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19-後、見返りのない行為
しおりを挟む撮影終了後、佐原さんと共に逃げるように控え室に戻った奏多。
その様子を心配した俺はスベちゃんの着ぐるみを脱ぐと、適当に理由をつけてその後を追った。
(奏多、やっぱり途中で気付いてたよな…前に作った朝飯のこと言ってたし)
…だとすれば、足早に控え室へと戻った理由は決まっている。
俺はその責任を感じ、廊下を小走りで進む。
「…!おや、社さん」
「佐原さん、奏多は…」
「『お取り込み中』ですよ。…それにしても、着ぐるみに入るのなら一言言っていただければ」
「うぅ…それは申し訳ない、です」
着ぐるみを着ていたとはいえ半ばサプライズ的に近寄ってしまったのだ。
俺は申し訳なく思い、佐原さんに頭を下げる。
「はぁ…私に謝る必要はないですよ。大方急を要したのでしょう」
「はは…ま、まぁ…」
「それで…奏多にも謝りに来たのですか?ですがまだ取り込み中で…」
佐原さんは目を細めて控え室のドアを見たが、俺はあえて自らそのドアノブを握った。
「…俺がやります」
「本気、ですか?契約もしていないのに?」
「今回の件は八割方俺が悪いですし」
「……まぁ、ご自分で決められたなら止めはしません」
そう告げると佐原さんはドアを軽くノックした。
「奏多。社さんですよ」
『っ!い、今取り込み中で…』
「うん、分かってる。…入るぞ」
そして俺はドアを開け、素早く部屋に入ると静かにドアを閉める。
部屋の端には上着で下半身を隠し、こちらを凝視する奏多。
俺はその姿に思わず噴き出し、笑いながら奏多の方へと歩み寄った。
「ぷっ、なんて顔してんだよ」
「だ、だって拓磨が…!」
「あぁ、『お取り込み中』に入ってきたからか。それは確かにデリカシーがなかったな」
しかし俺はあえて拓磨の隣にドカッと座り込んだ。
「た、拓磨…」
「……着ぐるみに入ったこと、言わなくて悪かったな。まさか気付かれるとは思わなくて…」
「…それは怒ってないよ。ただ、そう近くに来られると…せ、性欲が…」
恥ずかしそうに股間を抑える奏多。
そんな姿に俺はまた噴き出しそうになるのを堪えながらその手を握った。
「っ、拓磨…もう契約は…」
「金目当てじゃない。…大好きな友達が困ってるのに対価なんて貰えない、だっけか?写真より俺が直にやった方が早いだろ」
「それは嬉しいけど…」
「いいからいいから」
今日ばかりは俺の責任だからと有無を言わさず奏多の息子さんとご対面する。
…久しぶりに見たけど、やっぱりでっかい。
「…とりあえず、手でいいか?」
「うん…お願いするよ…」
荒く息をしながら雄の顔で俺を見つめる奏多。
俺はそんな奏多の顔つきにちょっとだけドキドキしつつも、久しぶりの手コキ奉仕を始めた。
…シュッ…シュッ…
「はぁ…っ…いい、よ…気持ちいい…」
「…今日は悪かったな。…時間のある時は、今日みたいに俺が処理してやるよ。…その、友達だし…」
性処理をする友達とはいわゆるセフレではないかと脳裏を過ぎったが、そんな不健全な関係は違うとその3文字を頭からかき消す。
「…拓磨は、時々すごくカッコいいね。普段はかわいいのに…っ…」
「カッコいいのは時々じゃなくていつも。あと可愛いってのは否定させてくれ」
「っ…ぁっ…!」
奏多の言葉に少し苛立ち、八つ当たりのように鈴口へ爪を立てる。
しかし逆効果だったのか奏多は瞳を潤ませてこちらを見つめる。
「……拓磨…好き。愛してる。…キス、したい…」
「…奏多…それ以上、は…」
「うん、分かってる。…僕からは…何もしない。それが約束だもんね」
『だから、触らない代わりに喋らせて』と耳元で囁き、俺に手コキされながら奏多は俺への告白を続けた。
「はぁ…っ…たくま…好きなんだ…本当に。…こんなに、胸が苦しいのは、初めてなくらい…」
「…性欲だけじゃなかったのか?」
「最初はそう、だったけど…んっ…段々…拓磨に、触れてもらううちに…本気で…っ」
次第に言葉を紡ぐのも難しくなるほど奏多の息は荒くなり、性器の方もビクビクと震え出す。
「く…そろそろ…っ…」
「……いいぞ。いっぱい、出してみろ」
「っ…うぁあっ…!」
ーービュクビュクッ!
うめき声と共にティッシュの中へと吐精した奏多。
その量は尋常ではなく、大量のティッシュから染み込んだ白濁が俺の手を汚すほどだった。
「はぁ…はぁ…」
「凄い量だな…」
「ははっ…ごめんね…迷惑、だったよね。ずっと耳元で告白なんてしちゃって…」
確かに、あの愛の告白は熱烈で色気も凄かった。
…まぁ、迷惑かと言われればそうでも無いけど。
「…別にいいよ。奏多が俺のことを好きってことは知ってるから。それを理由に嫌ったりはしないさ」
「でも…好きにもならないんだよね?」
「さぁな。先のことなんて分からないし」
それは別に奏多に意地悪したくて言った訳では無い。
本当に、奏多を『好きになってしまうかも』しれなかったんだ。
(性欲だけじゃないとは言ってたけど、将来俺以外にも反応出来る子が現れたら?そしてそれが…奏多のファンの子だったら?)
汚れた手を拭きながらそんなことを考えていると不意に奏多が口を開く。
「…本当に、拓磨だけだから」
「えっ…?」
「例え突然この病気が完治したとしても、僕が愛するのは…拓磨だけだから」
それはまるで俺の心中を見透かしたような言葉。
奏多の真剣な眼差しに俺はゴクリと息を飲んだが、ふと緊張が和らいだように奏多は微笑む。
「ごめん、これだけは言っておきたかったんだ。怖がらせちゃった…?」
「こ、怖がるわけないだろ。友達なんだし。…で、少しはスッキリしたか?」
「うん、バッチリだよ。心も体も、ね」
ああくそっ、イケメンの笑顔は眩しいな…
眩しい笑顔に耐えられず顔を逸らし、『よかったな』とぶっきらぼうに答えてしまう。
そして俺は手を綺麗に拭きあげて片付けなどを済ませると、そのまま控え室の出口へと向かった。
「じゃあ俺仕事に戻らないと」
「わざわざ来てくれてありがとう。…今度うちでまたお酒でも呑もうね」
「あぁ、考えとく」
そして『友達』としての会話を軽く交わすと、俺はまた静かに控え室を後にした。
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