16 / 75
理乃の行方
5
しおりを挟む
光莉が理乃の存在を知ったのは、小学生のときだった。理乃は小学6年の春、光莉のいる小学校に転校してきた。
「転校生の松村理乃さんです。みなさん、仲良くしてあげてくださいね」
先生の紹介で、にっこりとほほえんだ理乃は、すぐにクラスメイトをとりこにした。細身で大人っぽくて、髪の毛はさらさら、コスメや美容に詳しい彼女は、瞬く間に女の子たちの憧れの存在になった。
光莉もまた、理乃と友だちになりたいと思った。だから、光莉の仲良くするグループに入れてあげた。しかし、光莉は次第に友だちに無視されるようになった。中でも、親友だと思っていた陽奈の変貌ぶりはあからさまだった。
ある時、先生に呼び出され、光莉が友だちの悪口を言っているとか、クラスメイトの消しゴムを盗んだり、運動靴を隠したり、嫌がらせをしているんじゃないかといううわさがあるが、本当か? と聞かれた。「お父さんお母さんには言わないから、先生にだけ本当のことを教えて」と。
光莉は違うと否定したが、信じてもらえなかった。だけど、光莉はめげなかった。変なうわさに負けるもんか、とある時までは思っていたのだ。
夏休み前には、光莉の周りから友だちがいなくなった。正直、学校に行きたくない日ばかりだった。それでも、理乃の観察をするために学校に通った。
男の子に人気のあるかわいいクラスメイトの女の子が急に学校に来なくなったり、元気のいい男の子が理乃を嫌う女の子をからかったり、クラスにおかしなことが起きるようになったのは、理乃が転校してきてからだ。
きっと全部、理乃のせいだ。理乃は気に入らない子を傷つけることに長けていて、彼女と仲の良い子はみんな操られてるんだ。本気でそう思っていた。
あれは、夏休みに入る直前の終業式の日のことだ。理乃は一人で帰宅する光莉の前に仁王立ちした。理乃の後ろでは、かつて光莉の親友だった陽奈が、傷ついた顔をしてこちらを見ていた。
「私は5月6日生まれ。光莉は8月3日。光莉より先に生まれたから、私がお姉さん」
まるで、はやく生まれた方が偉いんだ、と言わないばかりに理乃は居丈高だった。
「だから、何?」
反抗的な目で、光莉は理乃をにらみつけた。
「妹が悪いことしたら、姉が叱らないとね」
「悪いことなんてしてない」
「してるでしょ。昨日だって見たんだから。信くんと仲良くしてたでしょ」
「信くんは同じ係だよ」
「そうやって近づいたんでしょ? 信くんと陽奈ちゃんが仲良しだって知ってて」
ハッと、光莉は陽奈を見た。彼女は泣き出しそうな顔で、唇をきつく結んでいた。
理乃の言う通りだ。陽奈は信がずっと好きだった。「内緒だよ」「光莉ちゃんにだけ」「親友だから」って、陽奈は光莉に恥ずかしそうに、恋心を教えてくれたんだった。
「転校生の松村理乃さんです。みなさん、仲良くしてあげてくださいね」
先生の紹介で、にっこりとほほえんだ理乃は、すぐにクラスメイトをとりこにした。細身で大人っぽくて、髪の毛はさらさら、コスメや美容に詳しい彼女は、瞬く間に女の子たちの憧れの存在になった。
光莉もまた、理乃と友だちになりたいと思った。だから、光莉の仲良くするグループに入れてあげた。しかし、光莉は次第に友だちに無視されるようになった。中でも、親友だと思っていた陽奈の変貌ぶりはあからさまだった。
ある時、先生に呼び出され、光莉が友だちの悪口を言っているとか、クラスメイトの消しゴムを盗んだり、運動靴を隠したり、嫌がらせをしているんじゃないかといううわさがあるが、本当か? と聞かれた。「お父さんお母さんには言わないから、先生にだけ本当のことを教えて」と。
光莉は違うと否定したが、信じてもらえなかった。だけど、光莉はめげなかった。変なうわさに負けるもんか、とある時までは思っていたのだ。
夏休み前には、光莉の周りから友だちがいなくなった。正直、学校に行きたくない日ばかりだった。それでも、理乃の観察をするために学校に通った。
男の子に人気のあるかわいいクラスメイトの女の子が急に学校に来なくなったり、元気のいい男の子が理乃を嫌う女の子をからかったり、クラスにおかしなことが起きるようになったのは、理乃が転校してきてからだ。
きっと全部、理乃のせいだ。理乃は気に入らない子を傷つけることに長けていて、彼女と仲の良い子はみんな操られてるんだ。本気でそう思っていた。
あれは、夏休みに入る直前の終業式の日のことだ。理乃は一人で帰宅する光莉の前に仁王立ちした。理乃の後ろでは、かつて光莉の親友だった陽奈が、傷ついた顔をしてこちらを見ていた。
「私は5月6日生まれ。光莉は8月3日。光莉より先に生まれたから、私がお姉さん」
まるで、はやく生まれた方が偉いんだ、と言わないばかりに理乃は居丈高だった。
「だから、何?」
反抗的な目で、光莉は理乃をにらみつけた。
「妹が悪いことしたら、姉が叱らないとね」
「悪いことなんてしてない」
「してるでしょ。昨日だって見たんだから。信くんと仲良くしてたでしょ」
「信くんは同じ係だよ」
「そうやって近づいたんでしょ? 信くんと陽奈ちゃんが仲良しだって知ってて」
ハッと、光莉は陽奈を見た。彼女は泣き出しそうな顔で、唇をきつく結んでいた。
理乃の言う通りだ。陽奈は信がずっと好きだった。「内緒だよ」「光莉ちゃんにだけ」「親友だから」って、陽奈は光莉に恥ずかしそうに、恋心を教えてくれたんだった。
0
あなたにおすすめの小説
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
7歳の侯爵夫人
凛江
恋愛
ある日7歳の公爵令嬢コンスタンスが目覚めると、世界は全く変わっていたー。
自分は現在19歳の侯爵夫人で、23歳の夫がいるというのだ。
どうやら彼女は事故に遭って12年分の記憶を失っているらしい。
目覚める前日、たしかに自分は王太子と婚約したはずだった。
王太子妃になるはずだった自分が何故侯爵夫人になっているのかー?
見知らぬ夫に戸惑う妻(中身は幼女)と、突然幼女になってしまった妻に戸惑う夫。
23歳の夫と7歳の妻の奇妙な関係が始まるー。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
雪とともに消えた記憶~冬に起きた奇跡~
梅雨の人
恋愛
記憶が戻らないままだったら…そうつぶやく私にあなたは
「忘れるだけ忘れてしまったままでいい。君は私の指のごつごつした指の感触だけは思い出してくれた。それがすべてだ。」
そういって抱きしめてくれた暖かなあなたのぬくもりが好きよ。
雪と共に、私の夫だった人の記憶も、全て溶けて消えてしまった私はあなたと共に生きていく。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる