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メッセージ2
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「あの子の息子は発見したときには手遅れだったのだけど、母親はあの子の心臓を使えば助けることは出来た。 でも、あの子はそれをしなかった」
その惨劇を想像しただけで頭が真っ白になって吐き気がする。
「二度も目の前で大切な人をなくす選択は出来なかったのね、まぁ、一度目とは随分状況も違っていたけれど。
母親は目の前で子供を殺されて絶望の中にいた、それを命を掛けて救ってもさらに苦しい思いをさせる事になる。
そう思って助けたくても助けられなかったでしょう」
話についていけていない私を引っ張るように語り続ける。
「貴女ならきっと乗り越えてくれる、そう思って助けたはずよ。 実際、貴女はここまで来たわ」
確かに私はここまで来たけど、ノイマンが死んでかなり落ち込んだし。
半年くらいは旅に出てすぐの湖でひたすら水に潜ってノイマンの事を考えないようにしてた。
立ち直れたのは、、、
「ノイマンがどんな人か、彼の足跡を辿るっていう目的があったからかもしれませんね」
でも、私がノイマンの奥さんの立場だったら立ち直れなかった気がする。
「目的や目標があれば、人はまた立ち上がれるものね。 さて、実はノイマンのメッセージはまだ続きがあるの。 続きと言うより貴女へのメッセージの前に私宛のメッセージがあったんだけど、聞いてもらえるかしら」
それって私が聞いていいんだろうか?
「はい」
私の返事を聞くとロザリンドさんは手の平を上に向けてまたさっきの光の玉を浮かび上がらせた。
「姉さん、久しぶりだな。 先に謝る、すまない。 ある女性を助けるために核コアを渡すことにした。
厳密にはもう渡しちまったんだが・・・
だから、あまり時間がない。
彼女には心現術の天賦の才がある。 もし、彼女がここへたどり着けば相当な使い手になっている筈だ。 出来れば巻き込まずにまた王都の外へ旅立ってほしいもんだが・・・
俺が死んだせいで魔王の封印が解けそうになってた場合、それを知れば彼女は戦う選択肢を取るかもしれない。 その時のために彼女に王都の魔法陣に入った瞬間に発現するように紋章を打ち込んでおいた。 金竜の紋章だ。 心現術の才能と俺の核コア、それに紋章の後押しがあれば間違いなく俺よりは強くなるだろう。 それこそ、魔王にも及ぶほどに。 すまない姉さん、結局俺は魔王と敵対せずに王都を救う方法は見つけることが出来なかった。 先に死んじまって悪いな。出来ればアリスを巻き込まないでやってくれ。 それから、今から彼女へのメッセージも残しておく。 もし、会うことがあれば聞かせてやってほしい。 姉さん宛のメッセージは飛ばしてな」
声が途切れた、ロザリンドさんへのメッセージも長いとは言えないものだった。
ノイマンらしいと言えばそうかもしれない。 お喋りって感じじゃなかったもんな。
「魔王の封印は解けそうなんですか?」
最初に浮かんだ疑問はそれだった。
私の問いにロザリンドさんは苦笑を浮かべた。
「封印は私たち姉弟が死ぬと解ける、私達を創った賢者様はそう言っていたけど、一番重要だったのはノイマンね。 あの子は賢者様が最後に造り上げた人造人間ホムンクルスで最高傑作だったわ、あの子が魔王の封印に大きな役割を果たしていたのは間違いないわね。 実際、あの子が死んで楔くさびに大きな亀裂が走ったわ」
あまりの事実に言葉を失った、、、
「そんな、じゃあ、何故ノイマンは死を選んだんです!?」
ここの人達を見捨てる程に、そんなに生きることが辛かったんだろうか?
「死を選んだんじゃないわ、あの子は貴女を生かすことを選んだのよ」
ロザリンドさんは優しく微笑む。
「・・・私に何か出来ることは?」
「それは・・・ ノイマンのメッセージにあったわ、貴女は貴方の旅を続けなさい」
そんなこと言われても・・・
「私の旅は王都へ来ることでした、その目的は果たせました。 こんな話を聞いた以上、じゃあサヨナラと出ていけません。 私にも戦わせてください」
「ノイマンはそれを望んではいないわ」
「ここには友人も出来ました、戦う理由はノイマンだけでもありません。 友人の為にも、戦います」
「それならあの子もなにも言えないわね、それに、こうなることを見越したように紋章まで刻んでいたんだから。 戦わせたくはないけど貴女が戦う事は分かっていたってとこかしら」
・・・
私はノイマンから見てそんなに好戦的だったんだろうか?
いや、そういうことじゃないだろう。
無いはずだ。
ん?
「戦うというのは王都を取り囲んでいる魔族達ですよね? ロザリンドさんがいる限りは魔王が復活することは無いわけですから」
「それが、少し事情が変わってきているのよ。 あの子がいなくなってから分かったことなんだけど、ノイマンの子供を殺した王子は魔王に操られていたようなの」
「えっ⁉ どういうことですか? 魔王は封印されているんじゃ?」
「恐らくだけど、私達は元は三人兄弟だったんだけど、私の上の兄はもう死んでしまっているの。 100年以上前にね、その頃から少しずつ魔王の封印が弱まっていってるんじゃないかしら」
「ノイマンはその事は?」
「知らないはずよ、教えようにも何処にいるかも分からなかったしね。 一番重要だったあの子が死んでしまったからこの先も封印が続いてくれるとは限らないわね、でも、もしかしたら貴女が王都へ来たことでまた封印に影響があるかも知れないわね。 ちょっとついてきてもらえるかしら」
ロザリンドさんが立ち上がる。
「どこへですか?」
「魔王の封印されている封印の間へ案内するわ」
ロザリンドさんはそう言ってドアノブに手をかけた。
その惨劇を想像しただけで頭が真っ白になって吐き気がする。
「二度も目の前で大切な人をなくす選択は出来なかったのね、まぁ、一度目とは随分状況も違っていたけれど。
母親は目の前で子供を殺されて絶望の中にいた、それを命を掛けて救ってもさらに苦しい思いをさせる事になる。
そう思って助けたくても助けられなかったでしょう」
話についていけていない私を引っ張るように語り続ける。
「貴女ならきっと乗り越えてくれる、そう思って助けたはずよ。 実際、貴女はここまで来たわ」
確かに私はここまで来たけど、ノイマンが死んでかなり落ち込んだし。
半年くらいは旅に出てすぐの湖でひたすら水に潜ってノイマンの事を考えないようにしてた。
立ち直れたのは、、、
「ノイマンがどんな人か、彼の足跡を辿るっていう目的があったからかもしれませんね」
でも、私がノイマンの奥さんの立場だったら立ち直れなかった気がする。
「目的や目標があれば、人はまた立ち上がれるものね。 さて、実はノイマンのメッセージはまだ続きがあるの。 続きと言うより貴女へのメッセージの前に私宛のメッセージがあったんだけど、聞いてもらえるかしら」
それって私が聞いていいんだろうか?
「はい」
私の返事を聞くとロザリンドさんは手の平を上に向けてまたさっきの光の玉を浮かび上がらせた。
「姉さん、久しぶりだな。 先に謝る、すまない。 ある女性を助けるために核コアを渡すことにした。
厳密にはもう渡しちまったんだが・・・
だから、あまり時間がない。
彼女には心現術の天賦の才がある。 もし、彼女がここへたどり着けば相当な使い手になっている筈だ。 出来れば巻き込まずにまた王都の外へ旅立ってほしいもんだが・・・
俺が死んだせいで魔王の封印が解けそうになってた場合、それを知れば彼女は戦う選択肢を取るかもしれない。 その時のために彼女に王都の魔法陣に入った瞬間に発現するように紋章を打ち込んでおいた。 金竜の紋章だ。 心現術の才能と俺の核コア、それに紋章の後押しがあれば間違いなく俺よりは強くなるだろう。 それこそ、魔王にも及ぶほどに。 すまない姉さん、結局俺は魔王と敵対せずに王都を救う方法は見つけることが出来なかった。 先に死んじまって悪いな。出来ればアリスを巻き込まないでやってくれ。 それから、今から彼女へのメッセージも残しておく。 もし、会うことがあれば聞かせてやってほしい。 姉さん宛のメッセージは飛ばしてな」
声が途切れた、ロザリンドさんへのメッセージも長いとは言えないものだった。
ノイマンらしいと言えばそうかもしれない。 お喋りって感じじゃなかったもんな。
「魔王の封印は解けそうなんですか?」
最初に浮かんだ疑問はそれだった。
私の問いにロザリンドさんは苦笑を浮かべた。
「封印は私たち姉弟が死ぬと解ける、私達を創った賢者様はそう言っていたけど、一番重要だったのはノイマンね。 あの子は賢者様が最後に造り上げた人造人間ホムンクルスで最高傑作だったわ、あの子が魔王の封印に大きな役割を果たしていたのは間違いないわね。 実際、あの子が死んで楔くさびに大きな亀裂が走ったわ」
あまりの事実に言葉を失った、、、
「そんな、じゃあ、何故ノイマンは死を選んだんです!?」
ここの人達を見捨てる程に、そんなに生きることが辛かったんだろうか?
「死を選んだんじゃないわ、あの子は貴女を生かすことを選んだのよ」
ロザリンドさんは優しく微笑む。
「・・・私に何か出来ることは?」
「それは・・・ ノイマンのメッセージにあったわ、貴女は貴方の旅を続けなさい」
そんなこと言われても・・・
「私の旅は王都へ来ることでした、その目的は果たせました。 こんな話を聞いた以上、じゃあサヨナラと出ていけません。 私にも戦わせてください」
「ノイマンはそれを望んではいないわ」
「ここには友人も出来ました、戦う理由はノイマンだけでもありません。 友人の為にも、戦います」
「それならあの子もなにも言えないわね、それに、こうなることを見越したように紋章まで刻んでいたんだから。 戦わせたくはないけど貴女が戦う事は分かっていたってとこかしら」
・・・
私はノイマンから見てそんなに好戦的だったんだろうか?
いや、そういうことじゃないだろう。
無いはずだ。
ん?
「戦うというのは王都を取り囲んでいる魔族達ですよね? ロザリンドさんがいる限りは魔王が復活することは無いわけですから」
「それが、少し事情が変わってきているのよ。 あの子がいなくなってから分かったことなんだけど、ノイマンの子供を殺した王子は魔王に操られていたようなの」
「えっ⁉ どういうことですか? 魔王は封印されているんじゃ?」
「恐らくだけど、私達は元は三人兄弟だったんだけど、私の上の兄はもう死んでしまっているの。 100年以上前にね、その頃から少しずつ魔王の封印が弱まっていってるんじゃないかしら」
「ノイマンはその事は?」
「知らないはずよ、教えようにも何処にいるかも分からなかったしね。 一番重要だったあの子が死んでしまったからこの先も封印が続いてくれるとは限らないわね、でも、もしかしたら貴女が王都へ来たことでまた封印に影響があるかも知れないわね。 ちょっとついてきてもらえるかしら」
ロザリンドさんが立ち上がる。
「どこへですか?」
「魔王の封印されている封印の間へ案内するわ」
ロザリンドさんはそう言ってドアノブに手をかけた。
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