冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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寄り添う心に新たな出会い

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 意図がわからないと、首を傾げる千隼さんには警戒心がないみたい。どんな問題にも対応できる能力があるから、ささいな出来事は気にも止めないのだろう。

「伊吹が、西園寺家への車の出入りを気にしてるみたいで。ご近所の方も、いつもと違う雰囲気には気づかれるでしょう」
「伊吹さんが何か気づいたのでしょうか。……しかし、気にされなくてもいいのでは?」

 やはり、彼は楽観的だ。

「でも、伊吹は勘が良いですし。あまりに頻繁に千隼さんが出入りしていたら、何か思うのではと……」
「西園寺家に出入りしていたとしても、裏口からつゆりに会いに来てることは、冨永さん以外に知る人はいないんです。これからも、堂々と会いに来ますよ」
「堂々と……」
「ええ。こそこそする必要なんてありません。今日の夕食はどこかで一緒に……と思いましたが、それはさすがに出かけられませんね」
「申し訳ありません」

 身体を許す関係にあっても、ふたりで食事に出かける関係にはなれない。私たちが気兼ねなく会えるのは、綾城家の離れだけ。

「謝らないでください。制限のある中でも、普通の恋人のように過ごせないかと、考えないでもないのです」

 後ろ暗い関係を、どうにかして真っ当なものにしたいと思ってのことだろう。

「普通じゃありませんものね。負担ですよね……。はやく、千隼さんを解放してさしあげなければと、私も思わないでもないのですけど」

 迷惑をかけたくないと思う反面、どんな形でもいいから、千隼さんと一緒にいたいと思う。それこそ、普通の恋人のように過ごせるなら、どれほどいいか。

「複雑です」

 複雑な胸中の詳細を多く語らず、千隼さんはそれだけを言う。

 彼の苦しみを少しでも軽減したくて、思い切って提案する。

「期限をもうけましょうか? 子を宿せなければ、西園寺さまにはあきらめていただくと」
「そんなことできますか?」
「千隼さんがおっしゃったように、いずれにしろ、惣一郎さんのことは長く隠せないでしょう。短くて再来月、長くて半年……でしょうか」

 先の未来はさっぱり想像もつかないけれど、期限があれば、あきらめもつくだろう。千隼さんも、ホッとしたような息をつく。

「期限をもうけるというなら、半年、……半年にしましょう」
「半年ですね」
「半年も毎日抱けるなら……」

 ちらりと、彼の視線が胸もとへ落ちる。彼に触れられた感触が思い出されてしまう。

 本当に毎日来るつもりではないだろうけれど、大きな手で愛撫される日はこれから何度もあるのだろう。

 子を成すためという大義名分の影で、私の身体の隅々まで唇を這わせる彼を想像したら、身体の奥がうずいてくる。

「あ……、そんなおっしゃり方……」

 まるで、抱き合うのが目的みたい。目をそらす私の手を、彼はそっと握りしめる。

「今夜も抱きたい。許す限り、毎日。半年もすれば、つゆりは……」
「私は?」

 ゆるりと、彼は頭を振る。

「……なんでもありません。決意は、簡単に変わるものではありませんね」
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