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たとえ一緒になれなくても
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しおりを挟む仕事を終え、郁さんと一緒にオフィスを出る。
変に外で待ち合わせしない方があやしまれない、という郁さんの持論だが、きっと彼は社内でうわさされてもかまわないと思っている。だから常に堂々としていて、彼の愛情を感じることができている。
夏也が会いに来たかもしれない。
それを郁さんに伝えるべきだろうか。でもそんなことは、彼にとっては取るに足らない問題かもしれない。
私たちが幸せであればいい。そんな風に考える人のような気がする。
「また考え事してるね。昨日あれから、何かあった?」
遅くに帰宅したのだから何か起こりようもない。
彼はそれを知ってる。それでももし何か起きたのだとしたら、深夜に私に会いに来れる存在が何かをもたらしたんじゃないかと気にするのは当然のことに思える。
「隠し事は良くないよ」
「別に隠すつもりなんて」
「変な気をつかうとね、何かのきっかけで、なんで相談してくれなかったんだって、俺たちの関係が壊れることもあるよ」
「郁さんは優しすぎます」
「いつも意地悪だというのにね、君は」
郁さんが笑ったとき、目の前を通り過ぎた青年に目を奪われた。
ハッと短く息を飲む。そのわずかな呼吸も、郁さんは見逃さなかった。
彼はすぐさま私の視線を追った。その先にいる青年もまた、二度私を振り返り、アッと声をもらした。
郁さんは夏也の顔を知っている。だから郁さんも青年が誰であるかすぐに気づいたようだった。
「茉莉っ!」
青年は私の名を呼ぶと、すぐさま駆け寄ってきた。
私の心臓はバクバクと急激に大きな音を立て始める。
郁さんの腕を押した。帰ってください、とばかりに突き放した。それでも郁さんは帰らなかった。そして夏也は私の目の前へとやってきた。
「よかった、茉莉。今日会えなきゃ、電話するつもりだった」
夏也はそう言って、ちらりと郁さんに視線を動かした。
少し首をかしげたのを私は見逃さなかった。
夏也は郁さんをどこかで見たことがあるのだろうか。ふと不安になる。
「今から帰り?」
「あ、うん。帰るよ。夏也も仕事帰り?」
スーツ姿の夏也を見れば一目瞭然。彼も「見ればわかるだろ」なんて苦笑いしながら、やはり気になるのか、郁さんに視線を動かす。
「あの、上司なの」
「そうか、悪い。ちょっといいか?」
「……うん。行こう、夏也」
郁さんが帰る気配を見せないから、私は夏也を促す。
夏也が歩き出す。私もすぐにあとを追おうと郁さんから離れた。
そのときだった。腕をつかまれて足が止まる。
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