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10年後の約束
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駅の改札を出る頃には、日は傾き始めていた。けれど、寄り道しても、拓海が帰宅するまでにはアパートへ戻れるだろう。
つかさ公園へと向かって歩き出す。拓海の撮影した写真の場所が、本当につかさ公園なのか、それを確かめたい気持ちがある。
彼のパソコンの中にあるすべてを、光莉は確認していない。日記はプライベートすぎて見られなかったし、写真だって、9月11日に撮影した分しか見ていない。
その中で、つかさ公園で撮られたであろう写真はたったの3枚だった。
一枚目は、公園入り口で撮られた空。二枚目は、階段をのぼり切った場所にあるであろう桜の木。そして三枚目は、ベンチの側に立つ理乃の姿。
光莉はバッグから一枚の写真を取り出す。三枚目の写真をプリントアウトしたものだ。解像度をあげるために時間を要してしまったが、理乃の表情や桜の樹肌、そして、右奥に映り込む人物の顔まで、はっきりと見て取れる。
どのようにしてこの写真が撮られたのか知りたい。光莉は何度も眺めて、この一枚が伝えたいものを考えた。しかし、なかなか見えてこない。それはきっと、これが偶発的に撮られたものだからだ。
つかさ公園へ到着すると、迷うことなく階段をのぼった。そして、写真を目の前に掲げて、拓海が歩いたであろう方向へ進んだ。
9月11日の夜、拓海はつかさ公園を訪れた。ベンチから見下ろせる端山の街を撮るために。
しかし、ベンチには先客がいた。上品なベージュのワンピースをまとう女性。拓海の足音に気づいた彼女が振り向いたとき、彼は驚いたのだろう。それが、理乃だったから。だから思わず、シャッターを切ってしまった。
高校以来の再会だったのだろうか。理乃は意外そうな表情をしている。彼女はこのあと、拓海とどんな話をしたのだろう。そして、どのようにして事件に巻き込まれたのか。そのとき、拓海はどうしていたのか。想像はかき立てられるが、何もわからない。わかるのは、これが理乃の生前最後の姿ということだけだ。
ベンチに腰掛けると、バッグの中で鳴る着信音に気づく。いつから鳴っていたのだろう。あわててスマートフォンを取り出す。知らない番号からの電話だ。仕事の依頼かもしれない。光莉はちゅうちょなく電話に出る。
「もしもし、本田です」
「ああ、本田さん。警視庁の若村です。前山に依頼されていた件で電話したのですが、お時間よろしいですか?」
淡々と若村はそう言う。
「依頼?」
「お忘れですか? 佐伯基哉の恋人の件ですよ」
「あ、はい。お願いしました。それで、どうして若村さんが?」
「急ぎ、知らせた方がいいと思いましてね。前山はシオンへ向かっていますので、私が代わりに」
「シオンに? じゃあ……」
空を見上げる。いつの間にか、日が沈んでいる。シオンはそろそろオープンする時間だろう。
「ええ、複数の目撃証言から、佐伯の恋人は松村理乃と判明しました」
駅の改札を出る頃には、日は傾き始めていた。けれど、寄り道しても、拓海が帰宅するまでにはアパートへ戻れるだろう。
つかさ公園へと向かって歩き出す。拓海の撮影した写真の場所が、本当につかさ公園なのか、それを確かめたい気持ちがある。
彼のパソコンの中にあるすべてを、光莉は確認していない。日記はプライベートすぎて見られなかったし、写真だって、9月11日に撮影した分しか見ていない。
その中で、つかさ公園で撮られたであろう写真はたったの3枚だった。
一枚目は、公園入り口で撮られた空。二枚目は、階段をのぼり切った場所にあるであろう桜の木。そして三枚目は、ベンチの側に立つ理乃の姿。
光莉はバッグから一枚の写真を取り出す。三枚目の写真をプリントアウトしたものだ。解像度をあげるために時間を要してしまったが、理乃の表情や桜の樹肌、そして、右奥に映り込む人物の顔まで、はっきりと見て取れる。
どのようにしてこの写真が撮られたのか知りたい。光莉は何度も眺めて、この一枚が伝えたいものを考えた。しかし、なかなか見えてこない。それはきっと、これが偶発的に撮られたものだからだ。
つかさ公園へ到着すると、迷うことなく階段をのぼった。そして、写真を目の前に掲げて、拓海が歩いたであろう方向へ進んだ。
9月11日の夜、拓海はつかさ公園を訪れた。ベンチから見下ろせる端山の街を撮るために。
しかし、ベンチには先客がいた。上品なベージュのワンピースをまとう女性。拓海の足音に気づいた彼女が振り向いたとき、彼は驚いたのだろう。それが、理乃だったから。だから思わず、シャッターを切ってしまった。
高校以来の再会だったのだろうか。理乃は意外そうな表情をしている。彼女はこのあと、拓海とどんな話をしたのだろう。そして、どのようにして事件に巻き込まれたのか。そのとき、拓海はどうしていたのか。想像はかき立てられるが、何もわからない。わかるのは、これが理乃の生前最後の姿ということだけだ。
ベンチに腰掛けると、バッグの中で鳴る着信音に気づく。いつから鳴っていたのだろう。あわててスマートフォンを取り出す。知らない番号からの電話だ。仕事の依頼かもしれない。光莉はちゅうちょなく電話に出る。
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「依頼?」
「お忘れですか? 佐伯基哉の恋人の件ですよ」
「あ、はい。お願いしました。それで、どうして若村さんが?」
「急ぎ、知らせた方がいいと思いましてね。前山はシオンへ向かっていますので、私が代わりに」
「シオンに? じゃあ……」
空を見上げる。いつの間にか、日が沈んでいる。シオンはそろそろオープンする時間だろう。
「ええ、複数の目撃証言から、佐伯の恋人は松村理乃と判明しました」
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