たとえ一緒になれなくても

水城ひさぎ

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たとえ一緒になれなくても

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「……彼と別れられないのに好きでいてほしいって思うのは間違ってるってわかってます」

 夏也ときちんと別れてから郁さんには会うべきだ。

 わかってるつもりでも会ってしまう。会いたいから、会ってしまう。

「君とは結婚できないのに、新しい恋人も作るなと言うのか?」
「おかしいですよね。夏也とは結婚できないから別れたかったのに、結婚できないのに郁さんと一緒にいるのは……」

 矛盾してる。

「それは喜んでいいことかな」
「喜ぶ?」

 意外なことを言う郁さんに驚く。

「ただ結婚したくて俺を選んだんじゃなくて、君の中ではもう俺が好きなんだろう」

 ふんわりと微笑む彼の笑顔に心が癒される。

 郁さんの言う通りだろう。私の心にはもう、きっと夏也はいない。

「でも私……、夏也が会いたいって言ったら会いに行きます」

 長く愛した男性と、分かり合えないまま別れることができない私がいるのも事実だろう。

「そんな必要どこにある?」

 郁さんは眉をひそめて、ぎゅっと私の手を握る。

「彼とはいつか別れようって思ってます。どうしたら納得してくれるのかわからなくて」
「納得するしないもないだろう。茉莉が別れたいと思ったなら、それを告げればいい。破綻してる関係を続けることに意味はないよ」
「でももし、夏也が結婚したいって言ってくれたら受け入れたいと思うぐらいにはまだきっと彼が好きです」

 そんな日は来ないけれど。だから別れようと決めたのだから。

「ああ、最初から君はそうだった。結婚できないことを不満に思うだけで、彼氏を愛していたね」

 郁さんは小さくため息をつく。

「私からは夏也に会いたいって言わないから、郁さんと会っていたいです」
「俺と会う意味がわかってる?」

 今日だって食事だけで済むとは思ってない。それは郁さんも同じ気持ちだろう。

「お互いの愛情が続く限り、一緒にいたいです」
「続くよ、茉莉」

 郁さん……と、彼の背中に腕を回す。

「どちらかの気持ちが離れたら会うのやめましょう。私たちの関係はそれだけの関係です」

 別れ話をする必要もない。
 結婚するしないもない。

 私たちは会いたいときに会って抱き合って、ふたりだけの幸せな時間を過ごす。

 たったそれだけの関係になるしかないのだから……。
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