強欲御曹司の溺愛

水城ひさぎ

文字の大きさ
23 / 44
強欲な甘い初夜

疑う心

しおりを挟む



 新居となるマンションは、佑磨さんの勤務するオフィスに程近く、高層階にあるワンフロアマンションだった。

 これまで通り、天ヶ瀬さんは秘書として出入りするため、玄関から直接ゲストルームに行け、ゲストルームからリビングなどへつながる扉はすべて施錠できるようになっていた。

 私たちの生活におあつらえ向きのマンションがはやく見つかったのは、とても幸運だった。

「天ヶ瀬さん、佑磨さんのお手伝いは大丈夫なんですか?」

 荷物を運び終えた引越屋さんが帰ると、様子を見に来てくれた天ヶ瀬さんにそう尋ねた。

「佑磨さんとは16時に約束しています。つばささんを連れて迎えに来るように、と。どこかでお食事でもなさりたいのでしょう。久しぶりに会うのですから」
「本当に。こんなに会えないなんて思ってませんでした」

 佑磨さんのご両親に挨拶へうかがった日、海堂の邸宅でささやかな食事会が開かれた。

 招待されていたのは、懇意にしている取引先の取締役や、親族が中心だった。結婚式は来年になってしまうから、それまでに顔合わせしておきたい方々を集め、ちょっとした披露宴のような会を開いてくれたのだ。

 当然、佑磨さんはひっぱりだこで、夜遅くまで飲んでおり、あやめさんの計らいで、私は一足先に天ヶ瀬さんに送ってもらって帰宅したのだった。

 あの日の翌日から佑磨さんは多忙で、なかなか会えずにいた。そうは言っても、会えなかったのは一週間ほどのことだったのだが。

「今日から毎日会えますよ」
「でも、明日から長野へ出張なんですよね?」

 どこへ行くかは聞かされていなかったが、かまをかけるつもりで天ヶ瀬さんに聞いてみた。

「はい。私も同行しますので、つばささんは無理をせず、新居の片付けをなさっていてください」

 彼は何も疑う様子なく、行き先を認めた。

「長野でどんなお仕事があるの?」
「社内のことは、奥様と言えども、他言できません。どうしてそのようなことを?」
「あっ、なんでもないんです。長野まで、新幹線ならそれほど時間もかからないですけど、何回も行かれるなら、お身体が心配だから」
「そうですね。疲れて帰ってこられた際には、存分に癒やして差し上げてください」
「……あ、はい」

 癒すって……。

 よからぬ妄想をしてしまって、恥ずかしくなる。それでも、内心は穏やかではなかった。

 きっと、美梨さんが言っていたのは本当なのだ。だから、社内秘だなんて言って、なんにも教えてくれない。

 私と結婚したいなんて言って、相続税の肩代わりをしたのは、こういうことだったのだ。

 あの土地は、花里家が絶対に手放さないと言っていた、海堂が喉から手が出るほど欲しがっていた土地だった。

 両親が付け値で売却したのは、私が佑磨さんと結婚することに感謝し、すっかり海堂を信じたためだった。そうでなければ、いわれのないものとして、あの話は断っていたかもしれない。

 お人好しの両親をだまし、私を好きだと言って油断させ、本当は長野の土地が欲しかっただけ。きっと、そう。あんなに素敵な人が私にひとめぼれするわけない。だから、結婚した途端に会う回数が減った。そう思えてならない。

「つばささん、大丈夫ですか? 顔色がよろしくないですよ」
「え?」

 天ヶ瀬さんに声をかけられて、青ざめてることに気づいた。

「疲れたのでしょう。今日は片付けをやめて、ゆっくりされてください」
「ごめんなさい、心配かけて」

 天ヶ瀬さんはきっと全部知ってるだろう。問いただしたいけど、やっぱり、それはできないと口をつぐんだ。

 どんな理由があるにせよ、佑磨さんは西川家を助けてくれたのだ。あの土地を売却した費用があれば、両親はこれから先、困ることなく生きていける。

 今さら、私たちが騒いだってどうにもならない。そう思うのに、どうして正直に話してくれなかったのかと悔しく思う気持ちが、心に黒いシミを落とした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

処理中です...