プラトニックな事実婚から始めませんか?

水城ひさぎ

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「みんなで集まるの、久しぶりじゃない? マンションに遊びに来てもらって以来かも」
「本当だよね。でもさ、遊園地でよかった? ここって、子ども向けの乗り物ばっかりだから」

 たまたま日曜日休みが取れたから、芹奈に遊びに行かないかと誘ったのは、先週のことだ。

 だったらと、私と啓介、芹奈、誠也さん、のんちゃんの5人で、地元の子どもたちに人気の遊園地に行こうという話になった。なんでも、のんちゃんはこの遊園地にある電車の乗り物が大好きらしい。

「意外と、啓介も子煩悩だよね」

 のんちゃんを連れて何回目かの電車の乗り物に乗っている誠也さんと啓介に手を振りながら、芹奈がそう言う。

「あれは、誠也さんと一緒にいたい感じじゃないのかな?」

 遊園地に着いてからというもの、啓介は誠也さんとおしゃべりばかりしている。

「あのふたり、仲良しだよね、ほんとに」
「向こうも、私たちのことそう思ってるよ。また乗るみたいだから、今のうちに飲み物買っておこうか」

 短い列の最後尾にふたたび並ぶ3人を見てそう言うと、芹奈とともに売店へ向かう。

「のんちゃん、ここのリンゴジュース好きなんだよね」
「よく来るの?」
「うん。ここ、私のね、思い出の場所なんだー」

 芹奈は優しい顔をしてそう言う。

「どんな思い出? って聞いていい?」
「うん。私が誠也さんとのんちゃんと3人で初めて遊びに来た場所なんだよね。近場はお姉ちゃんと誠也さんの思い出のある場所ばっかりだけど、ここにはお姉ちゃんと来たことないって」
「そうなんだね。やっぱり、お姉さんのことは意識しちゃうよね」
「だよね。でももう、考えるのやめにする」

 普段からあまり強気の発言をしない彼女が決意を表明するみたいに言うから、ちょっと驚く。

「やめにするって?」
「お盆にお墓参り行ってきてね、お姉ちゃんには謝ったんだ。でも、好きなものは好きだから仕方ないでしょって、強気に話しちゃった」
「気持ち、伝わったかな」
「伝わってるといいな。でも、好きなだけならいいよね?」

 情けなさそうに眉をさげるから、励ましたくなる。

「もしかしたら、お姉さんが許してくれるときには、芹奈にもいいことが起きるかも」
「いいことかぁ。あ、ねぇ、祥子は? 祥子はいいことあった?」
「私? 全然ないよ。……って、ないって言い方も変だよね。啓介とは順調だよ。こんなにも合う人っていたんだって驚くぐらい」

 なんでもない話も楽しげに聞いてくれる啓介と過ごす時間が大切で、私を甘やかす彼が甘えてくる夜も愛おしい。

「羨ましいー。毎日があたりまえのようにいいことだらけってことだもんね。それだけ合うなら、結婚の話とか出ないの?」
「うーん。最初のときの方が、そういうの意識してたのかも。今はそういう話もしないよ。このままずっと一緒にいられたらいいねって、お互いに思ってるんだと思う」
「そうなんだねぇ。じゃあ、私たち、お互いに何も変わらないままだね」
「あ、本当だね」

 顔を見合わせてクスッと笑ったとき、乗り物から降りてきたのんちゃんが、「ママー」って芹奈に向かって駆けてくるのが見えた。
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