強欲御曹司の溺愛

水城ひさぎ

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強欲な甘い初夜

不穏なうわさ話

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***


 土曜日なのに、リトルグレイスは午後になると客足が途絶えていた。

 せっかくだからと、普段はできないディスプレイの配置を変えながら、私は美梨さんと世間話をしていた。

「あら、結婚する前は毎日会ってたのに、結婚したら会えないの?」
「明日から一緒に暮らせるみたいなんですけど、あさってには出張があるらしくて、しばらくすれ違いになっちゃうかもしれないんです」

 毎日会ってたわけじゃないけど……と心の中で否定しつつ、婚姻届を提出した翌日から会えなくなってるのは事実で、さみしさを口にしてしまう。

「えー、新婚なのに出張なの? 海堂さんって、意外と釣った魚に餌をやらないタイプ?」
「お仕事が忙しいみたいです。大きなプロジェクトのリーダーになったらしくて、これからも帰ってこれない日があるだろうって聞きました」

 そう言っていたのは、天ヶ瀬さんだ。

 彼は佑磨さんがホテルに戻れない日は西川家へやってきて、海堂家のいろはを教えてくれていた。

 逆に、彼がホテルへ帰ってくる日は、真夜中の帰宅になるから、私は来なくてもいいと言われてしまって、すれ違い生活が続いている。

 それは佑磨さんの気遣いで、毎日、はやく会いたいと、メールは送ってくれるのだけど。

「大きなプロジェクト?」

 美梨さんが首をかたむけるから、私も首をかしげる。しばらく見つめ合っていると、彼女は、あっ! と大きな声をあげた。

「プロジェクトって、あれじゃない? 新しいリージェスホテルの建設」
「そうなんですか? 何も言わないので、全然知らないんですけど」

 そんな話があるんだって、素直に驚く。

 佑磨さんがプロジェクトの内容を私に話すわけはないのだけど、美梨さんはなんでも知ってるみたい。

「私も詳しくは知らないんだけど、本宮さんがね、長野に新店舗を出すからアシスタントを探してるって言ってて」
「長野?」
「そう、長野。本宮さんが店舗出すときは、だいたいリージェスホテルがらみなのよね。リージェスホテルのホテルウェディングはすごく人気でしょう。ハルカ・モトミヤのドレスを扱う店舗がホテル内に入るんだと思うわ」
「そうなんですね。長野にリージェスホテルが……」

 なんだろう。もやもやする。

「昔から、長野のリゾート開発はささやかれてるわよね。なかなか土地を手放さない旧家があって、どこのリゾート会社もお手上げ状態だって」
「……知らなかったです」

 顔がこわばっていくのを感じて、カウンターに視線を落とすと、クロスでショーケースを磨いた。ガラスに映る私が、眉をひそめている。

「私も本宮さんに聞いたりするだけだから。確か、長野空港の側が検討されてるって言ってたと思うわ。ようやく売却してもらえる目処がついたのかしらね」
「長野空港の側……」
「あくまでも、うわさよ、うわさ。海堂さんにはこの話は内緒ね。大事なプロジェクトに影響があったら、大変」
「あっ、はい。大丈夫です、言いません」

 パッと顔をあげ、笑顔をつくる。

 言えるはずない。そういう計画があると知ってて、佑磨さんは何にも教えてくれなかった。今さら、問いただすなんてできるわけなかった。
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