26 / 58
冗談で?
10
しおりを挟む
***
朝起きると、身体がだるくて力が入らなかった。
ベッドから降りるとズキンっと頭が痛んで、側頭部に手をあてる。
「あー、頭……いたいー……」
ひたいに手をあてる。熱はないようだが、痛みに耐えきれず、ふたたびベッドに横になる。
仕事の疲れが出たのかもしれない。萌乃香の心配が的中だ。
さいわい今日は日曜日。夏也もアパートにいるだろう。
昨夜はなんとなく気まずいまま夏也のアパートから帰ってきたけれど、また連絡くれよ、と言ってくれた彼の言葉を思い出す。
いざとなれば夏也を頼れる。そう思うだけで心強くて、こんな時は彼の存在をありがたく思う。
病気したときは家族のありがたみがわかるというけれど、夏也と一緒になったらきっと幸せだろう。
このまま付き合っていたら、いつかそんな日が来るのだろうか。
でも、もし来なかったら?
このまま夏也と付き合っていていいのか、不安になるのも確かだった。
ズキリと痛むこめかみを抑え、もう少し寝ていようと目を閉じたとき、枕元のスマホが音を立てる。
夏也からの電話だ。
「もしもし……、夏也、うん、起きてたよ。おはよう」
半分目を閉じたまま、電話に出る。夏也の明るい声は耳に心地よい。
『茉莉、今日ってなんか予定あるか?』
急で悪いけどさ、なんて言いながら夏也が尋ねてくる。
「予定はないけど……」
『けど?』
怪訝そうに彼は言う。どこか神経質な反応をするのは私のせいだろう。
私は夏也の負担になってる。それが伝わってくる。
「ちょっと頭が痛くて……」
そう答えると、夏也は少し考えるように沈黙して、『そうか』とつぶやいた。
「何かあった?」
『いや、ダチがさ、……大学ん時、石黒っていただろ。石黒がたまには茉莉も一緒に飲もうぜっていうからさ』
石黒、と言われてもすぐに思い出せない。考えようとすると、頭は余計に痛む。
「今日、飲む約束してた?」
『ああ、前から。まあでも、体調悪いなら仕方ないよな。だいぶ悪いのか?』
「今から薬飲んで、また寝ようと思ってたとこ。今日いちにちゆっくりしてたら治ると思う」
『そっか。じゃあ大丈夫だな』
「うん……」
来てくれないの?
その石黒って友だちとの約束の方が先だから、優先するのは仕方ないと思いながらもさみしくなる。
でも、会いたいなんて言えない。ちょっと不安だからそばにいて欲しいだけ。夏也には夏也の生活があるのに、私はさっきから身勝手なことばかり考えてる。
『また元気になったら連絡しろよ』
「あ……、うん。夏也も、楽しんできてね」
『ああ』
じゃあね、という前に電話は切れた。
夏也に会いたくなくて、うそをついてるんじゃないかって疑われた?
一瞬そんな思いが脳裏をよぎったが、あんまり考えたくなくて、身体を起こす。
ベッドサイドにあるチェストの引き出しを開き、頭痛薬を探す。
指にあたった小さな箱をつかみ取り、手のひらの上でひっくり返すと、錠剤が二つ転がり出てくる。中をのぞくと、箱の中はもう空だ。
買いに行かなきゃ、と立ち上がり、キッチンへ行く。グラスに注いだペットボトルの水で頭痛薬をのどの奥へ流し込む。
それから最低限の身支度をして、財布だけつかむと近所のドラッグストアへ向かった。
朝起きると、身体がだるくて力が入らなかった。
ベッドから降りるとズキンっと頭が痛んで、側頭部に手をあてる。
「あー、頭……いたいー……」
ひたいに手をあてる。熱はないようだが、痛みに耐えきれず、ふたたびベッドに横になる。
仕事の疲れが出たのかもしれない。萌乃香の心配が的中だ。
さいわい今日は日曜日。夏也もアパートにいるだろう。
昨夜はなんとなく気まずいまま夏也のアパートから帰ってきたけれど、また連絡くれよ、と言ってくれた彼の言葉を思い出す。
いざとなれば夏也を頼れる。そう思うだけで心強くて、こんな時は彼の存在をありがたく思う。
病気したときは家族のありがたみがわかるというけれど、夏也と一緒になったらきっと幸せだろう。
このまま付き合っていたら、いつかそんな日が来るのだろうか。
でも、もし来なかったら?
このまま夏也と付き合っていていいのか、不安になるのも確かだった。
ズキリと痛むこめかみを抑え、もう少し寝ていようと目を閉じたとき、枕元のスマホが音を立てる。
夏也からの電話だ。
「もしもし……、夏也、うん、起きてたよ。おはよう」
半分目を閉じたまま、電話に出る。夏也の明るい声は耳に心地よい。
『茉莉、今日ってなんか予定あるか?』
急で悪いけどさ、なんて言いながら夏也が尋ねてくる。
「予定はないけど……」
『けど?』
怪訝そうに彼は言う。どこか神経質な反応をするのは私のせいだろう。
私は夏也の負担になってる。それが伝わってくる。
「ちょっと頭が痛くて……」
そう答えると、夏也は少し考えるように沈黙して、『そうか』とつぶやいた。
「何かあった?」
『いや、ダチがさ、……大学ん時、石黒っていただろ。石黒がたまには茉莉も一緒に飲もうぜっていうからさ』
石黒、と言われてもすぐに思い出せない。考えようとすると、頭は余計に痛む。
「今日、飲む約束してた?」
『ああ、前から。まあでも、体調悪いなら仕方ないよな。だいぶ悪いのか?』
「今から薬飲んで、また寝ようと思ってたとこ。今日いちにちゆっくりしてたら治ると思う」
『そっか。じゃあ大丈夫だな』
「うん……」
来てくれないの?
その石黒って友だちとの約束の方が先だから、優先するのは仕方ないと思いながらもさみしくなる。
でも、会いたいなんて言えない。ちょっと不安だからそばにいて欲しいだけ。夏也には夏也の生活があるのに、私はさっきから身勝手なことばかり考えてる。
『また元気になったら連絡しろよ』
「あ……、うん。夏也も、楽しんできてね」
『ああ』
じゃあね、という前に電話は切れた。
夏也に会いたくなくて、うそをついてるんじゃないかって疑われた?
一瞬そんな思いが脳裏をよぎったが、あんまり考えたくなくて、身体を起こす。
ベッドサイドにあるチェストの引き出しを開き、頭痛薬を探す。
指にあたった小さな箱をつかみ取り、手のひらの上でひっくり返すと、錠剤が二つ転がり出てくる。中をのぞくと、箱の中はもう空だ。
買いに行かなきゃ、と立ち上がり、キッチンへ行く。グラスに注いだペットボトルの水で頭痛薬をのどの奥へ流し込む。
それから最低限の身支度をして、財布だけつかむと近所のドラッグストアへ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる