たとえ一緒になれなくても

水城ひさぎ

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冗談で?

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***


 朝起きると、身体がだるくて力が入らなかった。

 ベッドから降りるとズキンっと頭が痛んで、側頭部に手をあてる。

「あー、頭……いたいー……」

 ひたいに手をあてる。熱はないようだが、痛みに耐えきれず、ふたたびベッドに横になる。

 仕事の疲れが出たのかもしれない。萌乃香の心配が的中だ。

 さいわい今日は日曜日。夏也もアパートにいるだろう。

 昨夜はなんとなく気まずいまま夏也のアパートから帰ってきたけれど、また連絡くれよ、と言ってくれた彼の言葉を思い出す。

 いざとなれば夏也を頼れる。そう思うだけで心強くて、こんな時は彼の存在をありがたく思う。

 病気したときは家族のありがたみがわかるというけれど、夏也と一緒になったらきっと幸せだろう。

 このまま付き合っていたら、いつかそんな日が来るのだろうか。

 でも、もし来なかったら?

 このまま夏也と付き合っていていいのか、不安になるのも確かだった。

 ズキリと痛むこめかみを抑え、もう少し寝ていようと目を閉じたとき、枕元のスマホが音を立てる。

 夏也からの電話だ。

「もしもし……、夏也、うん、起きてたよ。おはよう」

 半分目を閉じたまま、電話に出る。夏也の明るい声は耳に心地よい。

『茉莉、今日ってなんか予定あるか?』

 急で悪いけどさ、なんて言いながら夏也が尋ねてくる。

「予定はないけど……」
『けど?』

 怪訝そうに彼は言う。どこか神経質な反応をするのは私のせいだろう。

 私は夏也の負担になってる。それが伝わってくる。

「ちょっと頭が痛くて……」

 そう答えると、夏也は少し考えるように沈黙して、『そうか』とつぶやいた。

「何かあった?」
『いや、ダチがさ、……大学ん時、石黒いしぐろっていただろ。石黒がたまには茉莉も一緒に飲もうぜっていうからさ』

 石黒、と言われてもすぐに思い出せない。考えようとすると、頭は余計に痛む。

「今日、飲む約束してた?」
『ああ、前から。まあでも、体調悪いなら仕方ないよな。だいぶ悪いのか?』
「今から薬飲んで、また寝ようと思ってたとこ。今日いちにちゆっくりしてたら治ると思う」
『そっか。じゃあ大丈夫だな』
「うん……」

 来てくれないの?

 その石黒って友だちとの約束の方が先だから、優先するのは仕方ないと思いながらもさみしくなる。

 でも、会いたいなんて言えない。ちょっと不安だからそばにいて欲しいだけ。夏也には夏也の生活があるのに、私はさっきから身勝手なことばかり考えてる。

『また元気になったら連絡しろよ』
「あ……、うん。夏也も、楽しんできてね」
『ああ』

 じゃあね、という前に電話は切れた。

 夏也に会いたくなくて、うそをついてるんじゃないかって疑われた?

 一瞬そんな思いが脳裏をよぎったが、あんまり考えたくなくて、身体を起こす。

 ベッドサイドにあるチェストの引き出しを開き、頭痛薬を探す。

 指にあたった小さな箱をつかみ取り、手のひらの上でひっくり返すと、錠剤が二つ転がり出てくる。中をのぞくと、箱の中はもう空だ。

 買いに行かなきゃ、と立ち上がり、キッチンへ行く。グラスに注いだペットボトルの水で頭痛薬をのどの奥へ流し込む。

 それから最低限の身支度をして、財布だけつかむと近所のドラッグストアへ向かった。
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