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第二章
第四話
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ぼくにはいろいろ聞きたいことがあったのに、ステアリングを握る少女の姿を見てそのどれとも違うことを尋ねた。
「自分で運転してるの?」
少女はぼくの方を見た。
「そうよ。ほんとは公道走ったらダメなんだけど一応ライセンスも持ってるよ」
少女は視線を前方に戻しながら答えた。一つ質問をしてその回答をもらったのにわからないことが増えた気がした。タイヤが道路の凹凸を捉え、そのたびにサスペンションが動いて揺れを吸収しているのが見えた。
「ライセンス?」
「そう。こういうバギーの。あたしはジュニアレーサーなんだ」
少女が口にするカタカナの言葉はぼくにはなじみの薄いものばかりだった。言葉とは世界だ。馴染みのない言葉を操るこの少女はぼくとは違う世界に生きているのだと感じた。
「すごいね」
「たいしてすごくはないんだけどね。ジュニアの選手は少ないから珍しいことはたしか」
少女の声はぼくの中に妙に残った。
「なんだったのかな、あのロボット。なんで追いかけてきたんだろう」
ぼくは固いシートの上で体を動かし、少し沈み込みながら言った。
「理由なんかどうにでもなるでしょ。どんな人であれ捕まえたい人を捕まえる。罪なんかあとからいくらでも作れるんだから」
「それはそうだけどさ。なぜ理由を作ってまでぼくを捕まえるんだろう」
ぼくは少女の横顔を見ながら言った。少女がぼくと目を合わせる。
「それがあたしのミッションだからよ」
少女はそう言いながら視線を戻した。ぼくはその横顔から目がはなせなかった。車はずっと先の方までまっすぐに続く直線道路を山に向かって走り続けている。
ぼくが黙っていると少女が口を開いた。
「七つの鉄路が集まる所 導かれし友を救え、っていうのがあたしのミッション。あの駅は七番線まであるこの辺りで一番大きな駅なの。ね、あんたもプレイヤーなの?」
少女はそう言ってぼくの方を見た。
「うん」
なんの? という質問はあまりにナンセンスな気がしたので口にしなかった。少女はぼくの顔を覗き込んですぐにまた前を向いた。
「不思議よね。あんたもプレイヤーだってことはさ、いつあの駅に到着するかわからないわけじゃない。あたしのミッションには時間の指示はなかったからさ。ふつうのゲームならそういうのあたりまえだけどさ。ミッションをいつ始めてもさ、そのちょうどいい時間にイベントが発生するわけでしょ。自分が助けるべきキャラクターはさ、こっちの都合で現れてピンチになるでしょ。でもあんたもプレイヤーってことはさ、いつ来るかわからないよね。それなのにあたしが駅に着いたらすぐに列車が到着してあんたが降りてきた。救うってなにかな、って思ってたらロボットが捕まえにきたからなるほどって。でもよく考えてみれば不思議よね」
それを聞いてぼくはまた考えを巡らした。ぼくは彼女が受けたミッションの中で一つの役割を演じたということになりそうだ。そしてぼく自身もまた自分に与えられたミッションに従ってここへ来た。導かれているというよりも操られているという感じがした。
「おおい、聞いてる?」
少女が左手をぼくの顔の前で上下に動かす。右手はステアリングを握ったままだ。
「ああ、ごめん。不思議だって言われたら本当にその通りだなと思っちゃって。いろいろ考えてた」
ぼくが答えると少女は笑った。ぼくは笑われたのにまったく嫌な気がしなかった。前を向いて運転している少女の横顔を見ながらこういう人には今まで会ったことがないなと思った。ぼくが横顔を見ていると少女は急にぼくの方を向いた。
「あたしアリア。あんたは?」
「あ、あ。ああ。ぼく。ぼくはレイト」
急なことに驚いてぼくはうまく答えられなかった。言い終えてもまだ速くなった鼓動が耳に届くようだった。
「レイト。いい名前ね。あたしのミッションはね、導かれし友を救えっていうやつだったんだ。友だって。初めて会ったけどあたしとレイトは友だってさ。よろしくね」
アリアはそう言っていたずらな目をした。ぼくはいたずらな目というのがどういうものか今初めて知った気がした。嫌な気はしなかった。
車は相変わらずまっすぐな道路を走り続けていた。前にも後ろにも、対向車線にも他に車は走っていない。
本来公道を走っちゃいけないような車をジュニアレースのライセンスしか持っていない子どもが運転しているのはやはりまずいはずだ。そもそも道路は自動運転車両が優先で、都市部には人の運転が禁止されているエリアもある。ゲームとはいえエクステンドモードはあくまで現実なのだからアリアは補導されてしまうのではないか。車道は自動運転車のための交通管制システムが監視しているはずだから、他に車が一台も走っていなかったとしても逃れられないような気がした。
「まずいよねきっとこんな車でここを走ったらさ。このミッションのためにアリアは捕まっちゃうんじゃない?」
「きっと大丈夫。ゲームだから」
「ゲームったって公道だよ」
「公道ったってゲームよ」
アリアはころころと笑った。ぼくは自分がどんな顔をしているかわからなくなった。車は相変わらず直線道路を走り続けている。ちょっとさすがに直線が長すぎやしないか、とぼくは思った。
「どこへ向かってるの?」
「あたしの家」
アリアはそう答えてからぼくの方を向き、「レイトのミッションってまだ続きあるの?」と聞いた。
そう言われてぼくはミッションのメッセージを思い出そうとした。たしか女王の足元がどうしたとかいう話で駅に向かったんだ。そのあとはなんだったかな。手を取るとかなんかだ。
「差し伸べられる手を取れ」
ぼくはそう言いながらアリアの横顔を見た。アリアは運転しながらときどきぼくと目を合わせる。不思議とアリアと目が合うのは嫌じゃなかった。すぐに目を逸らしてしまうということもなかった。
「差し伸べられる手がよくわからなかったんだけどさ。駅へ行ってみたら列車が来たんだよ。その列車が差し伸べられた手かなと思って乗り込んだらあの駅へ着いた。降りてきたらアリアがいたんだ。だからぼくのミッションはこれで完了したと思う」
取るべき手はアリアの手だったのかな、とぼくは思った。思ったけれど言葉にはしなかった。ちょっと気取っているみたいで恥ずかしいような気がした。でもそんな気がしたのに黙っているのはうしろめたいような気がした。
「ね、レイトはどこから来たの?」
アリアはそう言いながらぼくの方を見た。言葉の終わりの部分で目が合った。ぼくは自分がどこから来たのか急にわからなくなった。でもアリアの目を見ていると目的地はわかるような気がした。どこから来たかはどうでもいい、どこへ向かうかが大切だ、そういう大人たちのインチキみたいな言葉がもしかしたら正しいこともあるのかもしれないと思った。
「どこから? ああ。ぼくはみらいから来た」
「未来?」
アリアはもともと大きな目をもっと大きくしながら言った。
「レイトって未来人なの?」
言葉を受け取ってから何が起きたのか理解するのに少し時間がかかった。
「ちがうちがう。ぼくはみらいって名前の町から来たんだ。よこはまにある町だよ」
「よこはま?」と言ってアリアはぼくの方を向き、また視線を前に戻して「ずいぶん遠くから来たのね」と付け加えた。
「え?」
ぼくはここがどこだかまだ知らなかったことを思い出した。
「ここはどこ?」
ぼくが聞くとアリアは大きく口を開けて笑い、「いまさら?」と言ってさらに笑った。
「てっきりわかってるもんだと思ってたよ。ここはあさひかわだよ」
あさひかわという単語がぼくを素通りしていった。
「さっきレイトが降りてきたのはあさひかわ駅。ここはまだぎりぎりあさひかわで、もう少し行くとあさひかわから出るよ」
何度か繰り返されたあさひかわという単語がぼくの中で形を持ち始めた。
「あさひかわってあのほっかいどうのあさひかわ?」
「そうよ」
ぼくの頭の中にいろんな可能性が渦巻いた。列車に乗っていたのは長くても一時間に満たない程度だったはずだ。まえにホイールのゴンドラに乗ってさっぽろへワープしたことはあった。でもあれはイマースモードでの話で、イマースモードならなんだって可能だ。居間のソファでヨーロッパ旅行だってできるのだから。でも今回は違う。ぼくはゴーグルをつけている。イマースはしていない。ここは外の世界だ。外の世界なのだからワープなんてあるわけがない。ぼくはアリアの横顔を見つめたまま身に着けているゴーグルに触れた。アリアとぼくの間にメニューが浮かび上がる。たしかにエクステンドモードだった。ぼくはメニューに視線を走らせて位置情報を確認した。地図が表示され、現在位置が更新されていく。まっすぐの道路を移動しているのがわかる。地図の表示を変更してより広い範囲を表示する。本当にほっかいどうだった。ほっかいどうの中央付近だ。
「だけどぼくが列車に乗ってたのはどんなに長くても三十分ぐらいだよ。よこはまからあさひかわまで列車で三十分ってことはありえないよ」
「ゲームだからね」
アリアはあっさりと言って車を減速させ、ステアリングを切った。車は長い直線道路から外れて細い道路に入った。直線道路も片側一車線のそれほど広い道路ではなかったけれど、そこからそれた道路はさらに細くセンターラインがなかった。あさひかわの駅を降りてからここまで起伏がなくずっと平地だ。この付近は見渡す限り田畑でところどころに家屋がある以外は建物もなく、はるか遠くで空と地面を切り分けるように山々が並んでいた。その広大な平地の中を縦横に細い道路が走っていて、どの交差点でも道路は直角に交わっていた。上から見ればきっとグリッドのようになっているだろう。
アリアはその後もグリッドの線をあみだくじのように何度か折れながら進んだ。直線道路から最初に曲がった交差点も、その後の交差点もどれもランドマークになるものがなかった。視界の中で目印になりそうなものは遠くの山だけで、そんなものは道路を走るときにはなんの参考にもならない。こんな道は覚えられそうにないとぼくは思った。車は砂利道に入る。サスペンションの動きが大きくなる。その割にあまり揺れは強くならない。もともと舗装路よりもこういう場所を得意としている車なのだろう。
「自分で運転してるの?」
少女はぼくの方を見た。
「そうよ。ほんとは公道走ったらダメなんだけど一応ライセンスも持ってるよ」
少女は視線を前方に戻しながら答えた。一つ質問をしてその回答をもらったのにわからないことが増えた気がした。タイヤが道路の凹凸を捉え、そのたびにサスペンションが動いて揺れを吸収しているのが見えた。
「ライセンス?」
「そう。こういうバギーの。あたしはジュニアレーサーなんだ」
少女が口にするカタカナの言葉はぼくにはなじみの薄いものばかりだった。言葉とは世界だ。馴染みのない言葉を操るこの少女はぼくとは違う世界に生きているのだと感じた。
「すごいね」
「たいしてすごくはないんだけどね。ジュニアの選手は少ないから珍しいことはたしか」
少女の声はぼくの中に妙に残った。
「なんだったのかな、あのロボット。なんで追いかけてきたんだろう」
ぼくは固いシートの上で体を動かし、少し沈み込みながら言った。
「理由なんかどうにでもなるでしょ。どんな人であれ捕まえたい人を捕まえる。罪なんかあとからいくらでも作れるんだから」
「それはそうだけどさ。なぜ理由を作ってまでぼくを捕まえるんだろう」
ぼくは少女の横顔を見ながら言った。少女がぼくと目を合わせる。
「それがあたしのミッションだからよ」
少女はそう言いながら視線を戻した。ぼくはその横顔から目がはなせなかった。車はずっと先の方までまっすぐに続く直線道路を山に向かって走り続けている。
ぼくが黙っていると少女が口を開いた。
「七つの鉄路が集まる所 導かれし友を救え、っていうのがあたしのミッション。あの駅は七番線まであるこの辺りで一番大きな駅なの。ね、あんたもプレイヤーなの?」
少女はそう言ってぼくの方を見た。
「うん」
なんの? という質問はあまりにナンセンスな気がしたので口にしなかった。少女はぼくの顔を覗き込んですぐにまた前を向いた。
「不思議よね。あんたもプレイヤーだってことはさ、いつあの駅に到着するかわからないわけじゃない。あたしのミッションには時間の指示はなかったからさ。ふつうのゲームならそういうのあたりまえだけどさ。ミッションをいつ始めてもさ、そのちょうどいい時間にイベントが発生するわけでしょ。自分が助けるべきキャラクターはさ、こっちの都合で現れてピンチになるでしょ。でもあんたもプレイヤーってことはさ、いつ来るかわからないよね。それなのにあたしが駅に着いたらすぐに列車が到着してあんたが降りてきた。救うってなにかな、って思ってたらロボットが捕まえにきたからなるほどって。でもよく考えてみれば不思議よね」
それを聞いてぼくはまた考えを巡らした。ぼくは彼女が受けたミッションの中で一つの役割を演じたということになりそうだ。そしてぼく自身もまた自分に与えられたミッションに従ってここへ来た。導かれているというよりも操られているという感じがした。
「おおい、聞いてる?」
少女が左手をぼくの顔の前で上下に動かす。右手はステアリングを握ったままだ。
「ああ、ごめん。不思議だって言われたら本当にその通りだなと思っちゃって。いろいろ考えてた」
ぼくが答えると少女は笑った。ぼくは笑われたのにまったく嫌な気がしなかった。前を向いて運転している少女の横顔を見ながらこういう人には今まで会ったことがないなと思った。ぼくが横顔を見ていると少女は急にぼくの方を向いた。
「あたしアリア。あんたは?」
「あ、あ。ああ。ぼく。ぼくはレイト」
急なことに驚いてぼくはうまく答えられなかった。言い終えてもまだ速くなった鼓動が耳に届くようだった。
「レイト。いい名前ね。あたしのミッションはね、導かれし友を救えっていうやつだったんだ。友だって。初めて会ったけどあたしとレイトは友だってさ。よろしくね」
アリアはそう言っていたずらな目をした。ぼくはいたずらな目というのがどういうものか今初めて知った気がした。嫌な気はしなかった。
車は相変わらずまっすぐな道路を走り続けていた。前にも後ろにも、対向車線にも他に車は走っていない。
本来公道を走っちゃいけないような車をジュニアレースのライセンスしか持っていない子どもが運転しているのはやはりまずいはずだ。そもそも道路は自動運転車両が優先で、都市部には人の運転が禁止されているエリアもある。ゲームとはいえエクステンドモードはあくまで現実なのだからアリアは補導されてしまうのではないか。車道は自動運転車のための交通管制システムが監視しているはずだから、他に車が一台も走っていなかったとしても逃れられないような気がした。
「まずいよねきっとこんな車でここを走ったらさ。このミッションのためにアリアは捕まっちゃうんじゃない?」
「きっと大丈夫。ゲームだから」
「ゲームったって公道だよ」
「公道ったってゲームよ」
アリアはころころと笑った。ぼくは自分がどんな顔をしているかわからなくなった。車は相変わらず直線道路を走り続けている。ちょっとさすがに直線が長すぎやしないか、とぼくは思った。
「どこへ向かってるの?」
「あたしの家」
アリアはそう答えてからぼくの方を向き、「レイトのミッションってまだ続きあるの?」と聞いた。
そう言われてぼくはミッションのメッセージを思い出そうとした。たしか女王の足元がどうしたとかいう話で駅に向かったんだ。そのあとはなんだったかな。手を取るとかなんかだ。
「差し伸べられる手を取れ」
ぼくはそう言いながらアリアの横顔を見た。アリアは運転しながらときどきぼくと目を合わせる。不思議とアリアと目が合うのは嫌じゃなかった。すぐに目を逸らしてしまうということもなかった。
「差し伸べられる手がよくわからなかったんだけどさ。駅へ行ってみたら列車が来たんだよ。その列車が差し伸べられた手かなと思って乗り込んだらあの駅へ着いた。降りてきたらアリアがいたんだ。だからぼくのミッションはこれで完了したと思う」
取るべき手はアリアの手だったのかな、とぼくは思った。思ったけれど言葉にはしなかった。ちょっと気取っているみたいで恥ずかしいような気がした。でもそんな気がしたのに黙っているのはうしろめたいような気がした。
「ね、レイトはどこから来たの?」
アリアはそう言いながらぼくの方を見た。言葉の終わりの部分で目が合った。ぼくは自分がどこから来たのか急にわからなくなった。でもアリアの目を見ていると目的地はわかるような気がした。どこから来たかはどうでもいい、どこへ向かうかが大切だ、そういう大人たちのインチキみたいな言葉がもしかしたら正しいこともあるのかもしれないと思った。
「どこから? ああ。ぼくはみらいから来た」
「未来?」
アリアはもともと大きな目をもっと大きくしながら言った。
「レイトって未来人なの?」
言葉を受け取ってから何が起きたのか理解するのに少し時間がかかった。
「ちがうちがう。ぼくはみらいって名前の町から来たんだ。よこはまにある町だよ」
「よこはま?」と言ってアリアはぼくの方を向き、また視線を前に戻して「ずいぶん遠くから来たのね」と付け加えた。
「え?」
ぼくはここがどこだかまだ知らなかったことを思い出した。
「ここはどこ?」
ぼくが聞くとアリアは大きく口を開けて笑い、「いまさら?」と言ってさらに笑った。
「てっきりわかってるもんだと思ってたよ。ここはあさひかわだよ」
あさひかわという単語がぼくを素通りしていった。
「さっきレイトが降りてきたのはあさひかわ駅。ここはまだぎりぎりあさひかわで、もう少し行くとあさひかわから出るよ」
何度か繰り返されたあさひかわという単語がぼくの中で形を持ち始めた。
「あさひかわってあのほっかいどうのあさひかわ?」
「そうよ」
ぼくの頭の中にいろんな可能性が渦巻いた。列車に乗っていたのは長くても一時間に満たない程度だったはずだ。まえにホイールのゴンドラに乗ってさっぽろへワープしたことはあった。でもあれはイマースモードでの話で、イマースモードならなんだって可能だ。居間のソファでヨーロッパ旅行だってできるのだから。でも今回は違う。ぼくはゴーグルをつけている。イマースはしていない。ここは外の世界だ。外の世界なのだからワープなんてあるわけがない。ぼくはアリアの横顔を見つめたまま身に着けているゴーグルに触れた。アリアとぼくの間にメニューが浮かび上がる。たしかにエクステンドモードだった。ぼくはメニューに視線を走らせて位置情報を確認した。地図が表示され、現在位置が更新されていく。まっすぐの道路を移動しているのがわかる。地図の表示を変更してより広い範囲を表示する。本当にほっかいどうだった。ほっかいどうの中央付近だ。
「だけどぼくが列車に乗ってたのはどんなに長くても三十分ぐらいだよ。よこはまからあさひかわまで列車で三十分ってことはありえないよ」
「ゲームだからね」
アリアはあっさりと言って車を減速させ、ステアリングを切った。車は長い直線道路から外れて細い道路に入った。直線道路も片側一車線のそれほど広い道路ではなかったけれど、そこからそれた道路はさらに細くセンターラインがなかった。あさひかわの駅を降りてからここまで起伏がなくずっと平地だ。この付近は見渡す限り田畑でところどころに家屋がある以外は建物もなく、はるか遠くで空と地面を切り分けるように山々が並んでいた。その広大な平地の中を縦横に細い道路が走っていて、どの交差点でも道路は直角に交わっていた。上から見ればきっとグリッドのようになっているだろう。
アリアはその後もグリッドの線をあみだくじのように何度か折れながら進んだ。直線道路から最初に曲がった交差点も、その後の交差点もどれもランドマークになるものがなかった。視界の中で目印になりそうなものは遠くの山だけで、そんなものは道路を走るときにはなんの参考にもならない。こんな道は覚えられそうにないとぼくは思った。車は砂利道に入る。サスペンションの動きが大きくなる。その割にあまり揺れは強くならない。もともと舗装路よりもこういう場所を得意としている車なのだろう。
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