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証明
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しおりを挟むリンゴジュースを飲み終わるとすぐ、のんちゃんが観覧車に乗りたいと言うから、私と啓介は噴水の見えるベンチに座って、のんちゃんを挟んで並ぶ芹奈と誠也さんの後ろ姿を見送った。
「のんちゃん、かわいいよね。だんだん、芹奈に似てくると思わない?」
「それ、誠也さんも言ってたなぁ。幼稚園の送迎も芹奈がやってるみたいでさ、周りも本当の親子だって思ってるって」
「だから、ママって呼ぶのかな?」
「そうだろうな。否定したりしないで受け入れてくれる芹奈に感謝してるって言ってたよ」
「誠也さんも嫌がってないんだもんね。本当に本当の親子になる日が来たりして」
冗談めかして言うのに、わりと啓介は大真面目にうなずく。
「芹奈次第じゃね?」
「芹奈次第って?」
「誠也さんさ、これから芹奈にプロポーズするって」
「えっ? 本当? どういうこと?」
「気づかなかった? 誠也さん、ずっと芹奈が好きでさー。芹奈の母親にも許可もらったらしい」
目を丸くする私をおかしそうに眺めて、彼はそう言う。
じゃあ、お母さんが芹奈に何か言いたそうだって言ってたのは……。
「反対されてない?」
「反対はしないけど、賛成もしなくて、心配はしてる感じだってさ。お姉さんがってより、芹奈の体調を心配してるのかもな。お姉さんを病気で亡くしたのに、芹奈も……って心配なんだろ」
「芹奈、そんなに具合良くないのかな?」
最近は体調を崩すことも減ったと聞いていたけど。
「誠也さんの話だと、手術も成功してるし、予後もいいって。あとは再発の心配なんだろうな。でもさ、だからこそ、結婚してずっと守っていきたいんだってさ」
「誠也さんは本気なんだね」
「やっぱり、結婚するってさ、本気度の証明って感じするよなぁ」
しみじみとそう言った啓介は、観覧車の方へと視線を移す。
「あ、あれかな」
色とりどりのゴンドラがゆっくりと回るのを眺めていると、啓介が赤いゴンドラを指差す。背の高い男の人と、こちらを見下ろしている小さな女の子、その女の子に寄り添う女の人の姿が遠目に見える。
「そうだね。芹奈たちだよ」
3人を乗せたゴンドラはどんどん上へと上がっていく。のんちゃんはまだこちらを見ている。手を振ろうとしたそのとき、芹奈が前を向く。誠也さんが何か話しかけたみたい。
一番高いところに到達するころには3人の姿が見えなくなって、降りてくる赤いゴンドラを目で追う。
「うまくいったかな」
啓介がつぶやいたとき、赤いゴンドラは地上に到着して、のんちゃんを抱き上げた誠也さんと、うつむく芹奈が降りてくる。
芹奈は噴水広場まで歩いてくると、両手で顔を覆ってうずくまる。誠也さんがあわててしゃがむと、のんちゃんも心配そうに彼女の顔をのぞき込む。
誠也さんが背中をさすり、芹奈は顔をあげる。ほおを伝う涙をぬぐうしぐさをする彼を真似るように、のんちゃんも彼女のほおをぺたぺた触る。
泣き笑いの彼女の指に、きらりと何かが光ってる。あれはきっと、薬指。
「よかったな、誠也さん」
啓介がほっと息をつくから、私も穏やかな気持ちでうなずいた。
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