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29話〜迷宮の草原
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「凄いな、レッドドラゴンの砦にも驚いたが。 これはあそこ以上に空が本物のようだ」
「ほんとだね、こりゃ驚きだ」
ロゼとバーンダーバは迷宮の中だというのに上空に広がる蒼い空を見上げて息を呑んでいる。
「実際に雨が降るときもある、さぁ、進もう。 バン、一番魔物が多いのはどっちだ?」
聞かれてバーンダーバは周りをぐるりと見回して1つの方向に指をさした。
「あっちだな」
セルカがその方向へと歩き始める。
「こんなに広い草原の中をなにを頼りに進むんですか?」
フェイがセルカの後に続きながら疑問を口にする。
「魔物だ、全部の階層にセーフポイントがある。 そんで、セーフポイントの周りが一番魔物が多いんだ」
セルカはマッピングしながらフェイの問いに答える。
進みながらバーンダーバの矢が前方にヒュンヒュンと飛んでいく。
一矢一殺で魔物を確実に仕留めるバーンダーバの矢にもセルカはだんだん慣れてきた。
最初こそ驚いていたがもう何も言わなくなった。
「ちょっと、アタイも暇だから体を動かしたいよ! バン、アンタはちょっと休んでな」
ロゼがバンに言ってセルカの前に出る、前方からは巨大な棍棒を手に持った身の丈3メートルはありそうな大鬼が4体。
その巨体は歩く度にズシンズシンと大地を揺らしている。
こちらに気付いた先頭を歩くオーガが「ゴアァァァ」っと雄叫びを上げて走ってくる!
ロゼは剣を抜くこともなく向かってくるオーガの方にゆっくりと歩いていく。
「おい、大丈夫なのか? オーガは軽くAランクの魔物だぞ!」
動揺することなく見守るバーンダーバにセルカが焦ったように喋る。
ロゼに肉薄したオーガが巨大な棍棒を振り上げる!
棍棒を振り上げるオーガに向かってロゼが手を振るとオーガの体が一瞬で引き裂かれた!
「んなっ!」
セルカが叫ぶ。
他の3体のオーガもロゼが手を振るたびに肉塊に変わった。
「剣使わねーのかよ! ってかなんでオーガの堅い表皮が布の服みたいに千切れたんだ!?」
最早怒ったようにセルカが言う。
フェイもセルカの横でひきつった顔になっていた。
バラバラになったオーガは煙のように消えてそこには角と皮だけが残った。
「ふん、脆い連中だね。 準備運動にもなりゃしないよ」
手についた血をピッピッと振り払いながらロゼはつまらなそうに鼻を鳴らす。
「なぁ、いったいなんレベルなんだ?」
戻ってきたロゼにセルカが聞いた。
「レベル? あぁ、このプレートに書いてある数字かい? 確か90って書いてたね」
「90!? 馬鹿な! そんなの、歴史上の勇者だって到達したのを聞いたことないぞ!」
驚愕の表情でセルカが言う。
「また来たぞ、ロゼ」
ロゼの後ろからオーガが5体、雄叫びを上げて向かってきた。
「もういーや、後はバンに頼むよ」
その言葉を聞いたバーンダーバは弓を構えて射ると同時に5本の矢が飛び、オーガの頭を一斉に射抜いた。
5体のオーガは同時にズシンと倒れる。
「こんなに楽な迷宮攻略は初めてだな」
それを見たセルカが呟く。
「バン、アンタはいったいなんレベルなんだ?」
「私は魔族との混血のせいで冒険者プレートが正常に反応しないようでな、666と表示されているんだ」
「ぶっ! なんだよソレ! ぶっ飛びすぎだろ! フェイはどうなんだ? 聖剣持ってるくらいだからすごいんだろ?」
「私は低いですよ、12です。 でも、随分前に測ったから上がってるかも知れませんね」
そう言ってフェイは胸元から冒険者プレートを取り出して魔力を流し込む。
「えぇっ!?」
ソレを見たフェイがおかしな悲鳴を上げる。
「どうした?」
バーンダーバがフェイの肩越しに冒険者プレートを覗く、そこにはレベル28と刻まれていた。
「なんでこんなにレベルが?」
フェイが呟く、セルカとロゼもフェイの冒険者プレートを見る。
「凄いな! こんな高レベルも中々見ない! 俺が今まで見た中で1番高かったのは24だったかな。 28ならBクラスの上位冒険者じゃないか!」
ソレを見たセルカが興奮して声を上げた。
「アタイの加護を受けたわりにはショボいね」
セルカとは対照的な反応をロゼが示す。
「嫌々、90ってのがぶっ飛びすぎなだけだろ」
『それに、フェイには我もいるからな。 我が強化すればこの数字以上の力が出せるはずだ』
「にしても、アタイの加護は闘争を司る物だからねぇ。 それを思えばやっぱり相当ショボいね」
ロゼの言葉にフェイが少し鋭い目を向ける。
「ロゼさん、そんなにショボいって言わないでくださいよ」
「元が弱いからだろうね、ま、お喋りな聖剣もついてるし、レベルがショボくても」
「もうっ!ロゼさん、そんなにショボいショボいって言わないでくださいってば!」
珍しくフェイが不機嫌な顔になる。
その目にはうっすら涙が浮かんでいた。
「私だって、アルセンの旅について行きたくて頑張って強くなろうとしたんですよ、それでも、全然強くなれなかったんです。 自分が戦いに向いてないなんて言われなくても知ってますよ」
フェイの顔を見てロゼがバツの悪そうな顔になる。
「あー、悪かったよ、フェイ」
「いいんです、すみません、気にしないでください」
「フェイ、なにも強くないといけない訳では無い。 私はフェイを頼りにしている」
「・・・ ありがとうございます」
バーンダーバの言葉にフェイは小さく返事を返した。
「ほんとだね、こりゃ驚きだ」
ロゼとバーンダーバは迷宮の中だというのに上空に広がる蒼い空を見上げて息を呑んでいる。
「実際に雨が降るときもある、さぁ、進もう。 バン、一番魔物が多いのはどっちだ?」
聞かれてバーンダーバは周りをぐるりと見回して1つの方向に指をさした。
「あっちだな」
セルカがその方向へと歩き始める。
「こんなに広い草原の中をなにを頼りに進むんですか?」
フェイがセルカの後に続きながら疑問を口にする。
「魔物だ、全部の階層にセーフポイントがある。 そんで、セーフポイントの周りが一番魔物が多いんだ」
セルカはマッピングしながらフェイの問いに答える。
進みながらバーンダーバの矢が前方にヒュンヒュンと飛んでいく。
一矢一殺で魔物を確実に仕留めるバーンダーバの矢にもセルカはだんだん慣れてきた。
最初こそ驚いていたがもう何も言わなくなった。
「ちょっと、アタイも暇だから体を動かしたいよ! バン、アンタはちょっと休んでな」
ロゼがバンに言ってセルカの前に出る、前方からは巨大な棍棒を手に持った身の丈3メートルはありそうな大鬼が4体。
その巨体は歩く度にズシンズシンと大地を揺らしている。
こちらに気付いた先頭を歩くオーガが「ゴアァァァ」っと雄叫びを上げて走ってくる!
ロゼは剣を抜くこともなく向かってくるオーガの方にゆっくりと歩いていく。
「おい、大丈夫なのか? オーガは軽くAランクの魔物だぞ!」
動揺することなく見守るバーンダーバにセルカが焦ったように喋る。
ロゼに肉薄したオーガが巨大な棍棒を振り上げる!
棍棒を振り上げるオーガに向かってロゼが手を振るとオーガの体が一瞬で引き裂かれた!
「んなっ!」
セルカが叫ぶ。
他の3体のオーガもロゼが手を振るたびに肉塊に変わった。
「剣使わねーのかよ! ってかなんでオーガの堅い表皮が布の服みたいに千切れたんだ!?」
最早怒ったようにセルカが言う。
フェイもセルカの横でひきつった顔になっていた。
バラバラになったオーガは煙のように消えてそこには角と皮だけが残った。
「ふん、脆い連中だね。 準備運動にもなりゃしないよ」
手についた血をピッピッと振り払いながらロゼはつまらなそうに鼻を鳴らす。
「なぁ、いったいなんレベルなんだ?」
戻ってきたロゼにセルカが聞いた。
「レベル? あぁ、このプレートに書いてある数字かい? 確か90って書いてたね」
「90!? 馬鹿な! そんなの、歴史上の勇者だって到達したのを聞いたことないぞ!」
驚愕の表情でセルカが言う。
「また来たぞ、ロゼ」
ロゼの後ろからオーガが5体、雄叫びを上げて向かってきた。
「もういーや、後はバンに頼むよ」
その言葉を聞いたバーンダーバは弓を構えて射ると同時に5本の矢が飛び、オーガの頭を一斉に射抜いた。
5体のオーガは同時にズシンと倒れる。
「こんなに楽な迷宮攻略は初めてだな」
それを見たセルカが呟く。
「バン、アンタはいったいなんレベルなんだ?」
「私は魔族との混血のせいで冒険者プレートが正常に反応しないようでな、666と表示されているんだ」
「ぶっ! なんだよソレ! ぶっ飛びすぎだろ! フェイはどうなんだ? 聖剣持ってるくらいだからすごいんだろ?」
「私は低いですよ、12です。 でも、随分前に測ったから上がってるかも知れませんね」
そう言ってフェイは胸元から冒険者プレートを取り出して魔力を流し込む。
「えぇっ!?」
ソレを見たフェイがおかしな悲鳴を上げる。
「どうした?」
バーンダーバがフェイの肩越しに冒険者プレートを覗く、そこにはレベル28と刻まれていた。
「なんでこんなにレベルが?」
フェイが呟く、セルカとロゼもフェイの冒険者プレートを見る。
「凄いな! こんな高レベルも中々見ない! 俺が今まで見た中で1番高かったのは24だったかな。 28ならBクラスの上位冒険者じゃないか!」
ソレを見たセルカが興奮して声を上げた。
「アタイの加護を受けたわりにはショボいね」
セルカとは対照的な反応をロゼが示す。
「嫌々、90ってのがぶっ飛びすぎなだけだろ」
『それに、フェイには我もいるからな。 我が強化すればこの数字以上の力が出せるはずだ』
「にしても、アタイの加護は闘争を司る物だからねぇ。 それを思えばやっぱり相当ショボいね」
ロゼの言葉にフェイが少し鋭い目を向ける。
「ロゼさん、そんなにショボいって言わないでくださいよ」
「元が弱いからだろうね、ま、お喋りな聖剣もついてるし、レベルがショボくても」
「もうっ!ロゼさん、そんなにショボいショボいって言わないでくださいってば!」
珍しくフェイが不機嫌な顔になる。
その目にはうっすら涙が浮かんでいた。
「私だって、アルセンの旅について行きたくて頑張って強くなろうとしたんですよ、それでも、全然強くなれなかったんです。 自分が戦いに向いてないなんて言われなくても知ってますよ」
フェイの顔を見てロゼがバツの悪そうな顔になる。
「あー、悪かったよ、フェイ」
「いいんです、すみません、気にしないでください」
「フェイ、なにも強くないといけない訳では無い。 私はフェイを頼りにしている」
「・・・ ありがとうございます」
バーンダーバの言葉にフェイは小さく返事を返した。
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