冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ひたひたと迫る厄災

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 引き戸を開け、外に出る。ちょうど紙袋を下げた飯田さんが、門を入ってきたところだった。

「飯田さん、すみません。お手数おかけしました」

 和菓子の入った紙袋を受け取り、頭を下げる。

「間に合いまして、何よりです。それより、つゆりお嬢さま、本日の生徒の方は4人ですか?」

 飯田さんは珍しく、教室の様子を尋ねてくる。

「ええ。いつものお三方と、今日初めて来られた体験の方、合わせて4人です」
「体験の方は男性ですか?」

 やたらと気にする。

「はい。何か気になることが?」
「ええ、まあ。駐車場の方へご足労いただけますか?」
「かまいませんよ」

 辺りをうかがうようにして、静かに歩く飯田さんについていく。

 いったん門を出て、西にある駐車場に行くと、車が4台停車していた。

 1台は飯田さんのセダン、2台の軽自動車は乗り合わせてやってくる、いつもの生徒さんの車。もう1台のスポーツカーは颯太の車だろう。

「車がどうしたんですか?」
「覚えておられますよね、先日の青い車の件です」
「不審な車のことね?」

 あれから毎日、伊吹は飯田さんに送迎してもらっている。

「そちらの車なんですよ、お嬢さま」

 飯田さんは厳しい視線を、ブルーメタリックの色鮮やかなスポーツカーへ向ける。

「え」
「間違いございません。西園寺家の前で何度か見かけた車でございます」
「それじゃあ、伊吹が見た人は岩山さん……?」
「岩山というのですか? その方は」
「はい、ご存知ですか?」

 飯田さんはしばらく考え込んで、首を横に振る。

「いいえ、心当たりはありません。いかがいたしましょう?」
「いかがって言われても。どうしましょう……」

 当惑していると、飯田さんが力強くうなずく。

「では、つけてみましょう。さいわい、伊吹お嬢さまがお帰りになる時刻までは手が空いております」
「つけるって、危なくないかしら」
「用心しますよ。ご心配なさらず」

 調べてみる価値はあると思ってるみたい。

「危ないようでしたら、引き返してくださいね。岩山さんはそれほど、あやしい方のようには思えませんが」
「西園寺家が目的だからでしょうか。しかし、綾城堂を訪れた理由はわかりかねますので、つゆりお嬢さまもご用心ください。このことは、生徒の方が帰られましたら、天音奥さまのお耳にも入れておいてください」
「わかりました。伊吹もよろしくお願いします」

 飯田さんはすぐに、別の場所に移動すると告げて車に乗り込む。

 角を曲がる車を見送ったあと、和菓子の入った紙袋を携えて、何もなかったように綾城堂へと戻った。
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