強欲御曹司の溺愛

水城ひさぎ

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強欲な甘い結婚

プレゼントを買いに(2)

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 地下駐車場で車を降りると、天ヶ瀬さんは車で待っているというから、私一人でエレベーターに乗り込んだ。

 天ヶ瀬さんに言われた通り、15階でエレベーターを降りる。すると、別のエレベーターから佑磨さんが降りてきたところだった。

 佑磨さんは私を見つけると、いつもより優しく微笑む。私も彼に会えるとなんだかうれしくなって、すぐさま駆け寄った。

 仕事中だってことを忘れてしまいそうになる。

 佑磨さんとお付き合いしたい。

 きっと私、そう思ってる。

「海堂さん、お時間があれば、聞いてほしい話があるんです」

 意を決して言うと、唐突に聞こえたのかもしれない、佑磨さんはわずかに眉をあげた。驚いたのだろう。

「時間がいる?」
「知っていてほしいだけのお話なので、時間はあまり……本当は昨日、お話したらよかったんですけど」
「大事な話なら、先に聞くが?」
「そうですね。できたら、先に」

 話をしたら、佑磨さんが私を受け入れられない、となるかもしれない。

 ジュエリーをプレゼントされた後よりは、先がいいだろうと思う。

「サロンの隣にカフェがある」

 彼は奥のフロアへと進む。デパートの1階にジュエリーショップ、3階にはブランドショップが入っているけど、宝飾サロンへ行こうとしていたみたい。

 サロンの前を通り過ぎ、カフェの中へと進む。白を基調とした明るい店内には、若い女性やご夫婦らしき年配の人たちがまばらに席を埋めていた。

 奥まった席に案内されると、お腹が空いてるだろうと、佑磨さんがサンドイッチと紅茶を注文してくれる。

「話って?」

 オーダーを取り終えた店員が離れると、彼は早速尋ねてきた。

「あの……、母のことなんです」
「どんな?」

 彼は顔色ひとつ変えずに言う。

 佑磨さんも、天ヶ瀬さんと同じだ。いつも落ち着き払っているから、安心して話せる。

「実は、母方の祖母が先月亡くなったんです。それで今、遺産相続でもめていて……」

 実際にお金にまつわる話を口にしたら、ひどく浅ましく聞こえて、口をつぐんだ。こんな話、彼には迷惑だろう。

 やっぱり、言わないでいた方がいいかもしれない。何も知らせず、佑磨さんとのお付き合いは断ろう。

「どうした?」
「……いやですよね、こんな話」
「いや、別に。よくある話だろう? もめるような財産がなくても、もめるものだろうしな。もめるようなものがあるなら、なおさらだ」

 拍子抜けしてしまう。なんでもないことのように、彼は言うのだ。

 紅茶とサンドイッチが運ばれてくる。飲んで落ち着いて、と彼は私を促す。話を聞いてくれるみたい。

 熱い紅茶にレモンをしぼり、ひと口のむ。それだけで落ち着けるから、彼の言葉は魔法みたい。私はふたたび、口を開く。

「母は相続放棄するつもりだったんですが、親族が持て余すような土地なので、どうしても母が相続しないといけなくなりました」
「持て余すような土地なのか、遺産は」
「あ、はい。母の実家は長野にあるんです。長野空港の側で、立地はいいそうなんですけど、まとまった土地というよりは、それなりの広さの土地がいくつかあるみたいなんです」

 父が、順調にいって売却できたとしても、すべての土地を一括購入してくれるような不動産屋じゃないと難しいと言っていた。そのぐらい、用途に難しい土地なのだそう。

「それが、持て余す理由になるか?」
「なんでも、売却しにくい土地なんだそうです」
「どういう意味だ?」

 ほんの少し、佑磨さんは前のめりになった。不可解そうに私の顔をのぞき込んだのだ。

「正確に言うと、誰も買いたがらない土地なんです」
「まさか」

 佑磨さんはつぶやいて、思案げにする。彼でも想像のつきにくい土地なのだろう。だから、もう少し踏み込んで話した。

「本当です。これは……、あまり知られてはいけないのかもしれないんですけど、その土地には産業廃棄物が埋められてるらしくて」

 彼はぴくりと眉をあげたが、続けるようにと私を促す。

「産業廃棄物が何かはわかりません。でも、売却するなら撤去しないといけないですし、相続税の支払いすらできるかどうかわからない状況なので、うちは負債だけ背負う形になってしまいます。そんな土地を相続しようとしてるんです」
「親族の仲はあまり良さそうではないな」
「仲がいいとか悪いとかではなくて、疎遠だったので……」

 母の事情までは話す必要はないだろうと口を閉ざすと、佑磨さんは「わかった」とつぶやいた。
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