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たとえ一緒になれなくても
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「元気ないね」
「え、そうですか? ……ちょっと疲れてるのかもしれないです」
パソコンに向けていた顔をあげると、郁さんがコーヒーを運んでくれる。
打ち合わせ室のロールカーテンはすべて上げてある。
郁さんと関係を持ってからというもの、妙な後ろめたさから、オフィス内から打ち合わせ室の中がよく見えるように意識してしまっている。
「疲れるようなことあった? 俺は癒されて仕方ないけどね」
暗に昨夜のホテルでの出来事を思い起こさせるから、軽く彼をにらむ。
「仕事中にそういう話はやめてください」
「君は本当にそっけない。そんなに警戒心むきだしにしてると、余計にあやしまれるよ」
郁さんはあきれるように首を横にふりつつ、少しばかり楽しげに口元をゆるめる。
「そう思うなら、私にかまってないでお仕事してください」
ほかにもやることあるでしょう? と言うと、彼は私のパソコンを後ろからのぞき込む。
私の背に胸をつけるようにして、伸ばした手でマウスをあやつる。
絶対に不必要な接触だ、と思っていると、入力間違いの数値が目の前で修正されていく。
「はやくみんなにバラしてしまいたいな。君は意外とモテるようだし」
「い、意外とって!」
「しぃー。すぐ感情的になるのは直した方がいいよ。俺はかまわないけど、知られたくないならね」
そっと私から離れ、隣のいすに座る郁さんは優雅に足を組んでコーヒーを楽しむ。
見れば見るほど絵になる人だ。
余裕すぎて憎らしくもある。
ぷいっと顔をそむけて、キーボードに指を置いた瞬間、またしても郁さんが話しかけてくる。
「今夜も一緒に食事どう?」
「……」
「そんな怖い顔しなくても食事だけだよ」
くすくす笑う郁さんが、「で、どうするの?」と続けて聞いてくるのに対し、私はついかわいげなく答えてしまう。
「お断りするはずありません」
「元気ないね」
「え、そうですか? ……ちょっと疲れてるのかもしれないです」
パソコンに向けていた顔をあげると、郁さんがコーヒーを運んでくれる。
打ち合わせ室のロールカーテンはすべて上げてある。
郁さんと関係を持ってからというもの、妙な後ろめたさから、オフィス内から打ち合わせ室の中がよく見えるように意識してしまっている。
「疲れるようなことあった? 俺は癒されて仕方ないけどね」
暗に昨夜のホテルでの出来事を思い起こさせるから、軽く彼をにらむ。
「仕事中にそういう話はやめてください」
「君は本当にそっけない。そんなに警戒心むきだしにしてると、余計にあやしまれるよ」
郁さんはあきれるように首を横にふりつつ、少しばかり楽しげに口元をゆるめる。
「そう思うなら、私にかまってないでお仕事してください」
ほかにもやることあるでしょう? と言うと、彼は私のパソコンを後ろからのぞき込む。
私の背に胸をつけるようにして、伸ばした手でマウスをあやつる。
絶対に不必要な接触だ、と思っていると、入力間違いの数値が目の前で修正されていく。
「はやくみんなにバラしてしまいたいな。君は意外とモテるようだし」
「い、意外とって!」
「しぃー。すぐ感情的になるのは直した方がいいよ。俺はかまわないけど、知られたくないならね」
そっと私から離れ、隣のいすに座る郁さんは優雅に足を組んでコーヒーを楽しむ。
見れば見るほど絵になる人だ。
余裕すぎて憎らしくもある。
ぷいっと顔をそむけて、キーボードに指を置いた瞬間、またしても郁さんが話しかけてくる。
「今夜も一緒に食事どう?」
「……」
「そんな怖い顔しなくても食事だけだよ」
くすくす笑う郁さんが、「で、どうするの?」と続けて聞いてくるのに対し、私はついかわいげなく答えてしまう。
「お断りするはずありません」
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