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強欲な甘い誘惑
ホテルにて(2)
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「どなたかへのプレゼントですか?」
私は、ブティック『リトルグレイス』で正社員として働いている。
リトルグレイスは、店長である美梨さんが、新進気鋭のデザイナーから直接買い付けてきた商品を販売している。そのお値段から、お客様のほとんどが30代以上の女性だ。
佑磨さんがお客様としてやってきたのは、一週間ほど前になる。
プレゼントを探してると、男性がやってくることはあるけれど、大抵は奥さまや彼女同伴。20代の青年が、ひとりで来店するのは珍しかった。
珍しいのは、それだけじゃない。購入したブレスレットを預かってほしい。そして、指定した時間に、プレゼント用に包んでホテルに届けてほしい、と言い出したのだ。
美梨さんも、お届けはやってないと断ってくれたらいいのに、光栄なことだから、と引き受けてしまった。そして、こうして私が届けに来たのだけれど。
「つばさにね、似合うと思ったんだ」
「わ、私ですか?」
佑磨さんは、私が気持ちを込めて綺麗に結んだ金のリボンをするりと解いて、グレイの箱からブレスレットを取り出した。
私へのプレゼントを自身で包んでいたとはなんとも滑稽だけれど、目の前に現れた輝きにはやはり、うっとりしてしまう。
気品のある繊細な、イエローサファイアのブレスレットの落ち着きあるデザインは、23歳の女性には早すぎる。
「私には、上品すぎます……」
さすがというのか、佑磨さんは女性の扱いになれている。戸惑う私の手を引き、優しくはめてくれる。
「俺の妻になる人には、このぐらいがちょうどいい」
「え、妻……?」
面食らって顔をあげると、佑磨さんの顔が目の前にあった。
美しく整った顔立ちに、息を飲む。
お客様だと思うからこそ、あまり気にしていなかったけれど、引き締まった表情には強い意思があり、目、鼻、口の造作を構成するすべてに、一分のすきもない神々しさが与えられている。
海堂グループの御曹司。それはもっとも、彼にふさわしい称号に思えた。
「俺たちを邪魔する者は誰もいない。今夜はゆっくり親睦を深めようじゃないか」
佑磨さんに見惚れているうちに、唇が近づく。触れ合いそうになって、驚いて身をすくめる。
「ま、待って……ください」
「待て、なんて言う女は知らない」
佑磨さんの誘惑を拒む女性なんていないのだろう。こんなに美しい男に迫られたら、誰だって恋に落ちたくなる。
「でも、だめ……です」
「それは、していいの意味か」
彼は唇の端をあげて笑むと、少し強引にあごを引き寄せて唇を重ねてきた。それは唐突なのに、とても自然だった。
あまりに手慣れているから、ぼう然としてしまう。目が合ったら、ほおが上気したのがわかる。
「かわいいな」
そう、ささやいた唇が二度三度と重なると、深く重なってきた。薄い唇からは想像もできないほどの情熱が伝わってくる。
知らず、つかんでいた佑磨さんの腕に指が食い込む。
だめだと思うのに、甘いため息が漏れてしまう。
『美梨さん、お届け先、ホテルですよ?』
『あら、本当。海堂さん、ホテル暮らしだって聞いたことあったけど、本当だったのね。きっとスイートよ』
『スイートとか、そうじゃなくて。ちょっと心配ですよね?』
お届け先がホテルと知ったとき、佑磨さんが私をどうこうしようとするなんて信じてなかったけれど、不安だと伝えたら、美梨さんはにやにやしてたんだっけ。
『いいじゃなーい。あの、海堂グループの海堂さんよ? もしかしたら、もしかしちゃう?』
『もしかして、なんてありませんよ』
そう否定したけれど、もしかしたら、淡い期待を抱いていたのかもしれない。そのぐらい、佑磨さんは女性の心を簡単に奪う容姿をしてる。
でも……。
うっすら開いた目に、リビングと続き間になっているベッドルームが見えた。
私、抱かれるの……佑磨さんに。
「こんな……だめ……」
さんざんキスを受け入れた後だったけれど、突き放す。
その存在を知っていたとはいえ、初対面に近い男の人をどうしても簡単には受け入れられなくて、胸を押した。
「やっと、見つけたんだ。手放すわけにはいかない」
あっけなく私から離れた彼だが、それは、強引にしようとすれば簡単な彼の優しさでしかなく、立ちあがろうとすると、すぐに手をつかまれてしまう。
「やっと、って……?」
「ひとめぼれだ」
「え……」
そう言われて思い出すのは、月初めにあったウェディングドレス試着会のことだった。
たしかにあの日、私は佑磨さんに会った。
あの一瞬で、ひとめぼれしたというの……?
私は、ブティック『リトルグレイス』で正社員として働いている。
リトルグレイスは、店長である美梨さんが、新進気鋭のデザイナーから直接買い付けてきた商品を販売している。そのお値段から、お客様のほとんどが30代以上の女性だ。
佑磨さんがお客様としてやってきたのは、一週間ほど前になる。
プレゼントを探してると、男性がやってくることはあるけれど、大抵は奥さまや彼女同伴。20代の青年が、ひとりで来店するのは珍しかった。
珍しいのは、それだけじゃない。購入したブレスレットを預かってほしい。そして、指定した時間に、プレゼント用に包んでホテルに届けてほしい、と言い出したのだ。
美梨さんも、お届けはやってないと断ってくれたらいいのに、光栄なことだから、と引き受けてしまった。そして、こうして私が届けに来たのだけれど。
「つばさにね、似合うと思ったんだ」
「わ、私ですか?」
佑磨さんは、私が気持ちを込めて綺麗に結んだ金のリボンをするりと解いて、グレイの箱からブレスレットを取り出した。
私へのプレゼントを自身で包んでいたとはなんとも滑稽だけれど、目の前に現れた輝きにはやはり、うっとりしてしまう。
気品のある繊細な、イエローサファイアのブレスレットの落ち着きあるデザインは、23歳の女性には早すぎる。
「私には、上品すぎます……」
さすがというのか、佑磨さんは女性の扱いになれている。戸惑う私の手を引き、優しくはめてくれる。
「俺の妻になる人には、このぐらいがちょうどいい」
「え、妻……?」
面食らって顔をあげると、佑磨さんの顔が目の前にあった。
美しく整った顔立ちに、息を飲む。
お客様だと思うからこそ、あまり気にしていなかったけれど、引き締まった表情には強い意思があり、目、鼻、口の造作を構成するすべてに、一分のすきもない神々しさが与えられている。
海堂グループの御曹司。それはもっとも、彼にふさわしい称号に思えた。
「俺たちを邪魔する者は誰もいない。今夜はゆっくり親睦を深めようじゃないか」
佑磨さんに見惚れているうちに、唇が近づく。触れ合いそうになって、驚いて身をすくめる。
「ま、待って……ください」
「待て、なんて言う女は知らない」
佑磨さんの誘惑を拒む女性なんていないのだろう。こんなに美しい男に迫られたら、誰だって恋に落ちたくなる。
「でも、だめ……です」
「それは、していいの意味か」
彼は唇の端をあげて笑むと、少し強引にあごを引き寄せて唇を重ねてきた。それは唐突なのに、とても自然だった。
あまりに手慣れているから、ぼう然としてしまう。目が合ったら、ほおが上気したのがわかる。
「かわいいな」
そう、ささやいた唇が二度三度と重なると、深く重なってきた。薄い唇からは想像もできないほどの情熱が伝わってくる。
知らず、つかんでいた佑磨さんの腕に指が食い込む。
だめだと思うのに、甘いため息が漏れてしまう。
『美梨さん、お届け先、ホテルですよ?』
『あら、本当。海堂さん、ホテル暮らしだって聞いたことあったけど、本当だったのね。きっとスイートよ』
『スイートとか、そうじゃなくて。ちょっと心配ですよね?』
お届け先がホテルと知ったとき、佑磨さんが私をどうこうしようとするなんて信じてなかったけれど、不安だと伝えたら、美梨さんはにやにやしてたんだっけ。
『いいじゃなーい。あの、海堂グループの海堂さんよ? もしかしたら、もしかしちゃう?』
『もしかして、なんてありませんよ』
そう否定したけれど、もしかしたら、淡い期待を抱いていたのかもしれない。そのぐらい、佑磨さんは女性の心を簡単に奪う容姿をしてる。
でも……。
うっすら開いた目に、リビングと続き間になっているベッドルームが見えた。
私、抱かれるの……佑磨さんに。
「こんな……だめ……」
さんざんキスを受け入れた後だったけれど、突き放す。
その存在を知っていたとはいえ、初対面に近い男の人をどうしても簡単には受け入れられなくて、胸を押した。
「やっと、見つけたんだ。手放すわけにはいかない」
あっけなく私から離れた彼だが、それは、強引にしようとすれば簡単な彼の優しさでしかなく、立ちあがろうとすると、すぐに手をつかまれてしまう。
「やっと、って……?」
「ひとめぼれだ」
「え……」
そう言われて思い出すのは、月初めにあったウェディングドレス試着会のことだった。
たしかにあの日、私は佑磨さんに会った。
あの一瞬で、ひとめぼれしたというの……?
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