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10年後の約束
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ふたりは血のつながらない兄妹だ。それでも助け合って生きている。半分とはいえ、光莉と理乃は確かなつながりのある姉妹だったのに、どうして助け合って来れなかったのだろうと、途方に暮れる。
「そんな理乃でも、親のせいで苦しんだ彼女には幸せになってほしい気持ちが私にはあったんです。それなのに、思うだけで何にもしてあげられなかった。理乃は私に助けを求めてくれたのに……。だから最後ぐらいは、理乃のために犯人を見つけたいんです」
「なんだか、すごく綺麗事に聞こえるよ。本田さんは彼女が嫌いだったんだろう? 内心は死んでくれてホッとしてる。その気持ちを認めたくないから、彼女のためだなんて言ってるように聞こえるよ」
淡々とそう語る基哉の言葉に、光莉は胸に針が刺さるような痛みを覚える。図星だろう。理乃がいなくなって、光莉は未来永劫、彼女の執拗な執着から逃れられた。
「そうだったとしても、私は理乃を殺したいなんて思ったことはないです」
「こういったらなんだけど、今の話聞いてると、犯人だって苦しめられたかもしれないって思うよ。自首させるって簡単じゃない。だいたい、犯人に心あたりがあるんですか?」
「あります」
基哉の目を見て、きっぱりと答える。彼もまた、光莉の覚悟をしっかりと受け止めるように見つめ返してくる。
「でも、証拠がないんですよね。だから、自首を願ってる」
「はい。私は……、理乃のために苦しんだ人を憎めません。それでも、殺してほしくなかった。いつか、理乃がしてきたことは理乃に償ってほしかった」
理乃の怖さは誰よりも知っている。犯人は、苦しめられ、追い詰められ、殺してしまった。そうだったとしても、理乃の生きる権利まで奪う必要はなかっただろう。
「償う機会を奪ってしまった……か」
「すみません。こんな話をしてしまって」
光莉は立ち上がると、卒業アルバムをトートバッグにしまい、入り口へと向かう。
「本田さん」
ドアを開けようとすると、基哉に呼び止められる。いつの間にか、彼はカウンターを出てきていて、光莉の後ろにいた。
「なんですか?」
「今日、ここへ来ること、拓海くんには?」
「話してないです、誰にも。それが何か?」
「いや。もう少し待ってくれたら開店の時間です。よかったら、飲んでいきませんか?」
基哉はいつものように穏やかに笑む。
「いえ、帰ります」
光莉がドアに手をかけようとしたとき、基哉が取っ手をつかむ。
「もう少し、俺が話したいんです」
基哉は相変わらず、穏やかな表情でこちらを見下ろしている。しかし、彼の発した言葉は強引な響きを含んでいて、光莉は戸惑う。
「これから行くところがあるんです」
「どこに? 警察?」
探るような目を向けてきた基哉は、突如耳をそば立てるようにし、何を思ったのか、取っ手を押した。
ゆっくりドアが開く。外気が流れ込んできて、光莉は無意識に息をつく。と同時に、視界に入ってきた笑顔の女性に驚く。ドアの前に立っているのは、端山署の前山だった。
「前山さん?」
「奇遇ですね、本田さん」
彼女はそう言うと、基哉と千華へ視線を移し、店内の様子をうかがった。
「佐伯さん、お久しぶりです。お変わりはないですか?」
「ああ、刑事さん。見ての通り、細々とやってます」
基哉も前山とは面識があるようだ。
「そうですか。近くまで来たので寄らせてもらいました。お元気そうで何よりです」
「用事はそれだけですか?」
「まあ、パトロールみたいなものです。また寄らせてもらいます。本田さんはお帰りですか?」
不意にこちらへ視線を向けてくると、前山はドアをつかんで大きく開く。来たばかりなのに、もう帰るようだ。
「どうぞ」
「え……、ああ、はい。ありがとうございます」
前山に促された光莉は、面食らいながら店外へと足を踏み込んだ。
「そんな理乃でも、親のせいで苦しんだ彼女には幸せになってほしい気持ちが私にはあったんです。それなのに、思うだけで何にもしてあげられなかった。理乃は私に助けを求めてくれたのに……。だから最後ぐらいは、理乃のために犯人を見つけたいんです」
「なんだか、すごく綺麗事に聞こえるよ。本田さんは彼女が嫌いだったんだろう? 内心は死んでくれてホッとしてる。その気持ちを認めたくないから、彼女のためだなんて言ってるように聞こえるよ」
淡々とそう語る基哉の言葉に、光莉は胸に針が刺さるような痛みを覚える。図星だろう。理乃がいなくなって、光莉は未来永劫、彼女の執拗な執着から逃れられた。
「そうだったとしても、私は理乃を殺したいなんて思ったことはないです」
「こういったらなんだけど、今の話聞いてると、犯人だって苦しめられたかもしれないって思うよ。自首させるって簡単じゃない。だいたい、犯人に心あたりがあるんですか?」
「あります」
基哉の目を見て、きっぱりと答える。彼もまた、光莉の覚悟をしっかりと受け止めるように見つめ返してくる。
「でも、証拠がないんですよね。だから、自首を願ってる」
「はい。私は……、理乃のために苦しんだ人を憎めません。それでも、殺してほしくなかった。いつか、理乃がしてきたことは理乃に償ってほしかった」
理乃の怖さは誰よりも知っている。犯人は、苦しめられ、追い詰められ、殺してしまった。そうだったとしても、理乃の生きる権利まで奪う必要はなかっただろう。
「償う機会を奪ってしまった……か」
「すみません。こんな話をしてしまって」
光莉は立ち上がると、卒業アルバムをトートバッグにしまい、入り口へと向かう。
「本田さん」
ドアを開けようとすると、基哉に呼び止められる。いつの間にか、彼はカウンターを出てきていて、光莉の後ろにいた。
「なんですか?」
「今日、ここへ来ること、拓海くんには?」
「話してないです、誰にも。それが何か?」
「いや。もう少し待ってくれたら開店の時間です。よかったら、飲んでいきませんか?」
基哉はいつものように穏やかに笑む。
「いえ、帰ります」
光莉がドアに手をかけようとしたとき、基哉が取っ手をつかむ。
「もう少し、俺が話したいんです」
基哉は相変わらず、穏やかな表情でこちらを見下ろしている。しかし、彼の発した言葉は強引な響きを含んでいて、光莉は戸惑う。
「これから行くところがあるんです」
「どこに? 警察?」
探るような目を向けてきた基哉は、突如耳をそば立てるようにし、何を思ったのか、取っ手を押した。
ゆっくりドアが開く。外気が流れ込んできて、光莉は無意識に息をつく。と同時に、視界に入ってきた笑顔の女性に驚く。ドアの前に立っているのは、端山署の前山だった。
「前山さん?」
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「まあ、パトロールみたいなものです。また寄らせてもらいます。本田さんはお帰りですか?」
不意にこちらへ視線を向けてくると、前山はドアをつかんで大きく開く。来たばかりなのに、もう帰るようだ。
「どうぞ」
「え……、ああ、はい。ありがとうございます」
前山に促された光莉は、面食らいながら店外へと足を踏み込んだ。
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