[R18]不定形の恋人

空き缶太郎

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嫉妬心vs独占欲

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夜明け前、アッシュとレイブンは体を綺麗にするため風呂に入っていた。

しかしアベルとは違い、レイブンの家に設置された風呂は普通サイズのバスタブだ。

そのため、アッシュと二人で入れば必然的に体は密着することになる。

「大丈夫?僕、元の大きさに戻ろうか?」
「俺はこのままでもいいぞ。アッシュにくっつけるからな」
「ふーん」

レイブンが後ろからアッシュを抱きとめるような形で湯船に浸かり、時折お湯をかける。

アッシュのひんやりとした体はお湯で温められると今度は逆に湯たんぽのような温かさを放っていた。

「そう言えばアッシュ。その…俺が出したものはどうしたんだ?」
「出したもの…?」
「その…せ、精液だ」
「これ?」

アッシュがその手を透かして見せれば、白濁した液体がスライムの青い体に内包されていた。

しかしその量はどことなく少なくなっている。

「今吸収してるところだよ」
「き、吸収!?…それは、大丈夫なのか?」

自分の出したものがアッシュの体の一部になると思えば何処と無く嬉しい気もしたが、健康に影響がないのか心配になる。

しかしアッシュは特に気にする様子もなく小首を傾げた。

「大丈夫…?別に毒でもないし、平気だと思うよ。アベルのも取り込んだし」
「…アベル、か」

再び耳にしたその名前に、レイブンは眉をひそめる。

「…アッシュ。そのアベルという夜魔族とはどういう関係なんだ?」
「関係?」
「だから…その…恋人、なのか?」

レイブンの言葉にアッシュはきょとんとする。

そもそも性別のないスライムに恋人云々といった概念は希薄だからだ。

「コイビト…が何かは分からない、けど…アベルは優しい魔物だよ。泉に人間避けの結界を張ってくれたのもアベルなんだ」
「でも抱かれたんだろ?…魔物の世界では知らないが、少なくとも人間の世界ではああいう行為は恋人…あるいは夫婦やつがいと呼ばれる間柄でしかやらないことだからな」

遠回しに『自分はアッシュと恋人や夫婦といった関係になりたい』という意味を込めながら説明する。

「番なら分かるよ!…でも、僕とアベルは番ではないかなぁ…そもそも、僕は子供を産めないし」
「では遊びの関係なのか?」
「うーん…そうなのかな?どうなんだろう…」
「…なぁ。もしアッシュが嫌でないなら、俺と恋人にならないか?」

アッシュとアベルの関係がまだ深いものでないと知るや否や、レイブンは攻勢にかかる。

「恋人って何するの?」
「特に決まりはないが…一緒に出かけてご飯を食べたり、昨夜のように愛し合ったり、とにかくお互いがお互いを好きならいいんだ」

その姿は完全に『無知な子供を口車に乗せる悪い大人』だったが、この場にそれを咎めるものはいなかった。

そしてレイブンは言質を取るべく、アッシュの体を優しく撫で、愛撫しながら更に囁く。

「昨日は気持ちよかっただろう?…恋人になってくれたらもっと良くしてやれるし、俺もアッシュが恋人なら嬉しいんだ」
「ん…で、も…ひぁんっ♡」
「な?いいだろ?」

優しく胸の辺りを揉めば、快感に弱いアッシュは簡単に音を上げる。

「な、るぅ…♡ぼく、レイブンの恋人になるからぁ♡」
「いい子だ」

無事言質を取ったレイブンは嬉しそうにキスを落とし、愛撫を激しくする。

「あ♡あぁっ♡い、イク♡れいぶん♡ぼく、またぁ♡♡」
「あぁ、いいぞ。…好きなだけイかせてやるからな」
「れい、ぶん♡レイブン♡♡イク♡イくぅ♡♡」


…そしてレイブンは夜明けまでアッシュを徹底的に快楽漬けにし、甘やかし続けた。



「……うまく変化できない…」
「…済まなかった」

アッシュがようやく開放された頃には快感で体が弛緩しきり、うまく人の姿に変化出来なくなっていた。

仕方なく手頃な壺の中にアッシュを隠し、その壺を持ち歩くようにして城下町を出るレイブン。

「あ、お疲れ様です隊長!また外の見回りですか?」
「あぁ。この近隣だけだがな」
「最近は大きな魔物の出現もありませんし、いいことですよ」

門番にも特に怪しまれることなく街道に出たレイブンは、そのままアッシュの住処へと向かう。

「さて、泉はこの辺りのはずだが……ん?」
「レイブン?どうしたの?」

壺から体の一部を伸ばしたアッシュが泉の方を見る。

するとそこには、仲間のスライムたちに紛れて背の高い人影があった。

『あ!アッシュ!』
『帰ってこなかったから心配したんだよー!』
『…アッシュ…と、人間…?』

その人影は魔物の言葉を操り、訝しげにレイブンを睨む。
レイブンもその尋常でない気配を察し、腰に差した剣に触れる。

「あれは…」
「あ。レイブン、紹介するね。あの背の高いのが……」

壺の中から説明をしようとしたアッシュだが、その言葉は続かなかった。


ーーーーガキンッ!!

「っー!?」
「答えろ人間。なぜ、貴様がアッシュを連れている」

ほんの一瞬、風が吹いたと思えば人影はレイブンと距離を詰めて眼前に迫り、細身の剣を振り下ろしていた。

咄嗟に護身用の剣でそれを防いだレイブンだが、見覚えのある人影に目を細める。

「…お前、先週城下町に居たな…」
「ほう、勘づかれていたか。俺もまだまだだな」
「ま、待って!レイブン!アベル!」

慌てて壺から飛び出したアッシュは体の一部を伸ばし、レイブンと謎の人影…アベルの服を引っ張る。

しかし2人の戦いはそう簡単には収まらない。

『アッシュ!危ないよ!』
『とりあえず泉に逃げよう!』
『で、でも…』
『大丈夫。アベルさんにはあの人間のこと話してるから!』
『いつも食べ物くれる優しいナンパ野郎だって言ってあるから!』

それは完全にアウトな説明なのだが、スライム達の低いかしこさではそれも理解できなかった。

『でも…やっぱり止めてくる!』
『あ!アッシュ待って!』

しかしお人好し…もとい『スライム好し』なアッシュは2人に向かって走り出す。

その間もレイブンとアベルは激しい剣戟を繰り広げ、互いに1歩も引かない戦いをしていた。

「っ、お前には…色々と聞きたいことがあったんだ!」
「奇遇だな!俺も…だっ!」
「ぐぅ!」

アベルは一際強い力でレイブンを攻撃し、その勢いで2人の周りには突風が吹き荒れる。

『うわわっ!』
「っー!アッシュ!」

レイブンが咄嗟に手を伸ばすも遅く、その突風はアッシュの軽い体を簡単に浮かせそのまま泉の外へと吹き飛ばそうとしていた。

「な、アッシュ!…くっ、間に合えっ!!」

僅かに遅れてアベルも気付き、吹き飛ばされるアッシュを守るように風を強引に操作する。

そして空中で動きを止めたアッシュの傍まで跳躍すると、その小さな体を大事そうに抱きとめた。

『あわわっ…あ、アベル…』
『アッシュ!…大丈夫か?』
『う、うん…ごめんね』

「…………」

そんな2人の、魔物の言葉でのやりとりを悔しそうに見上げるレイブン。
その視線に気付いたのか、アベルはこれみよがしにアッシュの体にキスを落とした。

「っー!あいつ…!」
「ふふん」

そうしてアッシュと共に地上に降りたアベルだが、(ひとまず今だけは)レイブンと争うつもりは無いようだった。

しかし一触即発なのに変わりはない。
 
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