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46話〜作戦会議2
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「ここだな」
ずっと地図と睨めっこをしていたカルバンが一点を指さした。
ゲルハルトの話が終わった時、カルバンが「取り込み中悪いんだが、今はもっと性急な問題がある」と言ってまずは村を作る場所を何処にするかと皆で地図を眺めて考えていた。
そして熟考の後、カルバンの指が指し示していたのはダイナスバザールと荒野の間にある山脈の左端だった。
現在はゲルハルトを加えた勇者のケツを蹴れの面々と村人の中で体調の良さそうなカリフとコバン、それにアビーの母のシルビアを輪に入れてこれからを話し合っていた。
「ここなら、ここからもそう遠くない。 生活に必要な川と森もある。 ここに村を作ろう」
カルバンは頭上の空の様子を見てから村人を見る。
「今日は移動せずにここで夜を明かそう、まだ日は高いが、村人達はろくに飯も食ってなかったみたいだからな。 今日はしっかり食って休んで、移動は明日だ」
「この距離ならロゼだったら30分もかからないんじゃないか?」
地図を見てセルカが言う。
「ごめんだよ、アタイの最大サイズでも乗れんのは10人とか20人くらい。 アタイは馬じゃないんだ、何回も往復して運ぶなんて嫌だね。あるけんなら歩かしな」
ジト目でロゼがセルカを見る。
「それもそうだな、なんかごめんロゼ」
ロゼの言葉に確かに自分が失礼だったなとセルカは反省した。
ロゼはセルカに肩を竦めて見せる、気にはしていないらしい。
「それで、これからどう動くのだ?」
バーンダーバの問いにカルバンが腕を組む。
「金がいるな、食料はお前さんが取ってくると言っても肉だけじゃ駄目だ。 栄養が偏っちまうからな、野菜がいる。 育てるにも収穫には時間がかかるからそれまでは買い繋ぐしかない」
「なるほど」
「他にもいるものは山ほどある」
調理器具、獲物の解体用の刃物、家を作るための工具、衣服、農具、種苗。
カルバンが一つ一つ論っていく。
「細かく言えばまだまだある、が、急ぐのはそんなところか」
「全部揃えるのにいくらかかる?」
「そうだな、人間1人が暮らすのに1ヵ月で最低金貨5枚か。 今回は何も無いことを考えたら最初の月は1人金貨10枚として、それが200人・・・ 半年分、全部で金貨7000枚か」
それを聞いたセルカとフェイの顔が曇る、とんでもない金額だ。
「できる限り森から山菜や木の実も集めましょう、シュルスタは霊峰・天翔山から近く、森もすぐ側だったので狩人の多い国です。 かく言う私も心得はありますので多少は力になれると思います」
カリフが意見を出す。
「装備もないのに危険ではないのか?」
「深く入る事はできませんが、魔物の痕跡に気を付けつつ食料を探す程度なら大丈夫です」
「そうか、では、これを渡しておこう。 俺の護身用の短剣だが、無いよりマシだろう」
カルバンが懐にさしていた短剣をカリフに投げて渡した。
「ありがとうございます」
「それでも、今ある素材を売っても全部で金貨100枚くらいにしかならないだろ? どうするんだ、1ヵ月も持たないじゃないか」
セルカが呻いた。
「いや、あの素材は上手く売れば500にはなる。 今月を乗り切りゃなんとかなるかもな」
「コレが金貨500枚で売れても残りの金貨1500枚どーすんだよ」
セルカが素材の入ったカバンを指さす。
「フェムノでも売りゃあいーんじゃないかい?」
ロゼがけたけたと笑う。
『失敬な、それならロゼの卵を売ろうではないか。 ポコポコっと産んではどうだ?』
「そんなポコポコ産めやしないよ」
ロゼとフェムノの緊張感のない会話を尻目にセルカやフェイ、バーンダーバはウンウン唸っている。
「バン様の取ってこられた獲物の皮を鞣して売ればそれも財源になると思います、幸い、狩人もいますし。 カルバン様も商人ですから売るのは困らないのでは?」
シルビアも意見を出す。
「そうだな、シルビアはシュルスタでは何をしていたんだ?」
バーンダーバの問いにシルビアは顔を曇らせた。
「騎士の妻でした、戦争で主人を失いました」
「そうか、辛いことを聞いてすまない。 これからも貴重な意見を頼む」
バーンダーバが頭を下げる。
「いえ、そんな」
「考えてても始まらん、動こう。 まずは魔法都市へ行って素材を売る、高く売るにはあちこちで分けて売る必要がある。 ある程度纏まった金額になったらセルカはそれを持ってロゼとダイナスバザールで買い出しを頼む」
「私は?」
「バンとフェイは俺についてきてくれ、護衛が欲しい。 グルマが大金持って1人で歩いてたら襲ってくれって言ってるようなもんだからな。 それに、高く売るにはお前さんらが必要になるだろう」
「儂はどうする?」
「ゲルハルト殿はここで村人の護衛を頼みたいが、頼めるか?」
「承知した」
「私は父に剣を習っていました、私も戦えます」
シルビアの隣に座っていた男の子が立ち上がってお腹に拳をあて、直立して顎をくっと上に上げる。
騎士の礼だ。
「頼もしいな、名はなんという?」
バーンダーバが聞く。
「コリンです」
「歳は?」
「13です」
「よしコリン、君はゲルハルトについて補佐を頼めるか?」
「・・・ はいっ!」
バーンダーバの言葉に大人として扱ってもらえた事が嬉しかったコリンは顔をなお引き締めて返事をした。
「じゃあ、これを渡しておこう」
ゲルハルトは懐から短剣を取り出してコリンに渡した。
ダイナスバザールで買ったものだ。
コリンはそれを恭しく受け取った、シルビアはそれを嬉しそうに見ている。
「それじゃあすぐに出発しよう、ロゼ、頼む」
「あいよ」
ロゼがドラゴンに姿を変える。
周りから悲鳴と感嘆の声が上がった。
ロゼが「ふふん」と鼻を鳴らした。
《コレが吾輩の真の姿だ、レッドドラゴンの王・赤い鱗の王である! お前達が繁栄に勤めれば吾輩が加護を与えてやろう、さすれば村は富、豊かになって安らかに暮らしていけることをこのロッソケーニヒが約束しよう》
ロゼが大仰に翼を広げて地響きのする声で話す、村人は全員が息を飲んで聞いている。
《吾輩を信じ、バーンダーバを信じるがいい》
ロゼが目顔でバーンダーバ達に乗るように促す。
《では、行ってくる》
ロゼがいつも以上に翼を力強く羽ばたかせ、地面を蹴って飛び上がる。
村人達は空に翔くレッドドラゴンを歓声と拍手と共に見送った。
『たいそうなご高説だったな、有難くて涙が出そうだった』
フェムノが皮肉る。
《惜しかったね、目がありゃ出たのに。 アンタが目立ってたからアタイもやってみたかったんだよ》
ロゼがまた「ふふん」と鼻を鳴らして翼をはためかせる。
目指すは魔法都市ラスレンダール。
ずっと地図と睨めっこをしていたカルバンが一点を指さした。
ゲルハルトの話が終わった時、カルバンが「取り込み中悪いんだが、今はもっと性急な問題がある」と言ってまずは村を作る場所を何処にするかと皆で地図を眺めて考えていた。
そして熟考の後、カルバンの指が指し示していたのはダイナスバザールと荒野の間にある山脈の左端だった。
現在はゲルハルトを加えた勇者のケツを蹴れの面々と村人の中で体調の良さそうなカリフとコバン、それにアビーの母のシルビアを輪に入れてこれからを話し合っていた。
「ここなら、ここからもそう遠くない。 生活に必要な川と森もある。 ここに村を作ろう」
カルバンは頭上の空の様子を見てから村人を見る。
「今日は移動せずにここで夜を明かそう、まだ日は高いが、村人達はろくに飯も食ってなかったみたいだからな。 今日はしっかり食って休んで、移動は明日だ」
「この距離ならロゼだったら30分もかからないんじゃないか?」
地図を見てセルカが言う。
「ごめんだよ、アタイの最大サイズでも乗れんのは10人とか20人くらい。 アタイは馬じゃないんだ、何回も往復して運ぶなんて嫌だね。あるけんなら歩かしな」
ジト目でロゼがセルカを見る。
「それもそうだな、なんかごめんロゼ」
ロゼの言葉に確かに自分が失礼だったなとセルカは反省した。
ロゼはセルカに肩を竦めて見せる、気にはしていないらしい。
「それで、これからどう動くのだ?」
バーンダーバの問いにカルバンが腕を組む。
「金がいるな、食料はお前さんが取ってくると言っても肉だけじゃ駄目だ。 栄養が偏っちまうからな、野菜がいる。 育てるにも収穫には時間がかかるからそれまでは買い繋ぐしかない」
「なるほど」
「他にもいるものは山ほどある」
調理器具、獲物の解体用の刃物、家を作るための工具、衣服、農具、種苗。
カルバンが一つ一つ論っていく。
「細かく言えばまだまだある、が、急ぐのはそんなところか」
「全部揃えるのにいくらかかる?」
「そうだな、人間1人が暮らすのに1ヵ月で最低金貨5枚か。 今回は何も無いことを考えたら最初の月は1人金貨10枚として、それが200人・・・ 半年分、全部で金貨7000枚か」
それを聞いたセルカとフェイの顔が曇る、とんでもない金額だ。
「できる限り森から山菜や木の実も集めましょう、シュルスタは霊峰・天翔山から近く、森もすぐ側だったので狩人の多い国です。 かく言う私も心得はありますので多少は力になれると思います」
カリフが意見を出す。
「装備もないのに危険ではないのか?」
「深く入る事はできませんが、魔物の痕跡に気を付けつつ食料を探す程度なら大丈夫です」
「そうか、では、これを渡しておこう。 俺の護身用の短剣だが、無いよりマシだろう」
カルバンが懐にさしていた短剣をカリフに投げて渡した。
「ありがとうございます」
「それでも、今ある素材を売っても全部で金貨100枚くらいにしかならないだろ? どうするんだ、1ヵ月も持たないじゃないか」
セルカが呻いた。
「いや、あの素材は上手く売れば500にはなる。 今月を乗り切りゃなんとかなるかもな」
「コレが金貨500枚で売れても残りの金貨1500枚どーすんだよ」
セルカが素材の入ったカバンを指さす。
「フェムノでも売りゃあいーんじゃないかい?」
ロゼがけたけたと笑う。
『失敬な、それならロゼの卵を売ろうではないか。 ポコポコっと産んではどうだ?』
「そんなポコポコ産めやしないよ」
ロゼとフェムノの緊張感のない会話を尻目にセルカやフェイ、バーンダーバはウンウン唸っている。
「バン様の取ってこられた獲物の皮を鞣して売ればそれも財源になると思います、幸い、狩人もいますし。 カルバン様も商人ですから売るのは困らないのでは?」
シルビアも意見を出す。
「そうだな、シルビアはシュルスタでは何をしていたんだ?」
バーンダーバの問いにシルビアは顔を曇らせた。
「騎士の妻でした、戦争で主人を失いました」
「そうか、辛いことを聞いてすまない。 これからも貴重な意見を頼む」
バーンダーバが頭を下げる。
「いえ、そんな」
「考えてても始まらん、動こう。 まずは魔法都市へ行って素材を売る、高く売るにはあちこちで分けて売る必要がある。 ある程度纏まった金額になったらセルカはそれを持ってロゼとダイナスバザールで買い出しを頼む」
「私は?」
「バンとフェイは俺についてきてくれ、護衛が欲しい。 グルマが大金持って1人で歩いてたら襲ってくれって言ってるようなもんだからな。 それに、高く売るにはお前さんらが必要になるだろう」
「儂はどうする?」
「ゲルハルト殿はここで村人の護衛を頼みたいが、頼めるか?」
「承知した」
「私は父に剣を習っていました、私も戦えます」
シルビアの隣に座っていた男の子が立ち上がってお腹に拳をあて、直立して顎をくっと上に上げる。
騎士の礼だ。
「頼もしいな、名はなんという?」
バーンダーバが聞く。
「コリンです」
「歳は?」
「13です」
「よしコリン、君はゲルハルトについて補佐を頼めるか?」
「・・・ はいっ!」
バーンダーバの言葉に大人として扱ってもらえた事が嬉しかったコリンは顔をなお引き締めて返事をした。
「じゃあ、これを渡しておこう」
ゲルハルトは懐から短剣を取り出してコリンに渡した。
ダイナスバザールで買ったものだ。
コリンはそれを恭しく受け取った、シルビアはそれを嬉しそうに見ている。
「それじゃあすぐに出発しよう、ロゼ、頼む」
「あいよ」
ロゼがドラゴンに姿を変える。
周りから悲鳴と感嘆の声が上がった。
ロゼが「ふふん」と鼻を鳴らした。
《コレが吾輩の真の姿だ、レッドドラゴンの王・赤い鱗の王である! お前達が繁栄に勤めれば吾輩が加護を与えてやろう、さすれば村は富、豊かになって安らかに暮らしていけることをこのロッソケーニヒが約束しよう》
ロゼが大仰に翼を広げて地響きのする声で話す、村人は全員が息を飲んで聞いている。
《吾輩を信じ、バーンダーバを信じるがいい》
ロゼが目顔でバーンダーバ達に乗るように促す。
《では、行ってくる》
ロゼがいつも以上に翼を力強く羽ばたかせ、地面を蹴って飛び上がる。
村人達は空に翔くレッドドラゴンを歓声と拍手と共に見送った。
『たいそうなご高説だったな、有難くて涙が出そうだった』
フェムノが皮肉る。
《惜しかったね、目がありゃ出たのに。 アンタが目立ってたからアタイもやってみたかったんだよ》
ロゼがまた「ふふん」と鼻を鳴らして翼をはためかせる。
目指すは魔法都市ラスレンダール。
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