冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ひたひたと迫る厄災

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 綾城堂の各教室は、母の天音がメイン講師を務めている。私は補助として携わっており、主に電話応対や、来客対応を任されていた。

「今日は、岩山いわやま颯太さんのご予約が10時15分に入っています」

 予約表を確認しながら、天音に伝える。

 午前の華道教室の生徒は、以前からご利用いただいてる3人。体験予約は颯太のみだった。

「10時開始の教室には間に合いませんね。確か、奥さまが受講希望でしたね。奥さまは、ご一緒じゃないのかしら?」
「ご主人お一人で見学に来られるそうです。まだお子さまが生後一ヵ月だそうで、なかなか気軽に出かけられなくて、とおっしゃってました」
「まあ、そうなの。もう少し大きくなられてから、参加くださるのね」
「その予定とうかがってます。今日は教室の雰囲気や施設の確認をしたいそうですよ」

 赤ちゃんが生まれたばかりで、習い事どころではない様子だったけれど、先日のご縁をむげにしないために体験したいと言ってくれたのだろう。

「それにしても、マメなご主人だこと」

 天音は驚嘆している。それもそのはず、奥さまの付き添いでご主人がいらっしゃることはたびたびあるが、ご主人のみで参加されるのは、とても珍しい。

「ご自宅は学習塾の経営をされているそうで、午前中は比較的時間が取りやすいとおっしゃってました。奥さまのためにご尽力されてて、羨ましいぐらい、お似合いのご夫婦でした」
「あら、会ったことがあるの?」
「先日、さわやま病院の近くで。たまたま、綾城堂のお話をする機会がありまして、体験のお話をさせていただいたんです」

 そうだったの、と天音は、合点がいったとばかりにうなずく。

「ご縁のある方ね。末長いお付き合いになるといいわね」
「そうですね。岩山さんがいらしたら、私がご案内させていただきます」
「お願いしますね、つゆり。……あら、生徒さんがいらしたみたい」

 玄関の方から、にぎやかな話し声が聞こえてくる。天音はすぐさま腰をあげると、部屋を出ていった。
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