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強欲な甘い結婚
初デート(1)
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*
火曜日の夜は、足もとが濡れてしまうほどの雨だった。
佑磨さんと会うのに、ついてない。そう思うことも、まるで、楽しみにしてるようで戸惑う。
私は、佑磨さんとどうなりたいんだろう。
リトルグレイスを出て、雨の降り注ぐ真っ暗な空を見上げる。
おしゃれなワンピースも、エナメルのパンプスも、背伸びして購入したブランドバッグも濡れてしまうだろう。
浮かない気分で傘を開こうとしたとき、黒塗りの高級車がゆっくりと近づいてくるのが見えた。まるで、私が出てくるのを待っていたかのように目の前で停まる。
「お久しぶりです、つばささん。どうぞ、お乗りください」
運転席から降りてきた青年が、スマートに傘をさしかけてくれる。
「あ、天ヶ瀬さんっ?」
「はい、天ヶ瀬です。お迎えにまいりました」
スーツ姿の天ヶ瀬さんはにこりと微笑んで、後部座席のドアを開けた。
「いいんですか?」
「佑磨さんがお待ちです」
いいも悪いもないみたい。はやく乗ってください、と急かされてる気がする。
後部座席に乗り込もうとして、息を飲む。
「今日もかわいいな」
後部座席に座る佑磨さんがそう言う。
「え……っ、あ……」
出し抜けに何を言うのだ。喜んでいいのかわからず、ただただ戸惑う。
「はやく乗れ」
手を差し出される。思わず、手を重ねると、優しく握られて、彼の隣へ座らされる。そのまま、つかんだ手首に彼は視線をそそいだ。
「つけてきてくれたんだな」
そう言って、ブレスレットに触れるから、落ち着かない。
運転席に戻っている天ヶ瀬さんも聞いてるだろう。佑磨さんは恋人同士の秘めごとも、人目を気にしないでさらけ出してしまえる人みたい。
「すごく素敵なデザインだなって思ってたので」
「自社の商品がプレゼントでは味気なかったな。明日はネックレスをプレゼントしようか」
「明日……ですか?」
「昼にデパートで待ち合わせよう」
なんてせっかちな人だろう。
ぽかんとしてたかもしれない。天ヶ瀬さんがくすりと笑うから、運転席に目を移す。
「佑磨さんはお忙しい方ですので、好意は素直に受け入れてください」
「あ……、はい」
すんなりうなずいてしまう。天ヶ瀬さんに言われると、ふしぎと抵抗感がなくなるのだ。
「そうですよね。お忙しいですよね」
かみしめるように、言う。
週末を待たないのは、その日その日の隙間時間を有効利用する人だからだ。
今日だって、私が恋人になるための時間がほしいなんて言ったから、時間を作ってくれたのだろう。
「今日はもう、お仕事は終わったんですか?」
車が走り出すと、私はそう佑磨さんに尋ねた。
「いや、会食の予定が入ってる」
「えっ、そうなんですか?」
本当に忙しい人なんだ。そんな中、私を食事に誘うなんて、時間管理が整ってる人なのだと思う。
そうか。だから、天ヶ瀬さんのような私生活も管理する秘書が必要なのだ。妙に納得してしまう。
「お食事のあとに会食なんて大丈夫なんですか?」
私と会うだけなら、何もレストランじゃなくて、カフェでもよかったんじゃないかと思っていると、彼は意味ありげな目をして私のほおに触れた。
「レストランを変更して、俺の部屋に連れていってもいいが?」
どことなく、目の奥が笑ってる気がする。からかってるのだ。
「そういう冗談は苦手です……」
つまらない女だと思われるかもしれない。でも、彼は承知なのだろう。簡単に誘いに乗る女なら、もう抱かれてる。気を害したりしないで、おかしそうに目を細めた。
「親父と会うだけだ。気にしなくていい」
「お父さんって、海堂リゾートの社長さん?」
ほかに誰がいるんだ、とますますおかしそうに彼は笑む。
「近いうちに会わせよう」
「……ちょっと不安です」
「仕事以外では優しい人だ。何も怖くない」
仕事がらみでは、強硬手段も辞さない人なのだろう。やはり、うわさ通りの剛腕なのだ。
「私じゃ、佑磨さんに釣り合わないから、認めてもらえない気がします」
「釣り合う女になればいい」
「そんな簡単に……」
「そうだな。和希に習うといい。毎日俺の部屋へ来て、マナーのすべてを学ぶといい」
いともたやすく言うが、意外と厳しい。
君はかわいいからそのままでいいんだよ、なんて、そんな甘っちょろい甘言ですます人じゃないみたい。
「俺も、毎日つばさに会いたいしな」
「毎日は困ります。両親だって心配します」
毎日、友だちと食事してくるなんて言えない。少しでも相続費用を捻出しないといけないときなのに。
ちょっと浮かない顔をしてしまったかもしれない。佑磨さんは、「そのぐらい、つばさに会いたいってことだ」と言って、無理強いするわけじゃないというように、優しく手を握ってくれた。
火曜日の夜は、足もとが濡れてしまうほどの雨だった。
佑磨さんと会うのに、ついてない。そう思うことも、まるで、楽しみにしてるようで戸惑う。
私は、佑磨さんとどうなりたいんだろう。
リトルグレイスを出て、雨の降り注ぐ真っ暗な空を見上げる。
おしゃれなワンピースも、エナメルのパンプスも、背伸びして購入したブランドバッグも濡れてしまうだろう。
浮かない気分で傘を開こうとしたとき、黒塗りの高級車がゆっくりと近づいてくるのが見えた。まるで、私が出てくるのを待っていたかのように目の前で停まる。
「お久しぶりです、つばささん。どうぞ、お乗りください」
運転席から降りてきた青年が、スマートに傘をさしかけてくれる。
「あ、天ヶ瀬さんっ?」
「はい、天ヶ瀬です。お迎えにまいりました」
スーツ姿の天ヶ瀬さんはにこりと微笑んで、後部座席のドアを開けた。
「いいんですか?」
「佑磨さんがお待ちです」
いいも悪いもないみたい。はやく乗ってください、と急かされてる気がする。
後部座席に乗り込もうとして、息を飲む。
「今日もかわいいな」
後部座席に座る佑磨さんがそう言う。
「え……っ、あ……」
出し抜けに何を言うのだ。喜んでいいのかわからず、ただただ戸惑う。
「はやく乗れ」
手を差し出される。思わず、手を重ねると、優しく握られて、彼の隣へ座らされる。そのまま、つかんだ手首に彼は視線をそそいだ。
「つけてきてくれたんだな」
そう言って、ブレスレットに触れるから、落ち着かない。
運転席に戻っている天ヶ瀬さんも聞いてるだろう。佑磨さんは恋人同士の秘めごとも、人目を気にしないでさらけ出してしまえる人みたい。
「すごく素敵なデザインだなって思ってたので」
「自社の商品がプレゼントでは味気なかったな。明日はネックレスをプレゼントしようか」
「明日……ですか?」
「昼にデパートで待ち合わせよう」
なんてせっかちな人だろう。
ぽかんとしてたかもしれない。天ヶ瀬さんがくすりと笑うから、運転席に目を移す。
「佑磨さんはお忙しい方ですので、好意は素直に受け入れてください」
「あ……、はい」
すんなりうなずいてしまう。天ヶ瀬さんに言われると、ふしぎと抵抗感がなくなるのだ。
「そうですよね。お忙しいですよね」
かみしめるように、言う。
週末を待たないのは、その日その日の隙間時間を有効利用する人だからだ。
今日だって、私が恋人になるための時間がほしいなんて言ったから、時間を作ってくれたのだろう。
「今日はもう、お仕事は終わったんですか?」
車が走り出すと、私はそう佑磨さんに尋ねた。
「いや、会食の予定が入ってる」
「えっ、そうなんですか?」
本当に忙しい人なんだ。そんな中、私を食事に誘うなんて、時間管理が整ってる人なのだと思う。
そうか。だから、天ヶ瀬さんのような私生活も管理する秘書が必要なのだ。妙に納得してしまう。
「お食事のあとに会食なんて大丈夫なんですか?」
私と会うだけなら、何もレストランじゃなくて、カフェでもよかったんじゃないかと思っていると、彼は意味ありげな目をして私のほおに触れた。
「レストランを変更して、俺の部屋に連れていってもいいが?」
どことなく、目の奥が笑ってる気がする。からかってるのだ。
「そういう冗談は苦手です……」
つまらない女だと思われるかもしれない。でも、彼は承知なのだろう。簡単に誘いに乗る女なら、もう抱かれてる。気を害したりしないで、おかしそうに目を細めた。
「親父と会うだけだ。気にしなくていい」
「お父さんって、海堂リゾートの社長さん?」
ほかに誰がいるんだ、とますますおかしそうに彼は笑む。
「近いうちに会わせよう」
「……ちょっと不安です」
「仕事以外では優しい人だ。何も怖くない」
仕事がらみでは、強硬手段も辞さない人なのだろう。やはり、うわさ通りの剛腕なのだ。
「私じゃ、佑磨さんに釣り合わないから、認めてもらえない気がします」
「釣り合う女になればいい」
「そんな簡単に……」
「そうだな。和希に習うといい。毎日俺の部屋へ来て、マナーのすべてを学ぶといい」
いともたやすく言うが、意外と厳しい。
君はかわいいからそのままでいいんだよ、なんて、そんな甘っちょろい甘言ですます人じゃないみたい。
「俺も、毎日つばさに会いたいしな」
「毎日は困ります。両親だって心配します」
毎日、友だちと食事してくるなんて言えない。少しでも相続費用を捻出しないといけないときなのに。
ちょっと浮かない顔をしてしまったかもしれない。佑磨さんは、「そのぐらい、つばさに会いたいってことだ」と言って、無理強いするわけじゃないというように、優しく手を握ってくれた。
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