冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ねじれた愛をあばく時

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***


 庭の紅梅が、鮮やかなピンクに色づいている。惣一郎さんの好きだった梅の花が、今年も満開になった。

 もう咲かないんじゃないかと心配した日が懐かしい。季節は移ろい、私が生きていることを実感させる。

「すみれさんは何をしに来たんでしょうか」

 隣に座っている千隼さんに視線を移す。

 一連の騒動を伝えたあと、彼はしばらく沈黙していたが、思案げにあごをなでながら、ようやく口を開いた。

「岩山さんにもう会わないでほしいと言いに来たのではないでしょうか」

 浮気や不倫をどう思うのか。すみれはそればかり気にしていて、結局、謝罪以外の要求を口にしなかったけれど。

「婚約者がいながら、別の男に会いに出かけたつゆりを怒ってるように聞こえましたが」
「そんな風に感じましたか?」

 千隼さんは驚くような視点を提示する。私の行動に腹を立てていた……そんな風には見えなかった。

「そう思うのは、俺の推測が正しいからかもしれませんけどね」
「推測ですか。千隼さんは何かご存知なの?」

 首を傾げると、ええ、と彼は神妙な面持ちでうなずく。

「岩山学習塾の周辺で、興味深い話を聞きましてね」
「本当にお調べになったの? 綾城のために貴重な時間を、申し訳ないです」

 寝る間も惜しんで働く日々はまだまだ続いているだろう。毎晩のように私に会いにきてくれるけれど、すぐに眠ってしまうことも多い。

 私の顔が見られればそれでいいと言ってくれる日もあるけれど、綾城邸と自宅マンションを行き来する二重生活のような毎日で、疲労は蓄積するばかりだろう。そんな中、休日は颯太の件を調べてくれていたのだ。

「これは、俺のためでもありますからね」
「千隼さんのため……?」
「ええ。それはそうと、岩山颯太なんですけどね」

 千隼さんがそう言いかけたとき、部屋の壁に取り付けられたインターホンが鳴った。母屋と離れをつなぐインターホンだ。急用のやりとりに使っている。

 縁側におろしていた腰をあげ、足早に部屋へ戻ってインターホンに出る。

「はい、つゆりです」
「お姉ちゃんいますか? って、男の人が来てるよー」

 伊吹が来客を知らせてくる。

「男の人? どなた?」
「えーと、いわ……岩山さんって言ってたかな。若い人。どっかで会ったことある人だと思うけど、全然思い出せない」

 伊吹はすっかり不審な青い車の男を忘れてるみたい。彼女の興味は日々コロコロと変わり、未来には無限の可能性が広がってるのだろう。いちいち、覚えてられないというのが本音だろう。

「すぐに行くわ」

 そう言って、インターホンを切り、縁側に置かれた草履を履く。

「どうしましたか?」
「岩山颯太さんがいらしたみたいです。千隼さんはこちらで待っていてください」
「俺も行きますよ」
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