たとえ一緒になれなくても

水城ひさぎ

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たとえ一緒になれなくても

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「茉莉、まだ帰ったらダメだ……」

 ベッドを降りようとすると、腰に回された腕がしまる。

 背中にぴたりと郁さんの胸が合わさって、穏やかな心音が伝わってくる。

「明日も会社で会えますから」
「素っ気ないね、君は」

 耳元でくすりと彼が笑うと、揺れた髪がほおをくすぐる。

「そんなことありません」
「ああ、そうだね。茉莉は仕事もプライベートも献身的だからね」

 上体を起こした郁さんは私を見下ろして、そっと優しいキスを落としてくる。

 こうして郁さんと触れ合うのもいつぶりだろう。彼に触れられるたび、夏也の記憶が薄れていく。

「初めて君を見たときは、好きになるとは思ってなかったよ」
「なんですか、急に」

 今度は仰向けになる郁さんに腕まくらされながら、胸にほおをあてる。ここちよい心音は続いている。

「いや、仁がやたらと茉莉を褒めるからね。どんな素敵な女性なんだろうって、想像が過ぎたのかもしれない」
「期待はずれだったわけですか」
「まあ、平たく言うとね。でも想像外のところで素敵だと思ったよ」

 郁さんは当時を懐かしむように愉快げに笑う。

「いつ君を好きになったのかはわからない。気づいたら好きだった。きっと放っておけなかったんだ」
「郁さんの前では何度も泣いて……」

 みっともないぐらい泣いた。
 みっともない姿も見せた。

 それでも郁さんは好きだと言ってくれた。

「傷つく君を見ていられなかったから、これでいいんだ。今は俺の腕の中にいてくれるから、安心してるよ」

 こんな風に郁さんの本音を聞いたのは初めてだった。

「郁さん……」

 彼の首に腕を回して抱きつく。

 いつまで続く関係かわからない危うさの中だからこそ、素直に甘えていたい。

「それに、カラダの相性もとてもいいしね」
「は……、そういうのやめてください」

 郁さんから離れようとすれば、すぐに抱き寄せられて胸元にキスが落ちる。

「さっきからかわいげのない反応ばかりだけど、それが君の魅力でもあるね」
「かわいげがなくてすみません」

 すねるように顔をそむければ、彼は楽しそうに私の身体のあちらこちらにキスを落としていく。

「甘えてくるときはひどくかわいいからね、もっと甘えてほしいと思うよ」
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