ……触るなっ……」

 人差し指と親指の腹で転がすように揉みこむと、白い喉を仰け反らせ身をよじる。

「嘘つけっ……気持ちいくせに……ほら?……こんなギュウギュウに俺を銜え込んでるぞ?」

「ううっっ……くっ……」

 小さな胸の飾りを筋肉から絞り出すように引っ張ると、それに連動するようにレネの中もバルトロメイを締め付けた。

「ほらっ……また締め付けてる」

 レネを身体を弄れば弄るほど、バルトロメイの快感となって返って来る。
 
 一度身体を繋げてしまうと、レネの快楽がダイレクトにバルトロメイに伝わり、もうどっちがどっちの快楽なのか区別がつかなくなっていた。
 二つの身体が融合し、普通では感じられない感覚に陥る。
 
「もうそろそろか?」

 レネの可愛い分身は、腹に付きそうなほど反り返り、先端から透明の液体を零していた。
 
「ちょっ……ああっ……まってっ……いっ…あっ…あっ……」

 いいところに当たるよう角度を変え、激しい抽挿を繰り返す。

 レネは行き過ぎた快感に、のしかかったバルトロメイを手で押し返し必死の抵抗を試みるが、この体格差ではびくともしない。
 それどころか、両手で回ってしまいそうな細い腰を掴み、より一層深く身体を繋げる。

「……ひっ……」

「ほら、いけっ……」

 バルトロメイは、美しい色をした雄芯を掴み、先走りの液を潤滑油にグチュグチュと音を立て激しく扱いてやる。

「あっ…ぁっ……うううううっっ……」

 生々しい呻きと共に、熱い液体が腹に掛かる。

「くうっ……」

 びくびくと跳ねる身体を強く抱きしめていたが、吐精に伴う強い締め付けに耐え切れず、バルトロメイもレネの中に精を吐き出した。



◇◇◇◇◇



「……っ!?」

 見慣れぬ天井が目に入り、意識が覚醒する。
 生温い下半身の感触に、バルトロメイは瞬時になにが起こったかを悟る。

 バルトロメイたちは、二日かけて山城の近くの村から脇道を通って街道に出て、最初の村を通り過ぎ、ヴィラッジオと言う宿場町で宿を取っていた。

 レネとフィリプはまだ目をさましていないようで、ホッと胸を撫で下ろす。

 無防備に眠るレネに、夢の中で自分はなにをしていた?
 滑らかな頬に灰色の睫毛を落すあどけない寝顔を見ていると、罪悪感と羞恥に苛まれる。
 
(……最悪だ……)

 ガシガシと頭を掻き荷物から着替えを取り出すと、洗面所へと逃げ出すように歩いていく。

 原因はわかっている。

 バルトロメイだって男だ。人一倍性欲はある。
 レネとこんな長い期間、同じ空間で寝食を共にするのは今回が初めてだ。
 リーパにいた頃は、お互いの部屋が別の所にあったのでまだ逃げ場があった。
 だが今は、性的対象と四六時中顔を合わせて、自分で処理をする場所さえも満足になかった。

 そんな中、あんなできごとが起こったら、我慢できなくもなる。




 ヴィラッジオにつくまで、幸いにも追手に遭遇することはなかったが、山道では一度山賊たちの襲撃を受けた。
 山に何年も籠っているような男たちの風貌は、『復活の灯火』が金で雇っている護衛とは明らかに違う。

 山賊たちは、常に血と金と女に飢えている。
 荷車さえも通らない、狭く危険な脇道を若い娘が通るはずもなく、近くの集落に女狩りが現れると、住人たちも困っていた。

 そんな奴らのテリトリーをレネの様な男が通ったらいったいどうなるだろうか?

 追手たちに見つからないようにレネは外套のフードを被ってはいたが、山賊たちの襲撃を受け立ち回っているうちに、フードが肩に落ちると、男たちの顔色が一気に変わる。

「女だっ!! それも上玉だぞ、あいつを捕まえろっ!!」

 山賊たちは群がるようにレネへと向かってい行く。
 
 厳密に分類すると、レネは決して女顔と言うわけではない。
 中性的な美青年だ。

 バルトロメイは女だから美しいとは思わない。
 ただ男よりも顔立ちが柔らかいだけだ。
 もちろん女にも美形はいるが、同じように男にも美形がいる。

 バルトロメイは男女両方いけるくちだが、過去に選んできた相手は中性的な美形ばかりだ。

 なにが言いたいかと言うと、美しいものを見てすぐに女だと変換する山賊たちの単純な脳味噌が気にくわないのだ。
 そりゃあ、自分たちの獣みたいな外見と比べたら、レネが女に見えるのかもしれないが。
 
 こんな危険な道を若い娘が通るはずもないし、あんな背の高い女なんて滅多にいないだろう。
 単純に考えたらわかりそうなものなのに……。
 仲間がバッサバッサと斬られていくのに、それでもレネを女だと信じて群がる男たちの気が知れない。

(……馬鹿な奴らだ……)

 きっと女日照りが続き、頭がおかしくなっているのだろう。
 男なんてしょせん下半身で動く生き物だ。

 
 いくらレネが強いと言っても、一人で何人もの相手をするには無理がある。
 山賊の一人が目くらましに顔めがけて砂を投げつけ、砂が目に入ったのかレネの動きが鈍くなる。

「よし! いまだっ!!」

 急にい勢いを取り戻した山賊隊は、後ろからレネの足を払い引き倒す。

 レネはあっという間に地面へと引き倒され、山賊たちに群がられている。
 一対二ぐらいまでならレネもなんとか対処できるだろうが、六人ぐらいに群がられたらどうしようもない。

「レネっ!!」

 目の前の敵に止めを刺しながらも、バルトロメイはすぐにレネの方を振り返る。

「おい、あれヤバいぞ……」

 近くに居たフィリプも異常に気付いてバルトロメイに呼びかける。
 
 
「よくもやってくれやがったな、ひんむけっ!」

 山賊たちはバルトロメイたちが見えていないのか、背中を向けてレネを襲うことに夢中だ。
 
 ひん剥いても、山賊たちが想像しているような豊満な胸は現れない。
 だがここまで冷静さを失った連中には、まな板の胸が出てこようと、股間に余分なものが付いていてもきっと関係ないだろう。

 バルトロメイはレネに夢中の山賊たちを後ろから斬りつけると、突破口が開けレネの姿が男たちの隙間から見えた。
 仰向けに両手を押さえられ地面に縫い付けられているが、大きな怪我はないようだ。
 いつの間にかフィリプも回り込んで来ており、隙だらけの山賊たちを二人で成敗する。
 
 バルトロメイはそんな山賊たちに容赦しない。
 なんの躊躇もなく殺す。
 命乞いされたって助けてやろうとは思わない。

 どうやらフィリプも同じ考えのようで、それもわざと苦痛を長引かせるようなやり方で殺していっている。
 人のいい温厚な性格かと思っていたが、どうやらそうでもないようだ。


「大丈夫か?」

「……目が……」
 
 戦いを終え、バルトロメイはレネへと改めて視線を向けるが、見なかったらよかったと後悔する。
 女と勘違いされてのしかかられていたのでシャツが破かれ、胸元が覗いている。
 砂を投げつけられて目の中に砂が入ったのか目を真っ赤にして涙を流し、唇の端には殴られた跡が残っていた。

 バルトロメイは思わず舌打ちし、目を逸らす。
 人を殺し、気が立っている状態では、今のレネは毒でしかない。

 頭に上っていた血が、今度は一気に下半身へと向かっていく。
 

「犯られたあとみたいだな……」

 フィリプが片眉を吊り上げてぼそりと呟いた後に、口許を歪めて笑った。
 レネが無事だったことに一安心し、わざと茶化しているのだろう。

 敢えて目を逸らし考えなかったものを言語化されると、頭から先ほどの光景が離れなくなるではないか。

(クソが……)

 わざわざ口にしたフィリプに軽い殺意を覚えた。
 

「……黙れ」

 レネも、そんなことを言われ嬉しいはずがない。
 言い返す声がいつになく低い。

 本来ならば狩る対象でしかない山賊たちから逆に襲われて、レネは悔しさを募らせている。
 行き場をなくした殺気が身体の至る所から滲み出ていた。


(だめだ……)

 ドクドクと己の分身が脈打ち頭を擡げる。


 レネは女と間違えられ、自分だけが集中的に狙われたのだ。
 それだけだったらいつものことかもしれないが、今回はうっかり押し倒されてしまった。
 バルトロメイとフィリプがいなかったなら、今ごろ山賊たちの餌食になっていただろう。

 だからと言って、戦闘中に砂を目くらましに使うのが卑怯だとは思わない。
 山賊たちがよく使う手だ。
 それへ咄嗟に反応できなかったレネが悪い。
 自業自得なのだ。

 バルトロメイはレネに剣を捧げているが、剣士としてのレネも尊重している。
 本当に危険が迫った時はさっきのように助けるが、それ以上は手を差し伸べない。

(——そんなの言い訳だ……)


 これ以上レネに近付いたら……自分自身が耐え切れなくなるからだ。
 自らの剣を捧げて、忠誠を誓ったと言うのに……目の前で怒りを噛み殺すレネを押し倒し、犯したくてたまらない。

「ほら、そこに水場があるから、目を洗って来いよ。砂が入ったままじゃ傷付くぞ」

 適当なことを言ってレネを自分から引き離し、バルトロメイは身体の中で暴れ回る獣を必死に押さえつけた。
 

 
 

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