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強欲な甘い結婚
父との会食(1) ※佑磨side
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イカのカルパッチョにズワイガニのリゾット、牛ヒレのソテーとティラミスを、つばさはおいしそうに食べた。
気持ちのいい食べっぷりは、実に小気味がよかった。かつ、上品に食べるのだから、なおさらだ。
またごちそうすると言えば、戸惑っていたが、もう会いたくないとは言わなかった。無論、拒まれてもあきらめるつもりはないのだが。
レストランを出ると、和希を呼び出し、つばさを自宅まで送った。その足で、父親の待つ料亭へと車を向かわせている。
「本日は楽しまれたようですね。つばささんの笑顔も見られました」
和希は運転に集中していればいいのに、余計なことを言う。
どうせ、一晩でつばさを落とせなかった俺を見て、楽しんでいるのだ。和希は昔からいいやつだが、人をおちょくるのが好きなやつでもある。
「そうか? 試着会のときのつばさは、もっと楽しそうだったけどな」
「それはそうですよ。憧れのハルカ・モトミヤに興奮しておられました」
「よほどのファンだな」
「ファンだとお困りですか?」
「ん? いや、別に」
肩をすくめて、ルームミラーに映る和希から目をそらす。
帰り際、つばさはやたらと親しげに和希に話しかけていた。
試着会では、無理矢理、モデルをお願いして申し訳なかったとか、おかげでとてもいい写真が撮れたとか、ずっと礼が言いたかったのだと、ほっとした様子だった。
あの日、モデルの話が俺にあれば、あの笑顔を向けられたのは、きっと俺だったのに。
「何も、和希が撮影に協力する必要はなかったんだ」
つい、不機嫌にこぼしたとき、車は大通り沿いに停車した。どうやら、到着したらしい。
「高山さんからお話をいただいたときは驚きましたけどね、接触するいい機会でしたので」
「なんの話だ?」
「内偵中の娘でしたので、会ってみたくなったんですよ」
「……だから、職務中に遊んでたのか」
知らなかったのは、俺だけか。気分が悪い。
「遊ぶとか、言葉がお悪い。すべては佑磨さんのためですよ」
「なんでも俺のためって言ってれば、許されると思うなよ」
「そんなに、つばささんとのウェディングフォトが気に入りませんでしたか」
和希はくすくす笑う。彼が優位に立つと、ろくな会話にならない。
無言でいると、和希は車外へ出て、後部座席のドアを開けた。
車を降り、ふと、和希へ目を向ける。
「なあ、和希」
「なんでしょう?」
「つばさ、元気がないように見えなかったか?」
俺たちの車を見送るつばさは、手を振っているのに笑顔じゃなかった。
「そうでしたか。あまり、気になりませんでしたが。よほど、気になることが?」
「ちょっとした違和感というのかな」
食事中もそうだった。料理をおいしそうに食べつつも、時折、はかなげな表情を見せたりもしていた。
何より、「実は……」と、何か言いかけてはぐらかした様子には違和感しかなかった。言いたくても言えない悩みを抱えているように見えた。
「次に会うときに聞かれてみては?」
「そうだな」
素直にうなずく俺の殊勝な態度が珍しかったのか、和希は笑いをかみ殺すような表情を浮かべ、「お帰りまで、お待ちしています」と頭を下げた。
イカのカルパッチョにズワイガニのリゾット、牛ヒレのソテーとティラミスを、つばさはおいしそうに食べた。
気持ちのいい食べっぷりは、実に小気味がよかった。かつ、上品に食べるのだから、なおさらだ。
またごちそうすると言えば、戸惑っていたが、もう会いたくないとは言わなかった。無論、拒まれてもあきらめるつもりはないのだが。
レストランを出ると、和希を呼び出し、つばさを自宅まで送った。その足で、父親の待つ料亭へと車を向かわせている。
「本日は楽しまれたようですね。つばささんの笑顔も見られました」
和希は運転に集中していればいいのに、余計なことを言う。
どうせ、一晩でつばさを落とせなかった俺を見て、楽しんでいるのだ。和希は昔からいいやつだが、人をおちょくるのが好きなやつでもある。
「そうか? 試着会のときのつばさは、もっと楽しそうだったけどな」
「それはそうですよ。憧れのハルカ・モトミヤに興奮しておられました」
「よほどのファンだな」
「ファンだとお困りですか?」
「ん? いや、別に」
肩をすくめて、ルームミラーに映る和希から目をそらす。
帰り際、つばさはやたらと親しげに和希に話しかけていた。
試着会では、無理矢理、モデルをお願いして申し訳なかったとか、おかげでとてもいい写真が撮れたとか、ずっと礼が言いたかったのだと、ほっとした様子だった。
あの日、モデルの話が俺にあれば、あの笑顔を向けられたのは、きっと俺だったのに。
「何も、和希が撮影に協力する必要はなかったんだ」
つい、不機嫌にこぼしたとき、車は大通り沿いに停車した。どうやら、到着したらしい。
「高山さんからお話をいただいたときは驚きましたけどね、接触するいい機会でしたので」
「なんの話だ?」
「内偵中の娘でしたので、会ってみたくなったんですよ」
「……だから、職務中に遊んでたのか」
知らなかったのは、俺だけか。気分が悪い。
「遊ぶとか、言葉がお悪い。すべては佑磨さんのためですよ」
「なんでも俺のためって言ってれば、許されると思うなよ」
「そんなに、つばささんとのウェディングフォトが気に入りませんでしたか」
和希はくすくす笑う。彼が優位に立つと、ろくな会話にならない。
無言でいると、和希は車外へ出て、後部座席のドアを開けた。
車を降り、ふと、和希へ目を向ける。
「なあ、和希」
「なんでしょう?」
「つばさ、元気がないように見えなかったか?」
俺たちの車を見送るつばさは、手を振っているのに笑顔じゃなかった。
「そうでしたか。あまり、気になりませんでしたが。よほど、気になることが?」
「ちょっとした違和感というのかな」
食事中もそうだった。料理をおいしそうに食べつつも、時折、はかなげな表情を見せたりもしていた。
何より、「実は……」と、何か言いかけてはぐらかした様子には違和感しかなかった。言いたくても言えない悩みを抱えているように見えた。
「次に会うときに聞かれてみては?」
「そうだな」
素直にうなずく俺の殊勝な態度が珍しかったのか、和希は笑いをかみ殺すような表情を浮かべ、「お帰りまで、お待ちしています」と頭を下げた。
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