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強欲な甘い結婚
初デート(2)
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佑磨さんは、レストランの中へ天ヶ瀬さんを帯同しなかった。てっきり、三人で食事するものだと思っていたから、入店と同時に緊張してきてしまった。
彼の行きつけだというレストランは会員制で、入り口を入って右手にカウンター席、左手にテーブル席があった。
しかし、そのどちらにも案内されず、高級感あふれるシャンデリアが照る店内を進んだ。
つきあたりにある、シックに光るブラックの扉を男性店員が開く。
個室のようだ。二人がけのソファーの前に、猫脚のテーブルが置かれている。
ソファーに並んで腰かけると、佑磨さんはメニュー表を見せてくれた。一番上に季節の料理長おすすめメニューがあり、その下にずらりと単品メニューが並んでいる。
コースでもアラカルトでも、どちらでもいいというから、気になるメニューを一つずつ質問して、なんとか注文した。
ワインを勧められると、「彼女、ワインは苦手だから、料理に合う別のもので」と、佑磨さんは言ってくれた。
飲み物はおまかせでオーダーし、店員が個室を出ていくと、早速、彼は肩に腕を回してきた。
腰かけたときから、こうなるのはわかっていたけれど、隣り合わせで体を寄せ合うのは、やっぱり緊張する。
「そういえば、本宮さんに聞いたよ。つばさの試着した新作ウェディングドレスはかなり好評だそうだ」
「そうなんですか? すごくきれいなドレスだったので、やっぱり選ばれますよね」
着る人を選びそうなプリンセスラインのドレスなのに、スカートのふくらみを調整してもらったりして、私に似合うデザインになった。
本当に、ハルカ・モトミヤのドレスは多くの人に愛されるデザインだと思う。
「ああいうドレスがまた着たいか?」
「また着たい……って?」
佑磨さんは「とぼけるな」と、くすりと笑う。
「ハルカ・モトミヤがよければ、オーダーしよう。結婚式はどのみち、はやくても来年になる。じっくりデザインを考えてもらうといい」
「き、気がはやいです」
「そうか?」
「だって私たち、まだ付き合ってないですし」
「付き合うさ、必ず」
それは、そういう関係になるまで諦めない、と宣言したのだろうか。
どうして私なのだろう。ほかにいくらでも、きれいな人に出会えるのに。
「そんなにウェディングドレス、似合ってましたか?」
ウェディングドレス姿だったから、ひとめぼれしたのだろう。そうじゃなかったら、私に気づきもしないと思う。
「衝撃的だったね。なんで隣に和希がいるんだって嫉妬するぐらいには」
「あれは、写真撮りをお願いしただけで……」
「理由なんて関係ない。つばさの隣にいていいのは、俺だけだ」
「……今の私でも、そう思うんですか?」
「あたりまえだ。つばさ以上に好きになれる女はもう二度と現れないよ」
そう言って、佑磨さんは顔を近づけてくる。
どうしよう。キスされる……。きっと、いやじゃないけど、よくもない。
受け入れたら後悔するんじゃないかって、唇に力が入る。すると彼は、残念そうに離れた。
「キスは、何回目のデートなら許してくれる?」
「え?」
「つばさは付き合う勇気がないだけだ。気持ちは俺にあるだろう?」
困り顔で言うけど、ずいぶん傲慢だ。でも、その通りだと思う。
佑磨さんはカッコいいし、キスも嫌じゃなかった。ただちょっと、いきなりすぎて驚いただけだ。
私がいいと言ったら、彼は強欲に求めてくるに決まってる。その愛を受け止める勇気が、今はない。
「私、海堂さんとは結婚できないと思ってて……」
「なぜ、そう思う?」
「お父さんが反対すると思います」
「俺の親父?」
「……はい。実はあの……」
長野の土地の件を話そうか。いくら、大富豪の海堂グループと言っても、価値のまったくない土地にかかる負債を背負う西川家と、縁を結びたいなんて思わないだろう。
「なんだ?」
罪のない彼の顔を見たら、勇気がしぼむ。
「な、なんでもないです」
「なんでもない顔じゃないけどね」
「あ、キ、キスは結婚が決まるまでだめって言おうと思って」
苦しまぎれにごまかすと、彼は唇をゆるめた。
「結婚が決まればいいんだな? デートの回数を重ねるより、簡単だ。おあずけにした責任は、ベッドでじゅうぶんに取ってもらうよ」
「そんないじわる、言わないでください」
ほてるほおに手をあてて、そっぽを向く。
大丈夫。結婚なんて決まらない。佑磨さんの興味もすぐに私から離れていくだろう。
でも、本当にそれでいいの?
私にだって、佑磨さん以上に素敵な男性と、この先出会える自信なんてない。
ちくりと痛む胸に手をあてて、佑磨さんを見上げる。
頼りない表情を見せてしまっただろう。彼は神妙に私を見つめると、何も言わず、後頭部をするりとなでてきた。
彼の行きつけだというレストランは会員制で、入り口を入って右手にカウンター席、左手にテーブル席があった。
しかし、そのどちらにも案内されず、高級感あふれるシャンデリアが照る店内を進んだ。
つきあたりにある、シックに光るブラックの扉を男性店員が開く。
個室のようだ。二人がけのソファーの前に、猫脚のテーブルが置かれている。
ソファーに並んで腰かけると、佑磨さんはメニュー表を見せてくれた。一番上に季節の料理長おすすめメニューがあり、その下にずらりと単品メニューが並んでいる。
コースでもアラカルトでも、どちらでもいいというから、気になるメニューを一つずつ質問して、なんとか注文した。
ワインを勧められると、「彼女、ワインは苦手だから、料理に合う別のもので」と、佑磨さんは言ってくれた。
飲み物はおまかせでオーダーし、店員が個室を出ていくと、早速、彼は肩に腕を回してきた。
腰かけたときから、こうなるのはわかっていたけれど、隣り合わせで体を寄せ合うのは、やっぱり緊張する。
「そういえば、本宮さんに聞いたよ。つばさの試着した新作ウェディングドレスはかなり好評だそうだ」
「そうなんですか? すごくきれいなドレスだったので、やっぱり選ばれますよね」
着る人を選びそうなプリンセスラインのドレスなのに、スカートのふくらみを調整してもらったりして、私に似合うデザインになった。
本当に、ハルカ・モトミヤのドレスは多くの人に愛されるデザインだと思う。
「ああいうドレスがまた着たいか?」
「また着たい……って?」
佑磨さんは「とぼけるな」と、くすりと笑う。
「ハルカ・モトミヤがよければ、オーダーしよう。結婚式はどのみち、はやくても来年になる。じっくりデザインを考えてもらうといい」
「き、気がはやいです」
「そうか?」
「だって私たち、まだ付き合ってないですし」
「付き合うさ、必ず」
それは、そういう関係になるまで諦めない、と宣言したのだろうか。
どうして私なのだろう。ほかにいくらでも、きれいな人に出会えるのに。
「そんなにウェディングドレス、似合ってましたか?」
ウェディングドレス姿だったから、ひとめぼれしたのだろう。そうじゃなかったら、私に気づきもしないと思う。
「衝撃的だったね。なんで隣に和希がいるんだって嫉妬するぐらいには」
「あれは、写真撮りをお願いしただけで……」
「理由なんて関係ない。つばさの隣にいていいのは、俺だけだ」
「……今の私でも、そう思うんですか?」
「あたりまえだ。つばさ以上に好きになれる女はもう二度と現れないよ」
そう言って、佑磨さんは顔を近づけてくる。
どうしよう。キスされる……。きっと、いやじゃないけど、よくもない。
受け入れたら後悔するんじゃないかって、唇に力が入る。すると彼は、残念そうに離れた。
「キスは、何回目のデートなら許してくれる?」
「え?」
「つばさは付き合う勇気がないだけだ。気持ちは俺にあるだろう?」
困り顔で言うけど、ずいぶん傲慢だ。でも、その通りだと思う。
佑磨さんはカッコいいし、キスも嫌じゃなかった。ただちょっと、いきなりすぎて驚いただけだ。
私がいいと言ったら、彼は強欲に求めてくるに決まってる。その愛を受け止める勇気が、今はない。
「私、海堂さんとは結婚できないと思ってて……」
「なぜ、そう思う?」
「お父さんが反対すると思います」
「俺の親父?」
「……はい。実はあの……」
長野の土地の件を話そうか。いくら、大富豪の海堂グループと言っても、価値のまったくない土地にかかる負債を背負う西川家と、縁を結びたいなんて思わないだろう。
「なんだ?」
罪のない彼の顔を見たら、勇気がしぼむ。
「な、なんでもないです」
「なんでもない顔じゃないけどね」
「あ、キ、キスは結婚が決まるまでだめって言おうと思って」
苦しまぎれにごまかすと、彼は唇をゆるめた。
「結婚が決まればいいんだな? デートの回数を重ねるより、簡単だ。おあずけにした責任は、ベッドでじゅうぶんに取ってもらうよ」
「そんないじわる、言わないでください」
ほてるほおに手をあてて、そっぽを向く。
大丈夫。結婚なんて決まらない。佑磨さんの興味もすぐに私から離れていくだろう。
でも、本当にそれでいいの?
私にだって、佑磨さん以上に素敵な男性と、この先出会える自信なんてない。
ちくりと痛む胸に手をあてて、佑磨さんを見上げる。
頼りない表情を見せてしまっただろう。彼は神妙に私を見つめると、何も言わず、後頭部をするりとなでてきた。
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