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25、越えた一線
しおりを挟む…気付くと、カーテンの隙間から明るい光が零れかけていた。
(……あれ…?朝、か…)
目を擦りながらだるい体に鞭打ち、ゆっくりと顔をあげれば途端に腰に走る激痛。
「ひぎぃっ」
エロ本のような声が出てしまったような気がするのは気のせいだ。
とにかく、俺はその痛みに耐えきれず再び布団に潜った。
「いってぇ…なんで、こんな………あ」
ここでようやく隣に眠る奏多の存在に気付き、俺は昨夜のことを粗方思い出した。
そう、早い話が朝チュンである。
(そっか…俺、とうとう奏多とセックスしたんだな…途中から覚えてないけど)
呑気に眠る奏多の頬をふにふにと突っつきながら、ゆっくりとその体に擦り寄る。
(…あったかい…子供みたいな体温だな…)
しかしそれが心地よく、俺はうつらうつらと二度寝を……
バンッ!!
「お二人共朝ですよ!!!!!」
「「うわぁあぁあっ!?」」
と、船を漕ぎ出した瞬間、寝室のドアが勢いよく開かれ、佐原さんが信じられないぐらいの大声で飛び込んできた。
「な、なななな…!」
「おはようございます社さん、奏多。良い朝を迎えられたようで」
「……はぁ…佐原。もっと普通に起こしてくれればいいのに…」
布団を握りしめて驚愕する俺の隣で、奏多は佐原さんの大声で目を覚ましてしまったのか眉間に皺を寄せて頭を抱えていた。
「申し訳ない。ですが、昨夜の営みの疲れから高確率で二度寝をする可能性が高いと考えられましたので…」
「……もしかしてこの部屋、監視カメラとかついてるの?」
「ははは、冗談ですよ」
冗談とは思えない程俺たちの行動を見透かした佐原さんの発言に、俺と奏多は訝しげな視線を向けた。
…しかし効果は全く無さそうだ。
ひとまず俺は布団で体を隠すようにして上半身だけを起こす。
「すみませんね、せっかくのピロートークを邪魔して。ですが奏多、明日からの北海道に備えて支度をして飛行機に乗らないと行けないのですよ?」
「分かってる。…でもあと1時間ぐらいは拓磨とイチャイチャしてたかったな」
グイッ
「おわっ」
そう呟いて頬を膨らませながら俺の腰を抱き寄せた奏多。
さりげなく腰とか尻をさすってくるし…コイツ、告白成功したからっていきなり積極的になりすぎだろ。
「それはまた次のオフの日にしてください。…それから社さん、少しお話がありますので後ほどリビングにお願い出来ますか?」
「え、あ、は、はい…」
「拓磨が行くなら僕も…」
「貴方はその間、部屋の片付けと荷造りです」
佐原さんに鋭く指示を出され項垂れてしまった奏多。
確かに部屋は色んな意味で酷い有様だったし、仕方ないと言えばそうなんだけど。
「ひとまずお風呂に入って着替えを済ませて来てくださいね。話はそれからです」
「はーい。…拓磨、お風呂行こっか」
「あ、あぁ…」
そうして俺はリビングに戻った佐原さんの背中を見送りつつ、奏多に抱き抱えられて風呂場へと向かった。
…風呂に入ると、奏多はまるで人懐っこい大型犬のように甘えてきた。
「拓磨、拓磨♡昨日はとてもいい夜だったね」
「昨日…俺、途中から覚えてないんだけど…」
後ろから体を抱きしめられたまま正直に答えれば、奏多は少し申し訳なさそうに俯いてから顔を赤くする。
「そっか…しょうがないよね。僕も無我夢中で…あのまま5回ぐらい中だししたし」
「ごっ…!?」
「でもおかげで朝はスッキリだったし、こうやって拓磨に密着してても性欲の方は抑えられてるから結果オーライだよね」
確かに奏多の顔はいつもの1.5倍ぐらい爽やかスマイルな感じだけど…
(その理由が濃厚なホモセックスってのは、絶対世間に公表出来ないよなぁ…)
「明日からロケで北海道なんだろ?その間は大丈夫なのか?」
「大丈夫。拓磨の写真持っていくし…時間が合えば、また電話でエッチしようね♡」
「…せ、性豪め…」
開き直ったかのように俺に迫る奏多に思わずため息が溢れ出る。
でも嫌いになれないのは惚れた弱み、というやつなのだろう。
ひとまず俺は奏多の拘束を(優しく)振りほどいて1度浴槽を出ると、体や頭を綺麗に洗った。
「僕が洗ってあげるのに…」
「これぐらい自分で洗える。…それに、洗うだけじゃすまなくなるだろ?」
「…まぁね」
あ、目ぇ逸らしやがったなコイツ。
しかも否定してない。
「はぁ…ま、一応恋人同士になったわけだし、下手に演技されるより本音を包み隠さず言ってくれるだけマシか」
「ん?僕、演技は得意な方なんだけど…」
「こっちの話」
小首を傾げる奏多の頭をわしゃわしゃと撫で回し、俺は先に上がろうと踵を返す。
「じゃあ俺は先に着替えて佐原さんと話してるからな。…時間余ったら朝飯も作ってやるから、部屋の片付けとかしっかりやっとけよ」
「うん。分かったよ、拓磨」
さりげなく手のひらにキスを落とされ動揺したが、俺は赤くなる顔を誤魔化すようにして足早に脱衣場に駆け込んだ。
……………………
…………………………
「……えへへ」
脱衣場の扉が閉まると、僕は撫でられた頭に触れて思わずにやけてしまった。
(拓磨、拓磨。かわいくて、カッコいい…僕の大切な恋人)
浴槽の縁に顎を乗せ、昨夜のことを思い返す。
キスに蕩けながらも蠱惑的に微笑んで僕の性器を扱いてくれた拓磨。
でも乳首を攻めたら簡単に甘い声を出して…
(拓磨も、僕だけに反応する体になってくれればいいのに)
そんなことを考えてしまうなんて、僕はここまで独占欲が強い方だっただろうか?
「…せっかくこの想いが通じたんだ。絶対に…手放しはしないから」
誰もいない風呂場で、僕はひとりポツリと呟いた。
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