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信じてみよう、亡き母を。
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夜勤が明けて眠っていたら、16時頃に目が覚めた。
明日は母の命日だから、そこに添える手紙と花を。
大好きだったバームクーヘンを買いに、外へ出る。
「まどろみ」というBGMを聞きながら。
店に着いて花を選ぶ。
母が大好きだったかすみ草は見当たらない。
そこで目に留まったものは、なんの花かはわからない、枯れてしまったドライフラワー。
それはダメだと誰かが言った。
けど、私の目には、枯れてしまったその花が、どの花よりも美しく、粋な姿に見えたので、母に見合うそれを選んで、金を払って次へと向かう。
手紙を探して歩き回ると、そこにあった手紙の柄は子供のように幼くて、手に取ることも恥ずかしい。
その中にある、「綺麗」を感じたその手紙には、紙飛行機がついている。
空模様の中で飛ぶそれは、きっと母へと想いを運んでくれる。
そう思って手にした希望は、5度しか間違えられないから、緊張しながら筆を持とう。
最後に私が向かった先は、お菓子コーナーであり、魅惑の場所。
食べたいものがずらりと並ぶこの場所で、お目当てのものを探して歩く。
けど、どこにもそれは見当たらない。
ふと、目に入った甘栗に、母の食べる姿が重なった。
「これでいいか」と諦めて、それを持ってレジまで行くと、レジの前のワゴンの中に、母が好きなバームクーヘンが潜んでいた。
私はそれを手に取って、甘栗は元の場所に戻してあげた。
これでようやく家に帰れる。
と、思っていたのに。
急に母が恋しくなって、外の寒さが身に染みる。
こんなに母を思ったことは、近頃の中では見当たらず、久しいうちにも見当たらない。
母の顔がわからない。
母の声もわからない。
好きな物も曖昧だ。
でも、「母」だということは覚えている。
たとえ、それが私の作りだした「母」だとしても、「母」は「母」に違いない。
霞んでしまった思い出が、「母」を「母」にしようとしてる。
これを言葉に表すなら、「哀しい」が相応しい。
夕日が私を見つめている。
哀しい私に寄り添うように、家に着くまで隣を歩く。
カラスが空を飛んでいる。
特に意味はないけれど、なぜかそれを眺めていた。
手にしたこれらにかけた時間を、「ママへ」と始まる私の想いを、母が知ることはあるのだろうか。
母は泣いて、笑うだろうか。
わからない。
わからないから、不安になる。
でも、わからないから信じれる。
信じた先の絶望を、「生きているから」知れるなら。
死人となって生きてる母を、私はここで信じてみよう。
信じた先の絶望も、信じた先の幸せも、私はきっと知らないままに生きるのだから。
明日は母の命日だから、そこに添える手紙と花を。
大好きだったバームクーヘンを買いに、外へ出る。
「まどろみ」というBGMを聞きながら。
店に着いて花を選ぶ。
母が大好きだったかすみ草は見当たらない。
そこで目に留まったものは、なんの花かはわからない、枯れてしまったドライフラワー。
それはダメだと誰かが言った。
けど、私の目には、枯れてしまったその花が、どの花よりも美しく、粋な姿に見えたので、母に見合うそれを選んで、金を払って次へと向かう。
手紙を探して歩き回ると、そこにあった手紙の柄は子供のように幼くて、手に取ることも恥ずかしい。
その中にある、「綺麗」を感じたその手紙には、紙飛行機がついている。
空模様の中で飛ぶそれは、きっと母へと想いを運んでくれる。
そう思って手にした希望は、5度しか間違えられないから、緊張しながら筆を持とう。
最後に私が向かった先は、お菓子コーナーであり、魅惑の場所。
食べたいものがずらりと並ぶこの場所で、お目当てのものを探して歩く。
けど、どこにもそれは見当たらない。
ふと、目に入った甘栗に、母の食べる姿が重なった。
「これでいいか」と諦めて、それを持ってレジまで行くと、レジの前のワゴンの中に、母が好きなバームクーヘンが潜んでいた。
私はそれを手に取って、甘栗は元の場所に戻してあげた。
これでようやく家に帰れる。
と、思っていたのに。
急に母が恋しくなって、外の寒さが身に染みる。
こんなに母を思ったことは、近頃の中では見当たらず、久しいうちにも見当たらない。
母の顔がわからない。
母の声もわからない。
好きな物も曖昧だ。
でも、「母」だということは覚えている。
たとえ、それが私の作りだした「母」だとしても、「母」は「母」に違いない。
霞んでしまった思い出が、「母」を「母」にしようとしてる。
これを言葉に表すなら、「哀しい」が相応しい。
夕日が私を見つめている。
哀しい私に寄り添うように、家に着くまで隣を歩く。
カラスが空を飛んでいる。
特に意味はないけれど、なぜかそれを眺めていた。
手にしたこれらにかけた時間を、「ママへ」と始まる私の想いを、母が知ることはあるのだろうか。
母は泣いて、笑うだろうか。
わからない。
わからないから、不安になる。
でも、わからないから信じれる。
信じた先の絶望を、「生きているから」知れるなら。
死人となって生きてる母を、私はここで信じてみよう。
信じた先の絶望も、信じた先の幸せも、私はきっと知らないままに生きるのだから。
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