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30話〜3階層

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フェイはその後、元気が無くなり俯くように一行の真ん中で黙々と歩いていた。

2階層の探索終え、セーフポイントに辿り着く。

「どうする? 俺もまさかここまで簡単に2階層を突破出来るとは思ってなかったからな。 今は迷宮に入ってから約12時間か、全員体力はどうだ?」

セルカが時計を見ながら全員に声を掛ける。

「私は大丈夫だ」

「アタイも、退屈なぐらいだね」

「私も大丈夫です」

「そうか、フェイ、確かに今回の攻略は俺でも楽に感じるくらいだ。 だけど、3階層からはきっとトラップも増えてくる。 今のフェイの状態を見てたら危なっかしい、今でもかなりのドロップアイテムが手に入った。 全部捌けば金貨で100枚は下らないと思う、1度戻ってもいいんじゃないか?」

集中力にかけたフェイを見てセルカが撤退を促した。

それを聞いたフェイがハッとした顔になる。

「すみません、ちょっと嫌な事を思い出してしまって。 もう大丈夫ですから!」

フェイは自分の頬をパシパシと叩いた。

「本当に大丈夫か? フェイ、セルカの言う通り、戻っても問題はないのだぞ」

バーンダーバが心配そうに声をかける。

「大丈夫です! すみません、絶対に邪魔にならないように気をつけますから」

フェイの言葉を聞いてセルカとバーンダーバが顔を見合わせる。

ロゼはフェイを見て少し心配そうな顔をする。

「分かった、それじゃあ、とりあえず1度、3階層に降りてみよう。 まぁ、元々が迷宮の雰囲気を味わいに来たんだしな。 見るだけ見て帰ってもいいし」

セルカが請け負った。

「では、出発しよう」

バーンダーバの言葉に全員が腰を上げてセーフポイントの中心にある転移の魔法陣に足を踏み入れた。

また体の引っ張られる感覚の後、一瞬で違う場所に立っていた。

先程の階層と違い、辺りが真っ暗だったのでフェムノが光を放つ。

照らし出されて周りを見ると正方形の広いフロアに通路が4つ、フロアの中には体調2m程の巨大な牙を生やした虎の様な魔物が3体、突然現れた4人を「ぐるる」という唸り声で出迎えた。

一瞬でバーンダーバの矢が虎のような魔物の眉間に突き刺さり、そこには骨と皮だけが残る。

「ハズレくじだな」

周りを見回して忌々しげにセルカが喋る。

「どういう場所なんだ?」

「ここは正方形のフロアがずっと繋がってるんだ、迷宮冒険者は《キューブ》って呼んでる。 マップ自体は単純なんだけどな、やたらに魔物とトラップが多いんだ」

セルカが喋っている間にも4つの通路から牛頭人間ミノタウロスさまよう鎧リビングアーマー歩く死体グール大飛び亀ジャンプタートル等が続々と部屋に入ってくる。

バーンダーバは四方から来る魔物を一瞬で仕留めていく。

「マジかよ、四天王でこんだけ強いのによく勇者は魔王を倒せたな・・・」

高い防御力と俊敏性を兼ね備えたジャンプタートルを俊敏性を発揮する間もなく高い防御力を備えた甲羅には一切触れずに柔い頭を正確に射抜く。

その他の魔物も全てがBクラス、あれだけ揃えばレベル30以上のAランクパーティでも苦戦するだろう。

「よし、先ずはあっちの通路に入ろう」

セルカが指さした先の通路に入っていく、通路を抜けるとそこも先程と同じ正方形の空間だった。

そこにもまた魔物がいた、リビングアーマー3体がこちらに気づく前にバーンダーバがまたも一瞬で仕留める。

「向かいの通路に入ろう、ずっと同じ方向の通路を行けばキューブは必ず端がある」

セルカはマッピングしながら向かいの通路を指さした。

同じように進んでいき、4つ目のフロアで向かいの通路が無くなった。

「ここで行き止まりか、よし、今度はあっちの端まで行こう」

セルカが入ってきた通路を背にして左側の通路を指さした。

「バン、私も戦いますから少し休んでいて下さい」

フェイがフェムノを背中から抜きながら言う。

「うむ、休まなくても問題は無いが・・・」

少し困惑気味にバーンダーバはフェイを見返した。

「いいですから、私も役にたちたいですし」

言いながらフェムノに魔力を流し込む、フェイの体が銀色の光に包まれた。

「灯りはどうするんだ?」

『心配ならこうしておこう』

フェムノから光の球が3つ浮かび上がりロゼ、バーンダーバ、セルカの頭上に浮かぶ。

『これで心配ないであろう?』

「あぁ、そうだな」

セルカが頭上の光を見て呆気に取られている。

「ありがとうフェムノ、さぁ、行きましょう」

フェイがセルカの後ろに立つ、セルカが歩き始めた。

通路を歩き始めるとすぐに通路の先にジャンプタートルが見えた、フェイが駆け出して一瞬で首をはねる。

「すっげぇ、なんかレベル以上に速くないか?」

「聖剣フェムノの強化魔法だ」

セルカの呟きにバーンダーバが答える。

「化け物揃いだな・・・」

次のフロアに出た瞬間、フェイが駆け出してフロアの魔物を斬り裂いていく。

右に左にブレるようなスピードで動いて瞬く間に魔物が霧散していく。

そして

天井に張り付いていた岩蜥蜴アースリザードを斬って着地した瞬間

床の転移魔法陣が発動してフェイの姿が消えた。
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