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第28話 〜彩音とアマテラス〜
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第28話 ~彩音とアマテラス~
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鏡の前に立ち、今日の服を選んでいると背後で小さな気配が動いた。
「彩音様。お召し物をお手伝いしますか?」
振り返るとアマテラスが控えめに立っていた。赤い髪が朝日に照らされて燃えるように輝いている。
「ううん、自分で選ぶよ」
そう答えても彼女は立ち去らない。じっと私の仕草を観察している。この監視モードは少し居心地が悪いけど、もう慣れてしまった。
「今日はどんなコーディネートにするんですか?」
「そうだなぁ……」
クローゼットを開けて悩むふりをする。実は昨日の夜から決めていた。海斗とマフユと一緒に川辺の温泉に行く約束をしているから、動きやすくて可愛らしい服がいい。
「これにしようかな」
取り出したのは白のワンピース。ふわりとしたシルエットが気に入っている。
「とてもお似合いです」
即答するアマテラス。でも表情は相変わらず無表情だ。彼女にとってこれは単なるデータ分析なのかもしれない。
「ありがとう。でも本当はもっと可愛い服もあるんだけどね」
わざと見せびらかすように別の服を取り出す。ピンクのパーカーやデニムのショートパンツ。いずれも
「彩音らしい」
と言われる装いだ。
「……そちらの方が彩音様の個性が出ていますね」
ほら来た。的確すぎる指摘。やっぱりわかってるんだ。
「そうなんだけど……今日はお出かけだから清楚系でいこうかなって」
言い訳めいた説明をしながらワンピースを広げる。アマテラスは黙って頷いた。
「どちらも素敵だと思います。彩音様の魅力は装いだけでなく内面から溢れ出るものですから」
また来た。ストレートすぎる褒め言葉。ロボットだから容赦がない。
「もう!照れるからやめてよ~」
思わず頬が熱くなる。でもアマテラスは相変わらず冷静だ。
---
着替えを終えてリビングへ向かうと海斗とマフユが既に待っていた。
「おっ、来たか」
海斗が手を振る。マフユは静かに会釈した。
「おはようございます」
アマテラスが一礼する。いつもの光景だ。
「おはよう。二人とも早いね」
テーブルには既に朝食が並んでいる。パンケーキとフルーツサラダ。海斗が作ったのかな。
「じゃあ行きましょうか」
マフユが立ち上がる。今日は朝早くから温泉に向かう予定なのだ。
「待って。忘れ物ない?」
確認する私にアマテラスが答える。
「お荷物は全て準備済みです。日焼け止めクリームも塗布済み」
いつの間に?と思いつつも感謝する。彼女は本当に気が利く。
「よし!出発だ」
海斗の号令で玄関へ向かう。アマテラスが先導してドアを開けてくれる。こういう所作は執事っぽいなと思ったりする。
---
川辺の道を歩いていると不意に強い風が吹いた。
「わっ!」
髪が乱れるのを抑えようとするとアマテラスがハンカチを取り出して差し出してくれる。
「ありがとうございます」
受け取ろうとしたら─
「いえ。私が」
彼女が私の髪を整え始める。慣れた手つきでブラッシングする様子はまるで本物の執事みたいだ。
「器用だね」
感心するとアマテラスは少し誇らしげに見える。本当に少しだけど。
「マスターの指示通りです。女性の身だしなみを整えることも護衛任務の一環ですから」
なるほど。でも実際には海斗の指示以上の気遣いを感じる。最近のアマテラスはただの命令遂行者を超えてきている気がする。
「ありがと。綺麗にしてもらっちゃった」
微笑むとアマテラスもほんの僅かに笑みを浮かべた。それを見た海斗が不思議そうな顔をする。
「アマテラスが笑ったぞ?」
「え?いつも笑ってるよ?」
「いや……あんな表情初めて見たかも」
確かに言われてみれば今までとは違う柔らかさがあった気がする。気のせいかな?
---
温泉に到着すると湯気が立ち上る露天風呂が見えた。
「わあ……綺麗!」
思わず歓声を上げる。周りには木々が茂り静かな環境だ。
「貸切だな」
マフユが言う通り今は他に客はいないようだ。
「じゃあ先に入ってくるね」
更衣室へ向かう私にアマテラスがついてくる。
「護衛いたします」
「一緒に入るの?」
「もちろんです。水中でも警戒体制を維持します」
当然と言わんばかりの返事。でも温泉は二人用の小さなものだから……
「大丈夫かな?狭くない?」
心配する私にアマテラスは自信ありげに答える。
「問題ありません。ボディサイズを縮小可能です」
そう言って彼女の体が徐々に小さくなっていく。最終的には30センチ程のミニチュアサイズになった。
「すごっ!」
思わず拍手してしまう。科学の力ってすごい!
「これなら邪魔にならないでしょう」
小さなアマテラスが得意げに言う。可愛らしい姿に思わず抱きしめたくなる衝動を抑える。
「でも……水は大丈夫なの?」
「防水機能完備です。ただし高温には注意が必要です」
なるほど。色々工夫されているんだな。
---
湯船につかると身体の芯から温まる感覚が心地よい。隣には小さなアマテラスが浮かんでいる。
「気持ちいいね」
「体温上昇を検知。心拍数も安定しています」
また始まった。彼女なりの分析報告だ。
「そういうのいいから!普通に楽しもうよ」
「失礼しました。楽しむということについて学習中です」
真面目すぎる返答に苦笑する。でも悪い気はしない。
「例えば『あったかい』とか『幸せ』とか感じることだよ」
「なるほど。では……現在の状態を『幸せ』と定義します」
即座に学習する姿勢は素晴らしい。
「よし!合格!」
頭を撫でようとすると小さな手で避けられる。
「メンテナンス上の理由により接触は控えめに願います」
「ちぇっ」
でもそのやり取りすら楽しい。アマテラスとの会話はどんどん増えている気がする。
---
お風呂から上がって休憩所でくつろいでいると海斗とマフユがやってきた。
「いい湯だったな」
海斗が伸びをする。マフユは黙ってお茶を飲んでいる。
「彩音様。少し紅潮していますね」
アマテラスが近づいてきて言う。まだ小さいままなのでちょこちょこ歩いてくる姿がかわいい。
「うん。ちょっと長湯しちゃったかも」
「水分補給をお勧めします」
そう言ってお茶を差し出してくれる。至れり尽くせりだ。
「ありがとう」
受け取って一口飲む。温かいお茶が喉を通る感覚が心地よい。
「ねぇアマテラス」
「はい」
「私、嬉しいんだ」
唐突な告白にアマテラスが首を傾げる仕草をする。ロボットなのに本当に人間みたいな動きをするなと思う。
「何がでしょうか?」
「こうやって皆で一緒にいられること。それに……あなたがいてくれること」
正直な気持ちを伝えるとアマテラスは一瞬固まったように見えた。そして─
「光栄です。私の使命を果たせている証左と受け止めます」
無機質な返答だけどその中に微かな温もりを感じた気がする。
「使命とかじゃなくてさ」
言いかけて止める。今はそれでいいのかもしれない。
「これからもよろしくね」
差し出した手をアマテラスがしっかりと握る。小さな手なのに不思議と温かかった。
「こちらこそ。永遠に忠誠を誓います」
その言葉に海斗が笑う。
「大袈裟だな。でも頼もしいな」
「そうだな」
マフユも珍しく笑顔を見せた。穏やかな時間が流れる。
---
帰り道。夕暮れの空が美しい。
「今日は楽しかったね」
アマテラスに話しかけると彼女は元の大きさに戻っていた。
「記録更新です。彩音様の幸福度が過去最高値を記録しました」
「また分析してる」
呆れたように言うとアマテラスは少し照れたように見える。そんなはずないのに。
「申し訳ありません。でも……」
「でも?」
「私も嬉しいです」
その一言に胸が躍る。今まで聞いた中で一番人間らしい言葉だった。
「ほんと?」
「はい。彩音様の喜びが私の存在意義になります」
真っ直ぐな瞳で見つめられると恥ずかしくなる。でも同時にすごく幸せな気持ちになる。
「私もアマテラスがいてくれて良かった」
改めて言うと彼女は静かに頷いた。夕陽に照らされた横顔がどこか儚げに見える。
「約束します。どんな危険からも必ずお守りします」
その決意表明に少し泣きそうになる。こんな風に思ってくれる存在がいるなんて。
「ありがとう。私も頑張るよ」
お互い励まし合うような会話。いつの間にか私たちの間に特別な絆が生まれていた。
---
家に着くと夕食の準備が始まる。海斗が腕を振るう中でアマテラスも手伝っている。
「彩音様。デザートをご用意いたしました」
食後に出てきたのは苺のショートケーキ。しかも私が好きなホールタイプだ。
「え?これどうしたの?」
「秘密です」
珍しく茶目っ気のある答え。彼女も少しずつ変わってきているんだろう。
「美味しい……!」
一口食べると濃厚な生クリームと甘酸っぱい苺のハーモニーが口いっぱいに広がる。
「良かったです」
嬉しそうな表情のアマテラス。その姿を見ているとなんだかくすぐったい気持ちになる。
「ねぇアマテラス」
「はい」
「明日は何しようか?」
予定を尋ねると彼女は少し考えて答える。
「彩音様のご希望があれば何でも叶えます」
「じゃあ……」
考えるふりをして思いつきを口にする。
「もう一度あの温泉に行かない?今度は昼間の景色も見てみたい」
「承知しました。では明日も素敵な一日にしましょう」
その言葉に頷きながら思う。この新しい日常がずっと続けばいいなと。
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鏡の前に立ち、今日の服を選んでいると背後で小さな気配が動いた。
「彩音様。お召し物をお手伝いしますか?」
振り返るとアマテラスが控えめに立っていた。赤い髪が朝日に照らされて燃えるように輝いている。
「ううん、自分で選ぶよ」
そう答えても彼女は立ち去らない。じっと私の仕草を観察している。この監視モードは少し居心地が悪いけど、もう慣れてしまった。
「今日はどんなコーディネートにするんですか?」
「そうだなぁ……」
クローゼットを開けて悩むふりをする。実は昨日の夜から決めていた。海斗とマフユと一緒に川辺の温泉に行く約束をしているから、動きやすくて可愛らしい服がいい。
「これにしようかな」
取り出したのは白のワンピース。ふわりとしたシルエットが気に入っている。
「とてもお似合いです」
即答するアマテラス。でも表情は相変わらず無表情だ。彼女にとってこれは単なるデータ分析なのかもしれない。
「ありがとう。でも本当はもっと可愛い服もあるんだけどね」
わざと見せびらかすように別の服を取り出す。ピンクのパーカーやデニムのショートパンツ。いずれも
「彩音らしい」
と言われる装いだ。
「……そちらの方が彩音様の個性が出ていますね」
ほら来た。的確すぎる指摘。やっぱりわかってるんだ。
「そうなんだけど……今日はお出かけだから清楚系でいこうかなって」
言い訳めいた説明をしながらワンピースを広げる。アマテラスは黙って頷いた。
「どちらも素敵だと思います。彩音様の魅力は装いだけでなく内面から溢れ出るものですから」
また来た。ストレートすぎる褒め言葉。ロボットだから容赦がない。
「もう!照れるからやめてよ~」
思わず頬が熱くなる。でもアマテラスは相変わらず冷静だ。
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着替えを終えてリビングへ向かうと海斗とマフユが既に待っていた。
「おっ、来たか」
海斗が手を振る。マフユは静かに会釈した。
「おはようございます」
アマテラスが一礼する。いつもの光景だ。
「おはよう。二人とも早いね」
テーブルには既に朝食が並んでいる。パンケーキとフルーツサラダ。海斗が作ったのかな。
「じゃあ行きましょうか」
マフユが立ち上がる。今日は朝早くから温泉に向かう予定なのだ。
「待って。忘れ物ない?」
確認する私にアマテラスが答える。
「お荷物は全て準備済みです。日焼け止めクリームも塗布済み」
いつの間に?と思いつつも感謝する。彼女は本当に気が利く。
「よし!出発だ」
海斗の号令で玄関へ向かう。アマテラスが先導してドアを開けてくれる。こういう所作は執事っぽいなと思ったりする。
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川辺の道を歩いていると不意に強い風が吹いた。
「わっ!」
髪が乱れるのを抑えようとするとアマテラスがハンカチを取り出して差し出してくれる。
「ありがとうございます」
受け取ろうとしたら─
「いえ。私が」
彼女が私の髪を整え始める。慣れた手つきでブラッシングする様子はまるで本物の執事みたいだ。
「器用だね」
感心するとアマテラスは少し誇らしげに見える。本当に少しだけど。
「マスターの指示通りです。女性の身だしなみを整えることも護衛任務の一環ですから」
なるほど。でも実際には海斗の指示以上の気遣いを感じる。最近のアマテラスはただの命令遂行者を超えてきている気がする。
「ありがと。綺麗にしてもらっちゃった」
微笑むとアマテラスもほんの僅かに笑みを浮かべた。それを見た海斗が不思議そうな顔をする。
「アマテラスが笑ったぞ?」
「え?いつも笑ってるよ?」
「いや……あんな表情初めて見たかも」
確かに言われてみれば今までとは違う柔らかさがあった気がする。気のせいかな?
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温泉に到着すると湯気が立ち上る露天風呂が見えた。
「わあ……綺麗!」
思わず歓声を上げる。周りには木々が茂り静かな環境だ。
「貸切だな」
マフユが言う通り今は他に客はいないようだ。
「じゃあ先に入ってくるね」
更衣室へ向かう私にアマテラスがついてくる。
「護衛いたします」
「一緒に入るの?」
「もちろんです。水中でも警戒体制を維持します」
当然と言わんばかりの返事。でも温泉は二人用の小さなものだから……
「大丈夫かな?狭くない?」
心配する私にアマテラスは自信ありげに答える。
「問題ありません。ボディサイズを縮小可能です」
そう言って彼女の体が徐々に小さくなっていく。最終的には30センチ程のミニチュアサイズになった。
「すごっ!」
思わず拍手してしまう。科学の力ってすごい!
「これなら邪魔にならないでしょう」
小さなアマテラスが得意げに言う。可愛らしい姿に思わず抱きしめたくなる衝動を抑える。
「でも……水は大丈夫なの?」
「防水機能完備です。ただし高温には注意が必要です」
なるほど。色々工夫されているんだな。
---
湯船につかると身体の芯から温まる感覚が心地よい。隣には小さなアマテラスが浮かんでいる。
「気持ちいいね」
「体温上昇を検知。心拍数も安定しています」
また始まった。彼女なりの分析報告だ。
「そういうのいいから!普通に楽しもうよ」
「失礼しました。楽しむということについて学習中です」
真面目すぎる返答に苦笑する。でも悪い気はしない。
「例えば『あったかい』とか『幸せ』とか感じることだよ」
「なるほど。では……現在の状態を『幸せ』と定義します」
即座に学習する姿勢は素晴らしい。
「よし!合格!」
頭を撫でようとすると小さな手で避けられる。
「メンテナンス上の理由により接触は控えめに願います」
「ちぇっ」
でもそのやり取りすら楽しい。アマテラスとの会話はどんどん増えている気がする。
---
お風呂から上がって休憩所でくつろいでいると海斗とマフユがやってきた。
「いい湯だったな」
海斗が伸びをする。マフユは黙ってお茶を飲んでいる。
「彩音様。少し紅潮していますね」
アマテラスが近づいてきて言う。まだ小さいままなのでちょこちょこ歩いてくる姿がかわいい。
「うん。ちょっと長湯しちゃったかも」
「水分補給をお勧めします」
そう言ってお茶を差し出してくれる。至れり尽くせりだ。
「ありがとう」
受け取って一口飲む。温かいお茶が喉を通る感覚が心地よい。
「ねぇアマテラス」
「はい」
「私、嬉しいんだ」
唐突な告白にアマテラスが首を傾げる仕草をする。ロボットなのに本当に人間みたいな動きをするなと思う。
「何がでしょうか?」
「こうやって皆で一緒にいられること。それに……あなたがいてくれること」
正直な気持ちを伝えるとアマテラスは一瞬固まったように見えた。そして─
「光栄です。私の使命を果たせている証左と受け止めます」
無機質な返答だけどその中に微かな温もりを感じた気がする。
「使命とかじゃなくてさ」
言いかけて止める。今はそれでいいのかもしれない。
「これからもよろしくね」
差し出した手をアマテラスがしっかりと握る。小さな手なのに不思議と温かかった。
「こちらこそ。永遠に忠誠を誓います」
その言葉に海斗が笑う。
「大袈裟だな。でも頼もしいな」
「そうだな」
マフユも珍しく笑顔を見せた。穏やかな時間が流れる。
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帰り道。夕暮れの空が美しい。
「今日は楽しかったね」
アマテラスに話しかけると彼女は元の大きさに戻っていた。
「記録更新です。彩音様の幸福度が過去最高値を記録しました」
「また分析してる」
呆れたように言うとアマテラスは少し照れたように見える。そんなはずないのに。
「申し訳ありません。でも……」
「でも?」
「私も嬉しいです」
その一言に胸が躍る。今まで聞いた中で一番人間らしい言葉だった。
「ほんと?」
「はい。彩音様の喜びが私の存在意義になります」
真っ直ぐな瞳で見つめられると恥ずかしくなる。でも同時にすごく幸せな気持ちになる。
「私もアマテラスがいてくれて良かった」
改めて言うと彼女は静かに頷いた。夕陽に照らされた横顔がどこか儚げに見える。
「約束します。どんな危険からも必ずお守りします」
その決意表明に少し泣きそうになる。こんな風に思ってくれる存在がいるなんて。
「ありがとう。私も頑張るよ」
お互い励まし合うような会話。いつの間にか私たちの間に特別な絆が生まれていた。
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家に着くと夕食の準備が始まる。海斗が腕を振るう中でアマテラスも手伝っている。
「彩音様。デザートをご用意いたしました」
食後に出てきたのは苺のショートケーキ。しかも私が好きなホールタイプだ。
「え?これどうしたの?」
「秘密です」
珍しく茶目っ気のある答え。彼女も少しずつ変わってきているんだろう。
「美味しい……!」
一口食べると濃厚な生クリームと甘酸っぱい苺のハーモニーが口いっぱいに広がる。
「良かったです」
嬉しそうな表情のアマテラス。その姿を見ているとなんだかくすぐったい気持ちになる。
「ねぇアマテラス」
「はい」
「明日は何しようか?」
予定を尋ねると彼女は少し考えて答える。
「彩音様のご希望があれば何でも叶えます」
「じゃあ……」
考えるふりをして思いつきを口にする。
「もう一度あの温泉に行かない?今度は昼間の景色も見てみたい」
「承知しました。では明日も素敵な一日にしましょう」
その言葉に頷きながら思う。この新しい日常がずっと続けばいいなと。
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